第4話 ステータス

《ステータス》

それは、八年前に《国家封鎖結界》、モンスター、アーティファクトと共に出現したもの。

結界内――日本に閉じ込められた者であれば、誰もが与えられ、平等に存在する新たなる世界のシステム

ステータスは次のような形で本人の意思、又は《鑑定》のスキルを使用する形で確認することができる。


『名前: 仮山 仮太郎 ♂

 種族: 人間

 位階:1

 総合戦闘力:100

 スキル: 初級剣術

 称号: 剣士         

 

 所持スキルポイント 10 』


名前は、そのステータスを持つ存在の個体名の事。


種族は、そのステータスを持つ存在の種族の事。


位階は、ステータス上で生物として扱われるモノを殺すことで得られる《経験値》が一定数に貯まる事で上昇する、言わばレベルのようなものの事。


総合戦闘力は、身体能力、魔力の量や質、スキルの量や質を数値化し、総合した戦闘能力の事。


スキルは、日々の鍛錬、戦闘中においての成長、称号獲得による報酬、スキルポイントを消費しての取得などによって取得することができる、能力や技能の事。


称号は、自身の行いやスキル獲得、また唯一無二の個性を持つ者に与えられる勲章のようなモノの事。


所持スキルポイントは、位階の上昇によって獲得することができる、スキルを得るためのポイントの事だ。

これらのものが《ステータス》として表示され、本人の意思、又は《鑑定》のスキルを使用することで閲覧することが可能だ。


また、このステータスにおいて重要視される総合戦闘力は日々体を鍛えたり、魔力を操作して質の高い魔力を練り上げる事で上昇させることができる。


「ふっ…ふっ…ふっ…」


こうして、今姫華が腕立て伏せをしているように、日々の努力の積み重ねが総合戦闘力に反映される。

だが、筋トレをまる一ヶ月毎日欠かさずやったとしても、戦闘力は多くても二、三百程度しか増えない。

単純計算で一年で二千〜三千程度しか上昇しない上に、同じメニューでは効果が無くなり、全く上昇しないこともある。

そのため、常に難易度を上げていかなければならず、鍛錬だけで戦闘力を上げるのがいかに難しいかが分かる。

だからといって、全く鍛錬をしなければそれはそれで戦闘力上昇の足を引っ張る事になる。


『継続は力なり』


この世界では、いかに長く続けるかが重要視されている。


「ふっ…ふっ…ふぅ~……よし、今日はこんなものか」


姫華は腕立て伏せを終えると、家の脇に置いてある水瓶からコップ一杯の水を掬い、一気に飲み干す。

もちろん水道水なんてものはこんな田舎の集落には存在しないので、川の水だ。

山奥の源泉から汲んできたキレイな水。

一応、煮沸消毒はされているものの、管理は水瓶に入れて蓋をするだけ。

八年前まで通っていた水道水に比べれば、衛生面はよろしくない。

それでも、この水はキレイな方だ。

下流になればなるほど水は汚れ、街を抜けた川の水なんて飲めたものではない。

街中の汚水が川に流れ込んでいるのだ。

それはもう汚い事だろう。


「…ん?こんなに減ってたかな?」


水をもう一杯掬おうとしてコップを伸ばした姫華は、水瓶に入っている水の量が減っている事に気が付いた。

毎日使っているのだから少なくなるのは当然だが、にしても明らかに水の量が少ない。

昨日確認した時にはもう少し多かったはずだ。

それなのに、これだけ減っているという事は…


「水泥棒か…」


この水瓶に入っている水は、山奥の源泉から汲んできた水。

八年前であれば、ミネラルウォーターと呼ばれていたものだ。

また、集落で主に使用されている水は井戸水。

川の水に比べればキレイな方だが、何が含まれているか分からない。

なにせ、八年前はここに現代文明があった。

その当時にばら撒かれた農薬等は今でも地面に染み込んでいて、井戸水がキレイかどうかは定かではない。

その点、山奥という人が来ない場所から採ってきたこの水は、そういった過去の環境汚染 の影響を警戒をする必要が薄い。

そのため、この水瓶は頻繁に集落の人間に狙われる。

