第28話 あかりちゃんは女神です。
数時間後、時刻は夜7時――。
俺と三矢は家電量販店で買い物をした後、あかりちゃんが務めるチェーン店の居酒屋の前にやってきた。
仕事終わりの忙しい時間帯ということもあり、今店は混雑しており、俺たちは店の前で並んでおり、前には2組の客がいる
「必要なものは買えてよかったな」
家電量販店ではドライヤーや延長ケーブルなど、2人で生活するのに必要なものを結構買い込んだので、荷物がいっぱいだ。
明らかに10キロ以上あるので、数百メートルの距離を歩いただけで腕がぱんぱんだ。
「お兄さん、帰りは私も少し荷物持とうか?」
「いや、気にしなくていいって。このぐらい大したことない。何ならここからエジプトの伝説の千年アイテムの呪いの力があっても余裕だ」
「はいはい、よくわからない強がり方をしないの。それであかりちゃんなんだって?」
「うーん、さあ? まあ、軽く飯を食ってくか」
「ええー聞いていないの? まあ……そだね~。ここまで来たら、そのまま帰るのもどうかと思うし……でも、家に食材が有り余ってるから外食しなくてもいい気がするけど」
それな。
まあ、今日は初めて三矢と出かけた日なので、今日ぐらいは外食でもいいか。とは言っても、激安のチェーン店だけど……。
「冷凍食品だし、長持ちはするだろ」
「でも、冷凍庫に入りきらなかった分は冷蔵庫に入れたからあんまり持たないからね」
「どのくらい入らなかったんだ?」
「全体の2割ぐらい。カット野菜とかだから、すぐなくなるとは思うけどね」
家の冷凍庫、1人暮らしにしては結構大きいのに……社長、どれだけ持ってきてくれたんだよ……嬉しい悲鳴ではあるんだけどな。
「それよりも問題は……特殊技能がいるものだよねぇ~。私、そんなに調理スキルは高くないし、流石にエスカルゴとかオマール海老とかはどう食べたらいいかわからないよ?」
「まあ、茹でるだけでいいだろ。あとマヨネーズつければ大抵の海鮮は美味い」
「……うぅ、そうなんだけどねぇ~。せっかくの高級食材なんだからもっとこう――」
『ああ! 2人ともお待たせしちゃってごめんなさい!』
三矢と話しているといつの間にか、店前に俺たちしかおらず、仕事着のあかりちゃんがパタパタと駆けて来た。
うーん、仕草を1つとっても可愛らしい人だな……歳上には見えん。
「あっ、お待たせしました! わっ、すごい荷物ですね」
「こんばんは~~。えへへ、お兄さんにいっぱい買って貰っちゃった。いいでしょう」
「こんばんは。必要なものですからね」
「ふふっ、仲がいいですね。お姉ちゃん嬉しいです……って、そうだ、すみません、急にお声をかけてしまって……」
あかりちゃんは少し申し訳なさそうに頭を下げる。
「いやいや、見ての通り買い物のついでなんで。それで用って言うのは……」
「はい♪ お腹すいてませんか? 実はうちのチェーン店で試作品のモニターを探してまして。お2人に是非と思いまして。あっ、モニターと言っても最後に簡単なアンケートに答えてもらうだけです。もちろんお代もいりません」
「えっ? それって、タダでご飯にありつけるってこと? わ、私こういうのは遠慮しないタイプだよ?」
「ええ、たくさん食べてください」
それは雪城家の財政的にありがたいが……
「い、いいんですか?」
「やったぁ!」
「ふふーん、本当は従業員の家族に対して行う福利厚生の一環なのですが、私は2人のお姉ちゃんなので、すんなり許可が通りました」
その、謎のお姉ちゃん設定、そこまで有効なのか。無敵すぎるだろ。
「てへっ、ちょっと無理を通した形ですけど……ふふっ、真面目に働くといいことがありますね。こちらについて来てください」
「はーい、はーい。でも、お兄さんは渡さないよ?」
「ふふっ、安心してください。雪城ちゃんから、旦那さんを取ったりしませんから」
そう言いながら、優しく笑うあかりちゃんに店内に案内される。
まあ、ここは素直にお世話になろう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます