第22話 ホテルの質は大事だというお話です。
「それで次はどこ行くの?」
クレープを堪能した俺たちは人通りが少ない駅の裏通りまでやってきていた。
そう言えば……今日の目的をこいつに伝えてなかったな……。
「…………」
うむ……実際問題、こいつの入用なものを買いに来ただけなのだが、これは今までさんざんからかわれたのをやり返すチャンスなのではないか? 困った顔を見たい。
「よし、それならホテルに行くか」
「え…………」
……言い訳をすると、この時の俺は立て続けに起こった非日常的な出来事のせいで、疲れていたんだと思う。そうじゃなきゃ童貞の口からするっと出る言葉ではない。
しかもさわやかな笑顔で……完全にセクハラだ。もう、JKに言うとかマジもんの犯罪だ。
「…………はうはう」
しかし、三矢は急に顔を赤くしてあたふたし始めて左右をきょろきょろ見始めた。あ、あれ……? 思っていた反応と違うぞ?
予想では『くすっ、お兄さんはそんなに私としたいですかねぇ? ざーこ、ざーこ♪ それでナチュラルに誘っているつもりですか? くすっ、単純で可愛い』と、小馬鹿にされると思った。
「えっと……えっと……え、えっと、えっと」
三矢は周りを見渡している……ここは裏通りということもあり、周りにはラブホテルが何件かあった。あ、あれ? これって冗談で済まなくなってる!?
「ま、まて、三矢! 俺の話を――」
「お兄さんこそ待って!!!」
えっ!? マジギレ!?
「み、三矢さん? 冗談が過ぎ――」
「初めてのホテルは私に選ばせて!」
俺の心配をよそに三矢の思考は斜め上にロケット花火の様に爆進していく。
「は、はぁぁぁぁぁっぁぁぁぁ!? ど、どういうこと!?」
「どういうことって! お兄さん、乙女心を理解してよ! は、初めては、綺麗でお洒落で、千葉にあるテーマパークにあるお城みたいなホテルがいいの! 部屋に噴水がある部屋!」
「お、おま、何を言ってるんだ! そんな部屋あるわけないだろ! ラブホテルに夢を見過ぎだ!」
「あるもん! な、ないなら、凄まじく妥協して、せめて噴水だけでもいい!!」
「噴水もねぇよ!?」
「そ、そんなわけないもん!」
三矢はスマホを取り出し、本当に噴水のあるラブホを調べ始めた。
な、なんで俺はロリ美少女と往来のど真ん中でよくわからない言い合いしているんだ? こ、これはまずい、とにかく早く誤解を解かないと!
「み、三矢、待て! これは冗談――」
俺が誤解を解こうとすると、三矢はスマホ画面から視線を話、俺の顔を見つめて、ニコッと、笑う。さっきまで慌て散らしていたやつと同じとは思えない程……艶っぽい笑みを浮かべる。
「くすっ、女の子をここまで期待させておいて……ま・さ・か、冗談だったとか、言わないよね?」
「…………」
えっ? 俺が悪いの? い、いや俺が悪いか。
いやいや、待て待て待て待て待て待て待て。三矢を追い詰めるつもりだったのに、なんで逆に俺が追い詰められてるんだよ……。
ふん、いつも俺がからかわれてるんだ。このぐらいで謝ってやる言われない。
ここはテレビで見た昭和の亭主関白をほうふつとさせる毅然とした態度でいればいいんだ。
「三矢よ。物事……いや、人間の言葉に2種類ある。嘘と真実だ。だが、2種類と言ってもその答えは表裏一体で、コインの裏表だが、ふとしたそよ風でひっくり返る。いいか?」
「うるさい。その話長いの?」
「あと5章構成だ。あと2時間は語れる」
「ふーん、そこまで私と一緒にホテルに行くの嫌なんだ……嫌なんだ……嫌なんだ……嫌なんだ」
み、三矢さん? ヤンデレみたいになってますよ?
いや、待て……そこまで俺が拒否する理由なんて、ないんじゃないか? お姉さん大好きな俺だが、三矢はそんな俺から見ても美少女だ。
幼いが……ヤれるんなら断る必要はまったくない。表向きは夫婦だしな。
「…………よし」
「? お兄さん……?」
俺は決断する……男の決断を!
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