第31話 美人から贈り物は危険です。
「と、そうそう忘れていたわ。お仕事を引き受けて頂けるか聞く前に……貴方に渡す物があるんだったわ」
そう言うと如月さんは持っていた小さめのハンドバックに手をかける。その隙に俺の隣に座っている三矢が俺にしか聞こえない声量でこそこそと話しかけて来た。
「お、お兄さん、逃げましょう! き、如月家に関わるとろくなことないですよ」
「そ、そうなのか?」
正直、目の前にいる如月さんは美人のお姉さんにしか見えないのだが……い、いや、わかった。俺は真理に辿り着いた……これが美人局というやつか! ワイドショーで見た!
「……なるほど、もしかして俺たちものすごくピンチだったりするのか?」
「ピンチもピンチです! フリーザ様と麻雀を打つぐらいにはピンチです! 少しでも勝ち越したり、負けたりしたら『痛かった、痛かったぞおおおお!!』とか言って、クリリンにされちゃいますよ!?」
「お前のオタク丸出しの考えはよくわからんが……」
「わかって! わかってよ! 如月はまずいんだって! ママが言うには如月の人間は人間に向いてないんだって! お金のためなら全てを切り捨てる機械なんだって! そんな人たちの仕事なんて……あわわわわわわあわわ」
「……………」
さすがに大げさだろ……とか思うが、こいつの怯えようはちょっと普通じゃない気がするが……さ、さて、どうしたものか。
「ふふふっ、相談は終わったかしら?」
俺たち庶民の考えを見透かすような雰囲気で、如月さんはテーブルに正方形の掌に乗るぐらいの小箱を差し出してきた。
小箱は革製で高級感があり、三矢が『やばい!』と騒ぎ立てている如月さんが出したせいか……なんかオリハルコン金属とか、彗星の欠片とかこの世になさそうなものが入ってそう。
「これはお仕事を受ける受けないにかかわらず、差し上げるわ。もともと貴方が持つべきものだものだと思うので。遠慮なく、受け取りなさいな」
「…………」
どうしよう。
今すぐ逃げ出したいが……まあ、箱を開けて爆発することもないだろ。あけてから受け取るか決めるか……まあ、キャンディーとかだろう。うん。
俺は軽い気持ちで如月さんから小箱を受け取る。その箱はずっしりと重くい……う、うん? この箱よく見たら中は鉄製か? えっ? な、何を護ってるんだこれ。
「爆弾だぁ、爆弾……爆弾だよね。爆弾……ああ、お終いだぁぁぁぁぁぁ」
隣で三矢がよくわからん悟りを開いている。こいつどんだけ如月家は危険だと教え込まれてきたんだよ……
やめろ、マジでそんな気がしてきたじゃね。
「…………」
俺は意を決して箱を開けた。
するそこには――『見覚えのあるプラチナの指輪』が入っていた。
「…………え?」
「指輪……お兄さん? もしかしてお兄さん今プロポーズされてる? 浮気?」
「いや、待て……今はお前の浮気芸に付き合ってる暇はない」
「浮気芸って何!?」
「ふふふっ、それは貴方が持っていた方がいいわ……」
上品にほほ笑む如月さん……。
俺は指輪を見つめる……これは俺の親の『遺産』で三矢を引き取る代償としてクソ親族に渡したものだった。
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