第299話会話 星座の話

「今日も星がきれいですねぇ。てことで、星空観察をしましょう。とてもくっきり星が見えるので、星座がよくわかりますね。あ、ライオン、ワンちゃん、猫ちゃんですよ~」

「動物……? なに言ってんですか」

「星を繋いで星座にするんですよ。動物以外にも狩人や双子などの人間もいます」

「魔王さんには星がそう見ているんですか? 寝た方がいいですよ」

「ま、まだ眠くないです。それに、星座を決めたのはぼくじゃありませんよ。人間です」

「なるほど、幻覚が見えていたのでしょう」

「勇者さんには夜空の双子が見えませんか?」

「見えません。星は星です」

「あそこに強い光の星があるでしょう? あれが手です」

「手です? 手じゃないです星です」

「昔の人には手に見えたんですよ」

「想像力が豊かなようで」

「勇者さんには言われたくないでしょうね。ほら、あの星とあの星を繋げるんですよ」

「繋げる……? どう、どうやって。どことどこを?」

「きみの目には満天の星空がきらめいているだけ。うむ、それもすてきです」

「勝手に納得されている。単純に星座がよくわからないだけですよ」

「空に線が引けたらいいんですけどねぇ」

「魔王さんにならできそうですけど」

「無理ですよう。ぼくもなんとなくでしか星座の星をわかっていませんから」

「なんとなくなんかい。……ん? なんだろう」

「どうしました? えっ、どうしました⁉」

「懐中時計から光が……。わっ、光の線が出てきた。空に向かって……わぁ」

「夜空に模様を描いていきますね。あっ、あれは双子ですよ! ほら、双子!」

「めちゃくちゃ丁寧に描いてくれるので私にも見えました。ほんとに双子です」

「やっぱりあったんですねぇ。ぼくも初めて双子だと認識できましたよ」

「今までなんだと思っていたんですか」

「星だなぁ……と。それっぽく指をさしましたが、実はテキトーにさしていました」

「雑だな……。でも、テキトーにさしたところに双子がいましたね」

「うそをつくことにならなくてよかったです。それにしても、次々と星座を描いてくれますね。勇者さんに見せてくれているのでしょうか?」

「ですかねぇ。私が星座を理解しなかったから呆れられたのかもしれません」

「呆れるような子ではないと思いますが、きれいな星座を見てほしいと思ったのはあるかもしれませんね。星が好きな子でしたから」

「こうして見ると、夜空は大きなキャンバスですね。空いっぱいに星座があります」

「おや、すてきな表現ですこと。ぼくも描いてみたいです」

「い……いと思います」

「雰囲気を壊さないよう配慮した音がしました。お優しい勇者さんです」

「ステラさんの気遣いに免じて」

「ぼく以外には素直なんですから。勇者さんはツンデレですねぇ。そんなとこも好――」

「あ、うさぎ。かわいいですね」

「いつもの勇者さんですぅ……」

「なんだか豪華な鳥が……もしかしてフェニックスですか。さすがステラさん!」

「勇者さんの喜びポイントがよくわかりません」

「懐中時計に似たものもありますね。かっこいいです」

「あれは羅針盤ですね。航海に使うために作られた方位磁針のことです」

「へえ……。こうして見ているとおもしろいですね。先ほどは寝ろと言いましたが、おそらく不眠症の人が星座を作ったのでしょう」

「そうきますか。ですが、夜更かしさんなのはたしかですね。ぼくたちみたいに!」

「寝っ転がると星空が見えるんですから仕方ないでしょう」

「…………」

「なにゆえ服を掴むのですか。離しなさい」

「星座の中には、元は人間だったものもあるのです。勇者さんがすいすい星空に昇っていって星座にならないように……と思いまして」

「元は人間? そんなまさか。……いや、そういうこともありますかね」

「神話ですけどね。ふたご座の双子も人間でしたよ。片方は半分神様でしたけど」

「へえ。魔王さんの星座はないんですか?」

「星になれと? それはロマンチックな意味か、物騒な意味か、どちらです?」

「この場合、どちらも行きつく先は同じだと思います」

「で、ですが、星座になったら勇者さんに見てもらえるってことですよね。ぼくも上から勇者さんを見守っていられる……。すばらしいことです!」

「散々隣にいるのに」

「上からも下からも右からも斜め下からも見たいのです」

「下はだめじゃないですか?」

「おっと。……。では、いつも通りお隣から」

「あ、懐中時計の光が」

「目がッ、目に光がッ、アアアァァァァアァァ!」

「邪な気配を察知したのでしょうね」

「うぐぐ、目がチカチカしますよ。どんな星よりも光が強いからなぁ……」

「そりゃあ、一等星ですから」

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