第25話 おっぱいへの未練はあります。

 数分後――。


「……………」


「……………」


 落ち着いた? 俺たちは互いに向き合ってダブルベッドの上で正座をしていた。お互いの顔を見ようとはせずに視線をさ迷わせている。


 相変わらず気まずい空気だが……さっきまでの乱心スパイラルよりはマシだろう……たぶん。う、うむ、ここは大人である俺が優しく諭すべきだろう。


 子供を清く正しく導くのは、大人である俺の役目であり、男の義務でもある……まあ、いくら綺麗事を言ってもJKとホテルに来てしまった時点でアウトな気がするが……。


「うむ、三矢よ。お前は子供なんだから、間違い起こすことはある。だが、それ自体が悪くても、立ち止まってはいけない。反省し心を失うのではなく、前に向くのだ。さすれば――」


「私で興奮してたのに偉そうに」


「…………」


 うむ、このクソガキ……じゃない、お嬢さんには難しすぎたか。大人の高貴な理屈だ。高校生に理解しろというのが無理な話だ。

 それに若人はこのぐらい、生意気な方が見ていて楽しいものだ……ふん、俺も老けた、というよりも成長したな。

 ひと昔前ならブチギレていただろう。


「お兄さん、不能」


「誰が不能じゃ!!!!!! このくそビッチがああああああああ!!!!」


 大人の対応などクソクラエだ。


「あーあ、もう叫ばないでよねぇ。これだから童貞は。ふんだ。あーあ、あそこまで女にさせておいて情けないねぇ~~」


「このクソガキが! 俺が不能なんじゃねぇ。お前に魅力がないんだろうが、あーあ、お前が大人のお姉さんで、美人だったらなぁ~~」


「ふん、私の魅力がわからないとかやっぱり不能じゃん」


「だから不能じゃねぇ!!! こんのクソガキがああああああああああああ!!」


 もうブチギレださっきまでの真摯な大人の対応とは何だったのだろうが……。いや、そんなことはどうでもいい、今はこのクソガキにわからせないといけない。


「よく聞け!!! 俺はたつ!!!」


「うっわ、女子高生に何言ってるのかねぇ~? 普通にドン引きです……」


 それは確かに。


「不能とか、口にしてやつが口にする台詞じゃねぇな! あーあ、これだからガキは……あかりちゃんならもっと大人の対応をしてくれるのになぁ」


「…………」


 俺の言葉に三矢が黙り……増々不機嫌そうに頬を膨らませて、俺のことをジト目でにらみつけてくる。「ああん? 童貞のくせに女を語るんじゃねぇよ」といいたげな、無言の圧力だ……


「はぁぁぁぁぁぁ、お兄さんってほんとに女心がわかってない。もういいもん、ふんだ。今ならおっぱい揉み放題だったのに。べぇぇぇぇぇぇぇだ」


 三矢はふてくされたように立ち上がり、いきなり倒れ込んで乱れた服を整える。


「…………」


 お、おっぱい揉み放題だっただと……? ま、マジか……いやいや、おれは正しいことをしたんだ。胸を張っていい。欲望のまま襲っていたら、きっと大切なものを失っていただろう。


「…………」


「……あの、お兄さん? 未練がましく、私のおっぱいをみつめないでよねぇ~。もうお兄さんには触らせてあげないんだから!」


「は、はぁ? 勘違いするんじゃんねぇよ! べ、別にお前の胸如き興味なんだからねぇ」


「うっわ、きっも」


「このクソガキ! 大体てめぇが!」


「ふんだ」


 こうして俺たちは険悪? というか互いによくわからない意地を張ったまま、ホテルを出た。俺の頃には……おっぱいを触れなかった後悔の気持ちが残った……。

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