第2話 庶民派お嬢様


あれから例のお嬢様はクラスメイトに囲まれ、チヤホヤされる…かと思いきや、意外とそうでもなかった。


何というか、自己紹介のときは分かりづらかったが

このお嬢様…上田アリスは人付き合いを避けている様子なのだ。


表面上はにこやかに、丁寧に接しているが、肝心なところ…つまり連絡先を聞かれたり一緒に帰ろうと誘われたりすると断るのだ。


彼女に話しかけに行ったやつは避けられているのを感じ、すごすごと自分の席に戻っていった。


そういう訳で彼女は今この教室で1番浮いていた。


つまり彼女は誰もがお近づきになりたがっていながら、誰も話し相手がいなかったのである。


休み時間は常に本を読み、最初のうちに話しかけに行った奴ら以外と会話をしているところを見たことが無かった。


あの時までは。


_________________________

お嬢様が転校してきてから2日後のこと。


明日は休日なので俺はうきうきで帰り道を歩いていると、空き地にあのお嬢様がしゃがみ込んでいた。


なんとなーく気になった俺は近づいてみる。


「にゃあ~…」


その鳴き声を聞いて俺はこちら側からは見えない、お嬢様の足元に何があるのか理解した。


どうやら猫のようだ。


「にゃあぁ~!」


その鳴き声を聞いて俺はぎょっとした。


今度のは猫ではなかったからだ。


俺が聞いているとは知らず、彼女は続ける。


「にゃあ!…うふふっ…にゃあにゃあっ!」


なるほど、人と深く関わろうとしないところを見て、俺はこいつのことをプライド高い系お嬢様キャラだと思っていたが、どうやらそれは違ったらしい。


あれだ。庶民派系お嬢様キャラ。

ポテチ好きだったりカップ麺食べたり、とにかくお嬢様らしくないところとお嬢様らしい言動によるギャップが魅力のキャラ。


「にゃあにゃあぁ~」


「にゃああああ~!」俺はできるだけビビらせたいという欲求に従い大声で叫んだ。


お嬢様はビクッとして即座にこちらを向いた。


「だ、誰ですの貴方…」


「俺だ」


ドヤ顔で言うと彼女は途轍もなく面倒臭そうな顔をした。


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