第4話 猫好き
休み明けってどうしてこんなに辛いのか。
俺は教室の机に鞄を置きながら通学路でも何度も思ったことを考える。
教科書を机に入れていると、視線を感じた。
後ろを見ると、お嬢様と目があい、すぐ逸らされた。
ちなみに彼女の席は俺のすぐ後ろだ。
お嬢様は、目は逸しているが、こちらを意識しているのがバレバレだ。
ははーん 分かったぞ。
早速猫の様子を見に行きたいんだな。
俺は立ち上がり、お嬢様に近づく。
周りの目がこちらを意識しだしたのを感じた。
まあ、俺みたいな不真面目な奴があのお嬢様に近づいているのは気になるのかもしれない。
家に招くのが周りに聞かれて変な誤解を受けるのも嫌なので、小声でお嬢様に言った。
「猫の様子を見たいのか?」
「なっ…なんでわかったんですの?!」
こちらの考えを察してくれたのかお嬢様も小声だ。
「あんなに情熱的な視線で見られたら誰でもわかるわ。」
「変な言い方しないで下さる?!」
「まぁまぁ…猫に会いたいなら授業が終わってから校門で待ってるぜ。」
お嬢様は頷いた。
_________________________
放課後になって急いで校門に行くと、すでにお嬢様がソワソワしながら待っていた。
いや、まぁ教室を探しても居なかったので先に行ったのはわかっていたが。
早すぎだろ。
「遅いですわ!早く貴方の家に案内して下さいまし!」
「そんなに急ぐなよ。猫は逃げな…くはないが逃げても大体戻ってくるし急いでも仕方ないだろ。」
「そうはいっても早く会いたいですわ!」
「わかったわかった。じゃあ急ぐか。」
そう言って俺はいきなり走り出した。
お嬢様があんまりにもせっかちなので少し意地悪したくなったのだ。
いや、まぁお嬢様がせっかちでなくとも走っていたかも知れないが。
つまり自分で言うのもアレだが俺は人に意地悪するのが好きなクソ野郎なのだ。
「まっ…!っ待ってくださいまし!」
「待たない!」
お嬢様が追いかけてきた。思っていたより速い。が、追いつけると思うなよ。
俺は陸上部に(体験)入部していた実績がある。
________________________
「うおおおお!」
雄叫びを上げながら全力疾走する。
後ろを見ると、お嬢様は苦しそうにしながらも食らいついていた。
前を見ると俺の家があった。
つまり、俺の勝ちだ。
「イトウワタル!今!一着でゴール板を踏んだぁ!強すぎる走り!次のレースが楽しみです!」
大声で言いながら緩やかに速度を落としていく。
こういうとき急に止まると体に悪いらしいしな。
いやぁ~苦しかった。
9月とはいえまだまだ暑いし、めちゃくちゃ汗かいた。
誰だよ走り出したの。
ガキすぎるだろ。
「貴方っ…ぜぇっ…ねえっ…いくらなんでもっ…ぜぇっ…子供っぽすぎますわよ…っぜえっ」
お嬢様が苦しそうに膝に手を付きながら言った。
その通り過ぎて何も言えない。
「猫見たさにあんなにソワソワしてたやつのセリフかよ」
言えたわ。
お嬢様は「くっ!」と悔しそうな声を出した。
完 全 勝 利
「…それよりも、あなたの家はどれですの?…あっ!猫カフェですわ!…でも、あの猫にあいたくてきたわけですし…!」
どうやら呼吸が整ったらしいお嬢様が言う。どうやら猫カフェに行きたいようだ。
だが…
「悪いが猫カフェは今度にしてくれ。こないだの猫に会いたいんだろ?」
というと、
「そうですわね…貴方の言う通りですわ。すみません。せっかくお家に招いてくださったのだから。猫カフェはまた今度にしますわ。」
と少し悲しそうに言った。
そんなに行きたかったのか。
なら、都合がいい。
「よし。じゃあ付いてきてくれ。」
お嬢様が頷いたのを確認して、俺は猫カフェに突入した。
「何なんですのー!!!貴方の家に行くといったばかりじゃ「ここが俺んちだよ」っ…え?」
「だから、ここが俺の家だって言ってるんですわ。」
お嬢様口調で言うと、彼女は驚いた顔をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます