第19話 デートです。
◇◇◇
それから俺は大学の講義に出たのだが……正直まったく、集中できなかった。
講義前の如月さんの話や、三矢、芽以さんのことが頭から離れなかった……あと、謎のお姉ちゃんになったあかりちゃん……。
い、今まで女っけのない人生だったのになぁ……もういっそ世間体とか全部横において、このモテモテライフを楽しんだ方がいいんじゃないか?
……いや、無理か。そこまで割り切れるものじゃないし、ビビり童貞をなめんな。それに……多分そんなことをしたら三矢か芽以さんに殺されそうだし……。
と、ごちゃごちゃ考えていたら、講義が終わり、待ち合わせの場所に来ていた。
ま、まあ、本音を言えば卒業のために出席が欲しいだけだからいいか……大学生としてはどうかと思うけど。
(はぁぁ、俺何やってるんだろ……? いや、落ち込むのはあとか。考えすぎるのは悪い癖だ)
『お兄さん!』
その時、背後から聞き覚えのある声が聞こえた。振り向くとパタパタと駆け足で、三矢がやってくる。
「おっ……」
三矢はいつもよりも『くすっ、気合入れました!』と、聞こえてきそうなぐらいお洒落だ。
全体的に青を基調にして、膝下までのスカートとカーディガン。さわやかなイメージで、化粧も薄目であるが、自分が一番かわいく見える方法がわかっているようだ。
「くすっ、どうですかねぇ? くすくす、ざーこ、ざーこなお兄さんの反応を見てると、一発でわかるねぇ~~」
「うっせぇ」
「えええ!? わかっていても、言葉にして欲しいねぇ~? ……ただでさえ、今日はメンタルやられてるんだから」
「? どうかしたのか?」
「いや……オカマがオカマが……芽以のせいでオカマに説教を受けて………うぅ。正論という刃で、普通に怒られた……1時間も」
あっ、全てを察した。社長、あんな見た目だけど、常識人だからなぁ。
「全部お兄さんのせいなんだからねっ!」
「そ、それは……ごめん…………」
「まったくだよもうっ! まったくもう。まったくもう。芽以と一緒にお兄さんのAV見てたら、『いくら意中の男の子の為でも、昼間っから若い子がAVなんて見るもんじゃありません!』って、怒られたんだから、反省してよ!」
「ん? 待て、それ俺が悪いのか……? というか、お前芽以さんにAV見せたの?」
「うん、反応が初々しくて襲いたくなった」
「いや、馬鹿正直な意見に頭が痛くなるが……AVを見て赤くなる芽以さんはエロい」
「だろぅ? さっすがお兄さん」
このドヤ顔のクソガキはうざいが、その意見にはおおむね同感だ。うむ……なんだ俺もクズか。
「はぁ、とにかく反省しろよ。社長はあんな見た目だけど人格者だからな……まあ、時々ガキ以上にふざけるから性質が悪いけど」
そうなると芽衣さんと立場が逆転する。
「この前、発注間違いで余ったビール5ケースを俺含めて7人で全部飲んで、ドンちゃん騒ぎしたら、次の日芽以さんに本気で怒られてたからな……俺も怒られた」
「ふんだ! JKに怒られてよかったねぇ~~!!」
「アクロバティックなやきもちの焼き方してるんじゃねぇよ! いいや、お前昼飯はまだだよな?」
「うん、私、至高の光り輝くニートだし」
「うん、何も威張ることではないな……その辺の作戦会議もするから、長くだべれる場所がいいな、行くぞ」
ファミレスとかでいいだろ。
俺は三矢に声をかけて歩き始めた。さっきまで不機嫌だった三矢だが、何故か笑顔になり、機嫌よさそうに俺の隣を歩く。
「あはは、お兄さんとご・は・ん~~~」
ほんと、明るくて一緒にいて楽しい気持ちにさせてくるやつだな……問題だらけの状況だが気持ち足取りが軽くなった気がする。
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