第6話


そう言う土方も、沖田と顔を合わせて、少し驚いた。

弱っているとは思っていたが、想像したよりも、沖田の顔色が悪い。

まだ二十代の半ばだというのに、肌はカサカサだ。

ほおも、こけている。

見るからに、病人だ。


やつれたな。


「…思ったよりも、元気そうだな、総司」


そうつぶやいて、土方は、縁側えんがわに腰を下ろした。


沖田は、ますます辛くなった。

土方ほどの男から、見えいた気休めを言われるとは。

余程よほどの重病人に見えるのか。


土方と違って、沖田は、素直すなおな男だった。

他人の言葉をその通りに受け取り、裏に隠された意図いとを読む事が、苦手なのだ。

そうした性質は、近藤勇と良く似ている。


だが、そんな沖田でも、今日は土方の気休めが、心に響いた。

病で心が弱った分だけ、敏感びんかんになっているのだろうか。

沖田は、土方の気持ちをんで、気付かぬりをよそおう事にした。


「そうですか。

段々と暖かくなっているせいか、今日は気分が良いですからね。

ヤツメ、ありがとうございます。

いただきますよ」


そう言って縁側えんがわに出た沖田は、土方から少し距離を空けて座った。


土方は、ヤツメウナギの串焼きが入った竹皮の包みを開き、縁側に置いた。

ヤツメウナギには、たっぷりとタレがからんで、艶々つやつやしている。

土方は、一本取って、残りを沖田に渡した。

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