ちぐはぐシティ(パナマ)

 青い海の上を走るハイウェイ、ヤシの木が海風に揺れ、潮の香りがリゾート感を増す。左側の窓には水平線が広がり、右側の車窓にはガラス張りの高層ビル群が太陽の光を受けキラキラと流れていく。


 パナマ国際空港からパナマシティに向かう途中には高級リゾート地の景観が広がっていた。同じ中米のコスタリカやグアテマラとは全く違う景色に驚く。コスタリカの首都サンホセもそれなりに大きな街だったが、近代的な高層ビル群はなかった。

 日本への留学経験のあるガイド曰く、パナマシティはここ15年くらいで急に街が発展し、富を持つ人は高層マンションに住み海辺にヨットを停めるのだと言っていた。だが高層ビルの下には素朴で質素な生活風景が広がっている。雑然とした道路脇の市場では商品が豪快に並べられ、適当に売られている。建物もお世辞にも綺麗とは言い難いし、下町の匂いがぷんぷんする。高層マンションやヨットとはかけ離れた大きな貧富格差を感じるが、私はこういう雑多な中南米らしい雰囲気の方が好きだ。


 パナマといえば運河だ。実際観光で訪れる人のほとんどがパナマ運河を見学に来るとドライバーが言っていた。

 パナマは太平洋とカリブ海を結ぶ航路の要所で、ここをビル程の大きさの船が1日がかりで80KMの運河を通過する。複数ある閘門(こうもん)で水位を調節し、船を上下に動かして高低差のある箇所を通過させる。巨大な船が目の前でゆっくりと高さを変え、狭い運河から大海へ出て行く姿には感動すら覚える。

 見学できるのは一部の閘門だけだが、運河見学の展望台は資料館の中にあるので、展望台へ上がりながら工事方法や歴史などを写真や動画で知ることができる。100年も前によくぞこれを造ったものだと感心した。ちなみにここを通る船は最大幅が32.3mと決められているのだそうだ。パナマ運河の構造に合わせるためで、その幅のことをPANAMAXという。響きがカッコいい。


 もうひとつ興味深かったのは小商店での出来事だった。パナマは自国の通貨を持たず、米ドルが流通しているのだが、小商店で2ドルを出し1.5ドルの水を買ったところ、渡された釣りのコインがなんと50韓国ウォンだった。50ウォンは日本円で5円ほど。だが日本語の達者なガイドは事も無げに「大丈夫です。50セントと同じように使えます」と笑った。なんて適当な。けれどこんなところも面白い。


 立派な建造物と50ウォン。いい加減でちぐはぐな街だったが名産のコーヒー豆にはプライドがあるらしく、ドライバーお勧めのカフェでいただいたコーヒーは美味しかった。

(2016年渡航)

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