第45話 あなたの血は貴重ですよ。
「それで、カシラ、詳しく説明をしてくれますか……?」
「ええ、くくっ、それは勿論です」
あかりちゃんが怒りを抑えきれないと、言った感じで、南坂と名乗った少女を問い詰める。その南坂さんは余裕の表情で答え、如月さんはその様子をポーカーフェイスで、見ている……。
「…………じぃぃぃぃぃ」
そして三矢はジト目で俺のことを見つめてきている。「てめぇ、何モテてるんだ? モテていい状況じゃねぇだろ。ざーこ、ざーこ」という心の声が聞こえてくる。
まあ、この何故かモテている状況に正直言えば嬉しい気持ちが全くないわけではない。
いや、だって三矢も芽依さんも、南坂さんも少し頭のおかしいところがあるとはいえ、とてつもないハイスペック美少女だ。
これまで彼女いない歴年齢の俺としては心から喜びたいことである……。
だがそんな甘い考えも三矢からの熱い? 視線が許さない。
「くくっ、私の許嫁は異性に人気があるのね。妬いてしまいそうだわ」
「ここは立場的に、わたくしが説明した方がよさそうね。それでいいから」
如月さんは悪戯っぽく笑みを浮かべる南坂さんを見ると周囲に視線を流す。
その言葉にあかりちゃんが一瞬思案を巡らし、呆れたような顔で南坂さんを見る。
「そうですね……カシラは面白がってまともに説明しないと思いますので」
「くくっ、信頼が厚くて泣けてきますね」
「信頼なんかしてない!」
なんかあかりちゃんと南坂さんの関係は友達同士みたいな温度感だな……
仲がよさそうというか、関係が深そうというか……まあ、あかりちゃんが手玉に取られてる感が強いけど……
あかりちゃんを手玉に取るとか、スゲェな……俺にはできる気がしない。
「はぁ、話を進めてもいいかしら? 全員の認識を改めておきたいので」
「くくっ、あかり『が』失礼しました、まったく、落ち着きがないですね」
「……誰のせいだと思って」
南坂さんはあかりちゃんのジト目をさくっとスルーすると、俺の方を見る。
「ごめんね、翔にも関係のあることだから、少し時間もらうね」
う、うーん、俺への笑顔だけ本当に無邪気で困る……俺にだけ敬語が抜けてるし、名前の呼び捨てだし。
母親以外の異性から名前で呼び捨ては初めてなのでドギマキしてしまう。
「うぅぅ……お兄さんのバカ」
そんな俺と嫉妬の炎を燃やしている三矢をよそに如月さんが話を進める。
「さて、まずは『数持ち』の説明からね。世界規模で最強の傭兵の総称よ。一人で大隊を相手どれるという『人間兵器』……現在21人が存在するわ。そのうちの1人が目の前の『血刀』の南坂様であり、後ろにいる『デスサイズ』のフレアよ」
「…………」
いや、いきなり漫画みたいな話をされても……。俺がフレアさんと南坂さんを見ると。
フレアさんは礼儀正しく一礼をし、南坂さんは笑顔で手を振ってくる。
「雪城さん! この笑顔に騙されちゃだめですよ! この女にかかれば、一国を相手どることもできるから!」
「えっ? ま、まっさか……」
冗談を期待するように周りを見るが、まだ嫉妬の炎に燃えている三矢以外は真剣だった……。
冗談を聞いている雰囲気ではない。
「くくっ、そんなに怖がらなくてもいいよ? 私は翔の味方なんだから」
「お兄さんに色目を使うなああああああ!!」
「…………」
もう何が何だか、わからない……。
「絶望しているところ悪いのだけど…特別な『血』を持っているのは南坂様だけではないわ……貴方もよ」
「…………はい?」
「雪城の真の後継者あり、南坂家の『血刀』を唯一無効にできる存在……それが貴方よ」
どうしよう……如月さんの言葉が全然かみ砕けない……俺って国語が苦手なのかもしれない。
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