ヴィチェンツァのオリンピコ劇場(イタリア)
イタリアには日本よりも少し小さい国土(世界69位、日本は60位)の中に51か所もの世界遺産がある。北イタリアの真ん中にあるボローニャから電車で1時間半ほど北に行ったところの、ヴィチェンツァという小さくて静かな街にだって世界遺産がある。
市街の景観とともに登録されているのが建築家、アンドレア・パッラーディオの作品群だ。四季の美を享受するため東西南北に玄関が設けられたヴィラ・ラ・ロトンダ(邸宅)や、特徴的な船底型の天井と列柱が美しいバジリカ(議会所、現在は展示場)などが主な建築物だが、なかでも彼の遺作となった世界最初の屋内劇場であるオリンピコ劇場が素晴らしかった。
オリンピコ劇場は13世紀に建てられた城の中庭に16世紀になってから造られた。屋内にあるため、ローマのコロッセオとは違いこじんまりとしている。正面玄関を入り天井画の美しい広間を抜け廊下を進むと、階段状の観客席の横に出る。楕円状のホール内の観客席は味のある板張りだ。その背後には一体が2Mはありそうなそれぞれ姿の違う人体彫像が、天井まで壁一面に飾られており見張られているような迫力を感じる。壁は大理石ではなく漆喰が使われていて滑らかで温かみのある質感だった。
だが最も特徴的なのは遠近法が用いられていることだと思う。客席から舞台が広く見えるよう舞台上の風景セット、さらに天井に描かれた青空の雲の構成などにも遠近法が用いられている。観客席から舞台を望むと風景がずっと奥まで続いているように見えた。さらに舞台と観客席との間に楽団が演奏する舞台があるのだが、舞台の下にすっぽり隠れるように低く作られている。そこで楽団が演奏すると観客席に音が大きく反響する。さらに観客の視界を楽団で遮らないようになっている。
限られた空間の中でより臨場感を高めるために緻密に計算された設計であることが建物のあちこちから垣間見えた。
駅までの帰り道に立ち寄ったジェラート屋さんで柴犬を連れているイカツイお兄さんに遭遇した。思わず「柴犬だ」と発してしまった私にお兄さんは「そう、シバイヌ」と笑顔で言ってくれた。なんとなく嬉しくなった旅の帰り道だった。
(2014年渡航)
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