第11話


「おいおい、総司よ。近藤さんは、あれで、しっかりした人だったぜ。心配いらん」


土方は、真っすぐ沖田を見て行った。

そして沖田も、真っすぐ土方を見つめ返して来た。


「ねえ、歳さん・・・近藤先生、本当は亡くなったんでしょう?」


いきなり切り込まれ、土方は動揺した。しかし、表情を変えるわけにいかない。


「なんだ、総司。滅多なことを言うもんじゃない。誰にそんな話を聞かされた?」


「だって、歳さん、さっきから近藤先生が居なくなったような言い方してたじゃないですか」


そうだったか?


「心配させないようにしてたのは分かりますが、却って気になります。どうなんですか、教えてください」


沖田は、必死で訴えてくる。病気で弱っているだろうに、物凄い気迫だ。

言葉の裏を読むのが苦手な筈だったが、今日は何故か鋭い。病で心が敏感になっているのか。いや、違うな。土方の言葉の端々に、隠しておきたかった事が滲み出てしまっていたのだろう。それこそ、沖田でも判るくらいに。


「そうか、わかったよ、総司。教えてやるよ。近藤さんは、まだ死んじゃいないよ」


「まだって事は、死ぬかもしれない状態なんですか。戦で負傷されましたか?」


「いや・・・大した怪我は、してないと思う。多分。

敵軍に・・・反政府軍の奴らに捕まった。正直に言うと、処刑しょけいされるかもしれない。

だが、まだ生きているはずだ。俺は、使える伝手つてを全部使って、何とか近藤さんの処刑を取りやめさせるつもりだ。そのために走り回っている」

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