第8話-3

「フォルジナさん――」

「ケンタウリ――」

 二人の声が重なり、俺とフォルジナさんは目を見合わせる。

「フォルジナさん、どうぞ」

「いえ、いいわよ。ケンタウリからどうぞ」

「じゃあ……」

 出鼻をくじかれたような気分だったが、言わなければならない。

「あの、俺と……相棒になってくれませんか?」

 俺の言葉に、驚いたようにフォルジナさんは目を見開く。

「俺は戦士系じゃないし戦いの役には立てないけれど……料理でなら役に立てます! 俺を一緒に連れて行ってください! 俺のスキルを活用させてください!」

「ふうん……」

 フォルジナさんは少し笑い、少し目を逸らした。

「……いいわ」

 返ってきたのは小さな返事。だが聞き間違えようもない。

「本当ですか! 良かった! 分不相応かと思ってずっと悩んでたんですよ。フォルジナさんは強いからつり合いが取れないかなって」

「戦闘は私が担当。あなたは料理担当。それでいいじゃない? これからもよろしくね、ケンタウリ!」

 フォルジナさんが見せてくれた笑顔に、俺はほっと胸をなでおろす。

「はい! ところで、さっき言いかけた事って何ですか?」

「ん? ああ……ううん、もういいの。用件は済んだから」

「済んだ……? そうですか、ならいいですけど。あーよかった。俺もシャンパン飲んじゃおうかな」

「お、いいねー! 私も頼もー! ついでにスパゲティおかわり!」

「すいませ―ん、注文お願いしまーす!」

 この世界に転生して、どこにも居場所がないと思っていた。でも今はある。フォルジナさんの隣……いや、今の所は後ろか。いつか隣に並び立てるようにならないと。いつか、胸を張って言うんだ。

 俺は、魔獣料理人ですって。

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