第34話 仲良くしましょう!

   ◇◇◇


 とある休日のお昼前――。

 この日は普段騒がしい三矢が新しく通うことになる学校の説明会に朝から行っていて、『大変な仕事』を任されてグロッキー状態だったが、三矢が学校という一歩前に踏み出したこともあり嬉しく思っていた。


 あいつ、平気な顔してるけど両親を亡くして、結構メンタルにきてるみたいだからな……1人の時、ぼーっとしてることがあるし……このまま立ち直ってくれればいいけど。


 俺も何かできればいいが……まあ、慌てる必要もないか。


 よし、景気づけに昼は美味いもんでも食っちゃうか! 冷蔵庫には高級食材が眠ってるしな! と、静かな休日に心を躍らせていたのだが……


「……………」


 そんな俺の至高の休日は無となって消えた。

 というか、さっきまでの穏やかな幸せが一瞬で吹き飛ぶぐらい急にまずいことになった……。


 その元凶は――。


「ふふっ、飯田ちゃん、緊張してるんですか? あっ、もしかして人見知りするタイプですか?」


「あわわわわわわわわ……」


 玄関先でにこにこしているあかりちゃんと、フリーザ様を前にしたドドリアみたいな反応の芽衣さんだ……。


 何だこの会っちゃいけない2人が会ったような感覚は……。

 その予想は正しかったのか、芽以さんがキッと俺のことを睨む。


「雪城翔! この人は誰よ! ま、まさか、あんた、太陽の加護を受けていると言われる魔女の末裔か……? それともアトランティスに眠る太古の聖者?」


「? あはは、芽以ちゃんって面白い子だね? 今女子校生の流行ってるゲームか何か? お姉さん、ちょっとわからないなぁ」


 テンパっている芽衣さんをしり目にあかりちゃんはのほほんとしている。さすがあかりちゃん器がデカい……。


「うぅぅ……これは一体どういうことなのよ」


「えっと……メールや電話はしたんですけど……」


「そんなもの、ここに来ることで頭がいっぱいで見てないわ!」


 いや……自信満々で言われても……


 でも、このままだとさすがに芽衣さんが可哀そうだ……まあ、鉢合わせたのはあかりちゃんが来ることを説明しようとしたのに電話を切った芽衣さんが悪い気もするのだが……メール送っても見てないのか、返事なかったし。


「えっと、この人は俺と三矢の共通の知り合いで、今日は……」


「ふふっ、2人のお姉ちゃんです♪」


「…………」


 あっ、その設定、人前でも有効なんですね。ま、まあ、変に仲を勘繰られるよりもいっか。芽以さん、変に勘違いしそうだし……それなら姉ってことにしといた方が――。


 とか、考えていたのだが、芽以さんはあかりちゃんの言葉を聞くとカッと目を見開き、怒りと羞恥心や悔しさなどの感情をにじませる。


「姉? 姉ってあんた達、姉なんていないじゃない! あんた達2人とも一人っ子って言うのは調べがついてるのよ!」


「えっ? そうなんですか?」


 社長にも一人っ子言ったことはなかったけど……まあ、鋭い社長のことだから、クズ親族の話や身の上話はしたから、それで察したのか?


「……私、お姉ちゃんじゃなかったんですか……およよ」


 この人はこの人でなんでガチで泣きそうなんだろうか……俺は1ミリも悪くないはずなのに罪悪感がすごい……。


 さて、まずは2人の仲を取り持つか……


 

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