第7話 頼まれごと
クラス委員になった俺たちは、放課後に担任に呼ばれた。
「二人共、ありがとうね。」
礼を言われてもな~。
好きでやったんじゃないわけだし。
「いえ、困っている人が居たら助ける。当然のことですわ。」
コイツ、まじかよ。
「アリスさん。世の中にはそれができない人のほうが多いものよ。」
「あ、いえ、それは分かっているのです。当然のこと、というのはあくまで私個人の話ですわ。」
「それなら尚更凄いじゃん。」
「え?」
「だって、周りで当然なことだからやってるより自分の意志でやってる方がカッコいいだろ?」
俺の言葉にお嬢様は面食らった様子で黙った。
「その通りよ、アリスさん。二人共、これから宜しくね。」
先生の言いたいことは終わったようなので俺はテキトーに挨拶をして教室を去ろうとする。
「あ、伊藤君ちょっと待って。アリスさんは行っていいわ。」
先生に呼び止められた。何だろうと思っていると先生が喋り出した。
「アリスさんのことなんだけど…あなた、アリスさんと仲がいいじゃない?」
「そっすかね。」
別に仲良くはないと思うが。
「そうよ、見たらわかるもの。」
そうかなぁ。
「なんだか納得してなさそうな顔ね。まぁいいわ。とにかくそんなあなたに頼み事があるの。」
「なんですか?」
「アリスさんがクラスに馴染めていないのを何とかしてほしいのよ。」
えぇぇ。なんで俺に頼むんだよ。
「それは上田さん本人の問題だと思いますが?何だか誰かと親密な関係になるのを避けている様子でしたし。」
「そこまで見抜いているのね。…その通りよ。私が見たところ、彼女は表面上の、浅い人付き合いは問題なくできてるけど、人と深い関係になるのを避けている。だから、あなたに心を許している様子を見たときは本当に驚いたわ。お願い。彼女をクラスに馴染めるように手助けをしてほしいのよ。」
おかしな話だな。別に人と深く関わろうとしようがしなかろうが、それは個人の勝手なはずだ。
それに対して、『君をクラスに馴染めるようにしてあげる!』と言って勝手に首を突っ込むのは、誰もしちゃいけないことだ、と俺は思う。
人の意見やスタイルはその人の勝手で、自由だ。
それを踏みにじったりするような権利は誰にもない。
「彼女の勝手だと思いますけど…。一人のほうが楽しいやつだっているでしょ。」
他人の意見を尊重しないやつは嫌いだ。
俺は自分の最も嫌悪する人種になりさがるつもりはない。
「そうね。でも、彼女の場合は違うわ。前の学校では沢山の友達がいたそうだもの。元気いっぱいで、クラスの中心だったらしいわ。」
…なんでそんなことを知っているのだろう。
いや、担任だからか。でも担任だからと言って何でも知っている訳じゃ無いだろう。
つまり、何かがあったんだろう。
担任の先生に言っておかなきゃならないような、何かが。
夏休み明けというよくあるタイミングだったので俺は違和感がなかったが、彼女が転校してきたことにも関係があるかも知れない。と
俺は平仮名3文字の、響きはやたら可愛いがそれが意味するところは全くもって可愛くない、あの単語を想像した。
それと同時に、中学時代の嫌な出来事を思い出した。
ああ、嫌だ。こういうときは脳内で下ネタを叫ぶに限る。
ちんちんちんちんちんちん!!おっぱい!!!
ふぅ…落ち着いた。
「…はぁ…。わかりましたよ。やりゃ良いんでしょ。どんだけできるか分からないけど、やれるだけやってみますよ。」
「ありがとう。それじゃお願いね。」
今度こそ話が終わったようなので、俺は会釈して教室を出た。
校門に行くと、お嬢様が待っていた。
聞くと、今日も猫を触りに行きたいらしい。
……どんだけ高頻度で来るつもりなんだよ!!!
お嬢様と精神年齢低めの野郎のラブコメ もろちん(こ) @konnitiwan22
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。お嬢様と精神年齢低めの野郎のラブコメの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます