第13話 修羅場は突然ですね。
「?????????????」
俺は盛大に混乱していた。
だって今時間は23時近く――。
外には何故か激高している社長の娘……女子高生が来る時間じゃなくない?
『いいから、早く開けなさい! 開けないと、この世をゴッドオブデスにするわよ! 地獄の黒煙でこの世ならず魔物を召喚しながら……痴漢されたって110番するわ』
「ゴッドオブデスやら黒煙はわからんないですが……俺がピンチなのはわかりました」
こんなくそ意味わからん状況だが、警察が信じるのはJKだろう……たくっ、何で面倒ごとに面倒ごとが重なるんだよ……。
こ、ここは素直に扉を開くのが、正解だろ……あとで社長に連絡して回収を……って、社長は今日は夜勤だったな。
どうしたものか……。
俺は扉の前まで歩き、鍵を開ける。
するとそこには社長の娘『飯田芽以(いいだめい)』さんがいた。
芽以さんは仁王立ちで正面で両手を偉そうに組んでいる。服は黒のワンピース姿で紛れもなく美少女だ。言動は変だけど…。
髪は今風に綺麗なブロンズに染められており、身長も俺の5センチぐらい低いくらいで160後半ぐらいだろうか……モデル体型だ。
特徴的なのがそのアニメ声と強い意志を感じる若干吊り上がった眼だ。
この人……俺の前だといつも不機嫌なんだよな。
「えっと、芽以さん? こんな時間になんか用ですか……?」
芽以さんがこんな時間に家に来る心当たりはない……こともないか、社長に話した三矢の件か?
でも……社長は『私の娘は雪城きゅんの運命の人なの!!』と、よく言っているが、実際は会うたびに『冴えない顔してるわね! 情けない!』『そんな顔で生きてて楽しい?』『あんた、もう少し覇気を出せないの!? ふん、弱々しくて情けない!』など……美少女言われると結構死にたくなることを言われる仲だ。
めっちゃ嫌われてる気がするのだが……そんな嫌いな俺が三矢と住み始めたのが気にくわないのか……?
「…………ふん」
芽以さんは俺の質問には答えず俺のことにらみつけると、俺の部屋に視線を向ける。肉食動物が何か獲物を狙うような攻撃的な視線だ……。
やがて、三矢がいる風呂場で視線が止まり……。
「…………チッ」
不機嫌そうに舌打ちをすると、可愛らしい踵の高い靴を乱暴に脱ぐいで、俺の横を通り過ぎる。ズガズガと部屋の中を歩いて、風呂場を目指す。
「………………」
待て待て待て待て待て待て待て待て!!!!
えっ? この人いきなりやってきて何でセルフで修羅場を作りだそうとしてるの!? 三矢と、こんな形で出会うのはまずいだろ!!
「ちょっと! 待ってください!!」
俺は慌てて、芽以さんの方に手をかけて引き留めるが……その手をスパッと振り払われた。
「私をこれ以上怒らせないで。あんたはそこでケルベロスの様に永遠に門の前で待ち続けているのがお似合いよ! 時間はとらせないわ、一瞬で決着をつけてあげる」
「………………ちょ、ちょっと!」
芽以さんは俺の静止を振り切って風呂場を目指す。ち、ちょっと、どうしよう!? 男だったら殴ってでも止めるんだけど、て、手荒な真似はできないし。
い、いや、でもここは止めるべきだろ!
と、一瞬考えてるのがスキとなり、芽以さんはバーンっと! 風呂場の扉を開け放った。
すると、そこには着替え中の三矢がいるわけで……というか、今まさにパンツを履こうとしているところで、まだほぼ裸だ……。
「………………ほへ?」
いきなりことに放心する三矢……そりゃそうだ。いきなり風呂の扉を開け放たれて、知らない恐い顔をした美少女がいるとか……もう、ホラーに近い。
そしてそのホラーは口を開き――。
「この泥棒猫!! いったいどういうつもりよ!! この男は私のものって言うのは、煉獄明王が決めたカタストロフィーよりも確定的なことよ! 恥を知りなさい!!」
「………………えっ?」
芽以さんの言葉に呆ける俺……。
「………………はぁ?」
芽以さん言葉を聞いてジト目で俺を見る三矢。『お前、これは一体どういうことだ? ああん? 説明しろや。このざーこゴミくずが』と、言いたげな目だ。
「……………」
いや、誰か俺にこの状況を説明をしてくれよ…………。
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