ハノイで美味しく、美しく(ベトナム)

 ベトナムの食生活は、我々と同じ「米」が中心だ。白いご飯を炊き、野菜や肉や魚のおかずを添えて食べる。または米粉を薄く伸ばして焼いて具を巻いたり包んだり麺状にして食べたりとバラエティ豊かな米文化だと思う。

 

 日本では米粉の麺といえばフォーが有名だが、北部のハノイではブンという麺の方が主流らしい。フォーよりも丸く、形と食感はそうめんに近い。一般的な食べ方はブンチャーというつけ麺スタイルの料理で、炭火で焼いた豚つくねと数種類の香草と野菜を、ニョクマムに砂糖やレモンなどを加えた少しクセのある甘酸っぱいつけダレの中に入れ、そこへ茹でたブンを浸して肉や野菜と一緒に食べる。瑞々しい葉野菜とブンを一緒に口の中に入れると、酸味と爽やかな香草の香りが後を引く。素麺の薬味に紫蘇やミョウガを使う感じだろうか。

 そして炭火焼きの肉団子の脂はタレに深みを増す。香草だけならすぐに食べ飽きていたかもしれないが、食べ応えのある肉団子と、時間が経つにつれコクを増すつけダレで山盛りに盛られたブンをすっかり平らげてしまった。また正式な食べ方かは分からないが、つけあわせに出てくる揚げ春巻きをつけダレに入れても美味しかった。

 

 歩道には屋台のようなお店がいくつもある。屋台といっても道路に直に置いたガスコンロでブンを茹でて、その上に野菜をてんこ盛りにして提供するシンプルさだ。プラスチックの器に盛られた麺をお茶碗に入れられた汁につけて食べる。一杯は約50-70円ほどでちょっと小腹が空いた時やお昼ご飯にちょうど良いのかもしれない。

 ただしテーブルも椅子もプラスチックの簡易なもので相当低い。背中スレスレで砂埃を巻き上げて走る車やカブよりも目線が低いので多少抵抗感はあったものの、美味しいものはやはり美味しい。旅先で不足しがちな野菜を沢山食べられるのも嬉しかった。


 ベトナムの肥満率は国際比較でも断トツに低い。肥満人口比率は、アメリカ人が約33%、日本人は約3%、ベトナム人は約0.3%と格段に少ない。ベトナムの味付けが決して薄いわけではないし、暑い国らしく砂糖も油も沢山使っているがそんな中で肥満率が低いのは、米を中心にして野菜や肉などのバランスの良い食生活が太りにくい体質を作っているのではないだろうかと言われている。米食文化のアジア諸国の肥満率は世界的に見てもかなり低いのだそうだ。

 またベトナムの女性は肌も滑らかで美しい。暑い国にありながらあの肌を保つ秘訣は何か。その答えも食事の中にあるような気がしてならない。

(2016年渡航)

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