第43話 お兄さんは浮気ばかりです。

   ◇◇◇


 それから俺、三矢、如月さんと、如月さんの護衛と紹介された『フレア』さんという外国の方は話し合いの会場と言う別室に連れていかれる。


 フレアさんは黒人でドレッドヘアーで高身長の女性だ。俺なんか5秒で全身の骨を砕かれそうな迫力がある。


 それに……案内役は先ほど家の門の辺りで出会った強面のお兄さんだ。


 明らかにその筋の人で見た目はとても怖く……正直もう顔を合わせたくなっかったのだが……。


「いや~。お2人ともお嬢の御弟妹とは御見それしました! お2人のことはお嬢から『貴方の全ての指で麻雀を作る』と言われているので……命懸けで守らせて頂きます……!!」


「…………」


「私も大概変わり者の自覚あるけど、あかりちゃんって結構変だよね……」


 三矢は俺にしか聞こえない声量で呟く。


 いや……もうなんかあかりちゃん恐いし、俺らは何処に連れていかれるんだろう。


 この人に案内されている場所……一番大きい母屋の横にある古びた倉なんだかけど……なんか、周りには高そうな骨董品が置いてあり、不気味な雰囲気だ。もう人を闇に葬るのに適してますね! っといった空気をひしひしと感じる。


「へい、こちらです」


 と、そんな不安をよそにお兄さんは土蔵の中に入り、本棚を動かすと……床に地下への入り口が現れた。


「へぇ、東村家の隠し部屋ね……中々ものものしい雰囲気で、嫌いじゃないわ。秘密基地って可愛いわ。ねぇ『フレア』」


「はい、お嬢様。『義孝様』が喜びそうですね」


(如月さんは余裕たっぷりだな……その自信を5パーでいいから分けて欲しい……というか、如月さんのボディガードっていう人、怖そうな見た目だけど、雰囲気は優しそうだな……というか、義孝って誰だ?)


「さあ、こちらへ……当主とお嬢と……頭がお待ちです。俺はここで待機させていただきやす」


 地下室への階段を進むとそこには20畳ほどのシンプルな和室に到着した……内装自体はシンプルだ。


 あるのは古びた箪笥と部屋の中央に置かれた4つの座布団……俺たちが座るためのものか?


 そして……この部屋には3人の人間が正座していた。


 1人は和服姿のあかりちゃんだ。うん、三矢もそうだけど……とても似合っていて、可愛い。だが、それだけではなく、妙な威圧感がある……。


 2人目は中央に座っている初老の男性だ。和服を身に着けており、迫力がある……この人が当主か……?


 そして……最後の1人が……。


「…………」


 この場所の雰囲気に不釣り合いなゴスロリの服を着た、美少女だった。


 独特な冷たい雰囲気を持ち、年齢は10代中盤ぐらい、身長は150あるかないかで、全体的に小さい印象を受けるがその瞳は吸い込まれそうなほどの黒で……微笑みを浮かべているが、その感情を読み取ることができない……。


(いい意味でも……悪い意味でも人形みたいな人だな……)


「ようこそ……呪われし血である東村の家に……」


 少女が口を開く――。

 男性とあかりちゃんは少女の言葉を止めることはない。な、なんだこの重々しい雰囲気は……。

 この少女は一体――。


「如月家に連ねる方々と――」


 少女は三矢と如月さん、フレアさんに視線を送り……そして、俺で視線を止め、今までの薄い笑みではなく、心底嬉しそうに善悪を知らない子供の様に笑う。


「ああ、あなたこそ『雪城』の正当なる後継者……私の『伴侶』となるお方……!」


「…………」


「…………」


「…………」


 一瞬何を言われたのかわからなかった……それは三矢とあかりちゃんも同じようで、戸惑いの表情を浮かべている。


 如月さんをバッと見る、如月さんとフレアさんは涼しい顔、ポーカーフェイスでをして少女を見据えている。少女の言葉に動揺は見られないようだ。


 は、伴侶……? 雪城の正統なる後継者?

 この人この歳でボケてるんじゃないか……?


「……はっ! ……お兄さん、もしかして浮気?」


 いや……この状況はそれどころじゃねぇだろ……。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る