第27話 食料がいっぱいです。
それから社長は俺の部屋まで『荷物』を運んでくれた。大型の段ボールが3つほど――。
『うふふ、雪城きゅんにはお世話になったからねぇ。お礼よ。うふふ、食い扶持が2人になったんだし、食材はいくらあっても困らないでしょ?』
中には社長の会社で扱っている野菜や調理済みの冷凍食品が山の様に入っていた。節約を考えているのにホテルに行ってしまった馬鹿としてはありがたい限りだ。
だが……娘を一晩泊めた程度にしては貰い過ぎな気した……。
そんな俺の心情を察してか、社長は俺にしか聞こえない声量で……
『あ~娘の説得に失敗したわん。まったくもう誰に似てあんなに一途になったんだか。実の親でも感心するわ。言い含めてはあるけど、また会いに来ると思うわ。迷惑だったらあたしにすぐに言ってちょうだい』
とのことだ……。
芽衣さんがらみのことは正直不安だ……俺的には美人に好かれてもう叫びたいぐらい嬉しいのだが、まあ、三矢と芽以さんは水と油なので……どうしようかと。
さすがに鈍い俺でもわかるが……俺、三矢にも好かれてるんだよな……自分を引き取ってくれたからか……うーん、たいしてイケメンでもないし、理由はそれぐらいしかわからんのだが。
そんなことを考えながら社長にお礼を言って家に戻ると――。
「わあああああ! 美味しそうな食材がいっぱい! あの社長ふっとぱらですねぇ~~」
先に戻った三矢が段ボールを中身をみて驚いていた。
「どれどれ……」
段ボールの中身を見ると、食べやすいチャーハン、パスタ、お好み焼きなど食べやすい冷凍食品から、高級海老、エスカルゴ、ブランド牛なども入っている……。
いや、これやり過ぎじゃない?
「お兄さん、これ本当に頂いてもいいの? 合わせると数万単位の結構な額になりそうだけど……」
「うーん、そうだな……まあ、今更送り返すのも失礼だし……今度お礼言っておく」
「まあそうだねぇ~、ひとまずはきちんとお礼を言いなよ? 私も後でお手紙書くから渡してね? あと何を貰ったか控えておくから、食べるのは私が見てからにしてね。あとあと、夏にお中元送るから住所聞いておいてね。知ってるならいいけど」
「あ、ああ……」
「でも、どうしよう。お好み焼きとかは美味しくいただけるけど、エスカルゴってどうやって調理するんだろう……私、あんまり料理得意じゃないんだけど……」
こいつ意外としっかりしてるな……て、ていうか、この会話が夫婦っぽくないか? ま、まあ戸籍上は夫婦だから問題ないんだけど……い、いや、そういうことじゃなくて! そ、そうだ、これからのことを話しとかないと。
まあこいつは頭は悪くないんだし、先のことも考えていそうだしな。
「な、なあ、お前高校やめたって言ったけど、これからどうするんだ?」
「ん? パパとママの遺産でお兄さんと一緒にニートする」
「…………」
うん、ただの馬鹿だった。
「あ、あはは、冗談だよ? 冗談。あわよくば……とか、思ったけど。7割くらいは冗談なんだよねぇ~あはは……」
「……お前なぁ、はぁ、3割は本気じゃねぇか? みたいなツッコミした方がいいか?」
「あ、あはは……いいです。ダメなのはわかっているので……それに多分あのお金だけじゃ一生は持たないし……」
がっくしうなだれる三矢。
「と、いう訳でお兄さん、来月から私、結婚してても問題ない高校に通いなおすから。」
「そうなのか?」
「うん♪ よかったね、お兄さん。貴方の妻は現役のJKだよ♪」
「…………」
それは果たしていいことなんだろうか……俺としては嬉しさ半分、社会的に殺されそうな気分半分、という複雑な気持ちなんだけど……
ピピピピピピピ。
その時、俺のスマホが着信を知らせる。
「ん……? あかりちゃんからだ。『渡したいものがあるから、三矢ちゃんと店に来ていただくことは可能ですか?』だって」
「……お兄さん? くすっ、浮気?」
「いや、お前も呼ばれてるだろうが……」
でも、何の用だろ? まあ、家電量販店に寄った後にあかりちゃんが務める居酒屋に行ってみるか……。
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