存在証明 2

002

 

 翌日の――休みを全て調査に使うつもりはないので――早朝。

 僕は三日前に少女を目撃した道へとやって来た。

 前回通った時より、少し雪が積もったのだろう。道の脇に積もっている雪が一回り増えていた。

 片栗粉を踏みしめたような感触を足に感じながら、僕は目的地に向かう。

 それは木造の小屋だった。とても古い。ところどころ腐っていて、今にもその雪の重さに耐えきれず倒壊してしまいそうだ。

 その脆弱さに多少の恐怖心を抱きつつも、扉を封じていた南京錠を、魔術で壊し、ゆっくりと扉を開けて中に入る。

 中は思ったより暖かく、木材の持つ吸湿性と断熱性に感心する。

 僕は暗闇を晴らすため、フラッシュライトを照らす。

 中には机も椅子も何も無かった。しかし、周りを見渡すと、ところどころに赤黒い斑点があることに気がついた。

 腐った木の色と同化していたが、その異常を僕の眼は見逃さなかった。

 僕の眼が出力した答えに確証を得るべく、赤い斑点に触る。すると、斑点がポロポロと崩れていった。

 手についた斑点のカスに鼻を近づけ、その匂いを嗅ぐ。

 微かに残っている鉄分の香り。僕の眼が導き出した答えに間違いはなかった。これは、――血痕だ。

 それは天井にも壁にも飛び散っており、床には半径一メートルは確実にあるであろう、乾いた血溜まりがあった。

 この光景は、誰が見てもこう思うだろう。ここは、殺害現場であると。

 人間にしろ、動物にしろ、ここでは、明らかになんらかの生物が殺害された、血を流した場所であることは間違いない。しかし、あの少女が指をさした、ということは――

 僕は血だまりを、より深く視る。

 より深く、この場所にあった出来事を視認する。


「…………」


 見るものは見た。もうここに用はない。というより、もうここにいたくない。

 僕は、この小屋と、自分に対する嫌悪感に耐えきれず、すぐにこの場から立ち去ることにした。

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