第12話
ここまで聞いた沖田は、呆然として土方を眺めていた。やがて、涙が、ツウッと頬を伝った。
「近藤先生が・・・そうでしたか・・・。
歳さん、よく教えてくれました。どうりで・・・近藤先生から手紙のひとつも来ないはずだ・・・」
土方は、庭の方を見ながら、黙って聞いていた。
「私が・・・せめて私が一緒に戦っていれば・・・もしかしたら近藤先生を守れたかもしれないのに・・・。
ねえ、歳さん、私は一体、何のために生きて来たんでしょうね。
肝心な時に役に立てないなんて・・・」
何のために、か。それは、土方も同じだ。そして、新撰組も。命がけで戦ってきたというのに、今やっている事は、国を弱体化させる戦いなのだ。
「近頃は・・・剣の腕も、すっかり衰えました。
庭に迷い込んできた野良猫を斬ろうとしたんですが・・・何度試しても駄目でした。もう、斬れないんです・・・」
土方は、沖田の顔を見られなかった。
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