酷いときは水瓶の中身が半分以上無くなっていたこともあったほどだ。


「ちょうど残り少なくなってたし、また取りに行くか」


姫華は異空間にしまってある水の量がかなり減っている事を確認すると、残りを水を水瓶に。

それでも余った分は近くの畑に撒いて、服を着替えに家の中へ戻った。

そして、五分ほどで家から出てきた姫華は、家に鍵をかけ、山へ向かって走り出した。


その速度は三十代の女性が出せる速さのソレではない。

明らかに異常。

何なら、短距離走世界記録保持者よりも速いであろうその走りは、何も知らない八年前の一般人が見れば、二度見間違いなしのものだ。

それもそのはず。

姫華は《カニバリさん》などと呼ばれ蔑まれているものの、その実力は本物。

この集落が安全で居られるのは、八割姫華のお陰である。


では、比較として姫華の所属する集落に住む、戦闘に参加する女性のステータスと比べてみよう。


『名前: 田中 彩花 ♀

 種族: 人間

 位階: 18

 総合戦闘力: 6369

 スキル: 筋力強化・小 防御強化・小 速度強化・中 下級身体能力上昇・中 下級聴覚強化 下級視力強化 下級嗅覚強化 下級弓術・一段 下級短刀術・二段 下級探知・中 下級潜伏

 称号: 《狩人》《弓使い》



 所持スキルポイント 0     』


四年間、猟師として獣を狩り、時にはモンスターも狩ってきた彼女。

積極的にモンスターと戦う事は無かったため、位階は低いものの、四年間の努力の積み重ねにより、戦闘力六千オーバーになっている。

これがどれほどの強さかというと、この辺りに出現する人を襲うモンスターの戦闘力が三千〜七千。

強いモンスターでも一万前後だと言うことを考えると、大抵のモンスターは一人で対応可能という事になる。

集落の女性からすれば、人を襲うモンスターを倒せる女性の星とも言えるだろう。


では、姫華のステータスを見てみるとしょう。


『名前: 胡水姫華 ♀

 種族: 人間 

 位階: 87

 総合戦闘力: 248,360

 スキル: 筋力強化・大 防御強化・大 速度強化・大 防魔強化・中 魔力強化・大 魔力制御・大 中級物理強化・中 中級身体能力上昇・大 中級五感強化 中級魔力開放・小 斬撃耐性・中 刺突耐性・中 打撃耐性・大 熱耐性・中 冷気耐性・中 風耐性・小 土耐性・中 水耐性・中 雷耐性・小 闇耐性・小 猛毒耐性・中 呪い耐性・小 上級戦斧術・五段 中級槍術・二段 中級剣術・三段 下級弓術・三段 上級探知・小 上級魔力感知 上級敵意感知 上級悪意感知 上級殺意感知 下級霊体感知 上級投擲 上級斬撃 上級打撃 中級刺突 上級魔力撃 中級魔闘法 下級隠密 カニバリズム  悪食 下剋上

 称号: 《狩人》《モンスターハンター》《魔獣狩り》《亜竜殺し》《ジャイアントキリング》《戦斧使い》《女傑》《異食家》《スカベンジャー》《同族喰らい》《人殺し》《亜人殺し》《魔族殺し》《無慈悲》《幸運》



所持スキルポイント110     』


…という具合に、圧倒的に戦闘力やスキルに差があるのだ。

なにせ、姫華は八年前は自衛官として、怪我が治ってからは生き抜くために戦い続けてきた。

日々の鍛錬を怠らず、積極的に戦い、強くなることに心血を注いだ。

しかし、そうすれば誰もがこうなれる訳では無い。

生まれながらに決まっている格差。

才能の有無だ。

姫華は生粋の天才。

この日本において、間違いなく上位に入る実力者であり、本物の天才だ。

本来、姫華ほどの天才は政府に徴用され、各地で国土奪還の為奮戦しているものだが…姫華は田舎の集落に身を潜めている為、世間的に認知されていなかった。

しかし、それもあと少しの事。


「……っ!?この気配は!!」


姫華の称号には、こんなものがある。


《幸運》


これは、姫華がステータスを得た時から存在する称号であり、姫華だけの称号だ。

そして、この《幸運》という称号は、何度も姫華に幸運をもたらした。

今度もまた、そうなるだろう。

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