第37話 田舎は最高です。

 三矢と芽以さんがカブトムシを探しに行って十数分後――。


「あいつら、どこまで行ったんだよ……電話にも出ないし……」


 一向に帰って来なかった……。


「あ、あはは……夢中でカブトムシ探してるんですかね。この辺、電波ある筈なんですけど……」


 いや、夢中でカブトムシを探す女子高生ってどんなんだよ。そんな奴いるのかよ……家の身内だわ。


「ど、どうしましょう……ここで待っていた方がいいですよね?」


「いえ、そろそろ如月さんと待ち合わせの時間ですから、先にあかりちゃんの家に行きましょう」


「で、でも……」


「大丈夫ですよ。あいつらもガキじゃないんだし。住所は教えてるから、GPSでも使ってきますよ。歩いて行ける距離なんですし」


「そうですね……でも、心配なので家の部屋住みに探させましょう。彼ら行方不明になった人を探すのが得意なので」


「…………」


 部屋住みってなんぞ? 行方不明を探すのが得意って……。

 い、いや、知らない方がいいいがするから、ツッコまない。


「いや……それにしてもすごい自然がいっぱいですね。空気が美味しい気がしないでもない」


 正直田舎ってあまり好きではない……虫恐い。だけど、流石に田舎出身の人にそんなことは言わない社交性は持っている……ような気がする。


「ふふっ、はっきりド田舎と言ってもいいですよ? 家のおばあちゃんなて、トトロを見て『あそこは都会やなぁ』って言ってましたから」


「…………」


 こんなド田舎にずっと住んでいる人がいると、自分の住んでいる街がいかにメガロポリスかわかる。というか、あかりちゃんってもしかして……。


「えっと……もしかしてあかりちゃん、田舎嫌いだったりします?」


「まあ、好きではないですね。私は畑よりもコンビニが好きです」


「そ、そうなんですか? でも、みんな田舎で暮らしたい、田舎の自然は最高だ! と、言ってますよ? テレビとかで」


「そんなのは幻想です。みんな夢を見てるんです……田舎に夢なんてものは存在しないです。あるのは『近くにコンビニにあるよ!』って言われて、実は車で30分の現実です。もう一度言いましょう……幻想です。幻想モード突入です」


 きっぱりと言い切るあかりちゃん……。

 田舎出身者から言われると妙な説得力があるな……。


「雪城さんは田舎が好きですか? ここで死ぬまで軟禁されてけじめをつけたいですか? けじめを取って覚悟を背中に刻みますか?」


「……な、何ですか? その邪悪な選択肢は……と、というか、田舎というよりも」


 仁義の世界みたいな感じだけど……う、うーん。どう反応したらいいんだろうか? マジでどういうこと言えばいいんだろう。


「ふふっ、ちょっと意地悪言っちゃいました♪ ごめんね、地元愛がない女で」


 てへぺろみたいな感じでちろっと舌を出すあかりちゃん……めっちゃ可愛い。


「さあ、早く家に行きましょう。ふふっ、田舎は好きではないですけど、料理と水は美味しいっていう取り柄はあるんですから♪ それに――」


 そう言うとあかりちゃんは俺の腕を掴み、ひっぱって駆けだす。


「弟とくる田舎はちょっとだけいいかもしれません♪」


「ちょっ、ちょっと、そんなに慌てなくても!」


 俺はあかりちゃんに引っ張られていく。

 なんか、知らないあかりちゃんの一面を知れて、なんとなく嬉しかった……。

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