お嬢様と精神年齢低めの野郎のラブコメ

もろちん(こ)

第1話 お嬢様キャラ

夏休み明けの登校初日は憂鬱だ。


夏休みが明けた。机に座ってようやくその事実が実感を伴い俺のテンションを下げる。ガン萎えだ。


ゲームばかりしていたらいつの間にか終わっていたのだ。


夏らしいことを少しもしないまま夏は去っていく。


いや、去ったのは夏休みだけかもしれない。


クソ熱い。暑いではなく、熱い。


どういうわけだか担任以外はこの教室にあるエアコンを使えないことになっていた。


これで担任が20代巨乳クールで厳しさの中に優しさのある系美人な先生だったら熱さに耐える生徒を待たせるのも許せるが、担任は定年間近のおばさんだった。


いい加減にしてくれ。熱中症で倒れたらどうすんだ。


もし倒れたら責任取って若返ってくれるんだろうな。


別に俺が特別暑がりな訳では無いらしく、

「あちぃー」 「死ぬぅ~」

などの声が教室のそこかしこから聞こえていた。


俺はこの熱さに少しでも抵抗するべく窓を開けた。


こういうことができるのが窓際席の強みだな。


体育をしている女子を見ることができるという強みには勝てないが。


俺の好みは少し年上のお姉さんだが偶には同年代を見たいときもある。


そんなことを考えているうちに教室の扉が開く音がした。


どうやら担任が来たらしい。


「今日は出席を取る前に、皆さんに転校生を紹介します。」


担任の言葉に、教室がざわめく。


俺は大声で「おっぱいが大きくて可愛くて料理できる20歳くらいの触覚ヘアのお姉さん来てくれ!」と叫んだ。


男子は大笑いし、中には「年上が来るわけねぇだろ!」


とツッコんでくれるやつもいた。


ちなみに女子は冷たい目で俺を見た。


何も考えなしにこんなバカをやってる訳じゃない。


こうすることでウケを取り、教室での俺の居場所を維持しているのだ。


俺の言葉をガン無視した担任が廊下に向かって手招きすると、人が入ってきた。


そいつが入ってきたと同時にあんなにうるさかった教室がしんと静まり返った。


うわっ凄え美人。

金髪だが、この学校は髪を染めるのが禁止なので外国人とかハーフだろうか。


そいつは優雅な動作でスカートをつまみ一礼すると、

言った。


「上田アリスと申しますわ。これからどうぞ宜しくお願いしますわ。」


お嬢様キャラ…だとっ……!


しかもこいつは俺みたいにウケ狙いでやってるわけじゃない。


本物だ。少なくともさっきの一礼は適当な真似事で出来るもんじゃないように見えた。


やり方を教えて欲しい。


今度お嬢様キャラのモノマネするときに使うから。


  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る