第21話 貴方への恩返し

凛花と別れた後、俺は帰宅した。

それからドアを.....あれ?

開いているんだが。

俺は???を浮かべて、親父か?、と思い室内に入る。


すると.....そこに凛子が居た。

俺を見てニヤッとしている.....どっから入ったんだコイツは。

唖然としながら俺は凛子を見る。

すると凛子は、何処から、か。2階の窓が閉まってなかった、と言いながら俺に向いてくる.....入るなよ!?


「お前.....何を.....」


「.....私は貴方にお世話になっている。.....その分を作りに来た」


「.....え?」


俺は愕然としながら凛子を見る。

よく見れば凛子はエプロン姿だった。

そしてフライパンを片手に持っている。

俺はその姿を見ながら.....目をパチクリする。


「.....この勢いでおじさんも堕とす」


「堕とすっておま.....」


「私の味にメロメロにしてやる」


「.....それは無理だと思うが.....」


散々見捨てられていたしな。

俺は思いながら少しだけ複雑な顔をする。

するとその俯いている顔の前に凛子が顔を見せた。

そして、私はおじさんも堕とさないと良くないと思っている。何故なら私が貴方と結婚出来ない、と言い出.....ウォい!?


「お、お前は何を言っている!!!!!」


「.....私は本気。.....貴方は.....どう」


「俺か?俺は.....お前らの事は好きだけど.....」


「それで十分。有難う。でもその中でおじさんは私達をきっと良くないって思っている。.....だからこそ堕とさなくてはならない」


「.....極端過ぎる.....」


極端で結構。

私は.....それでも優樹菜を愛している。

そしてそれは全てを愛するという事。

だからこそ私は全てを愛したい、と切り出す凛子。

俺を見上げながら真顔で。


「.....お前.....」


「.....私は貴方が好き。大好き。この世で最も好き。.....だからこそ私は貴方の全てが知りたい。周りと仲良くしたい」


「.....」


そんな感情。

一度も思ってない。

そもそもあれを親父とは思えない。


俺は.....そう思っていた。

のだが.....違うのかも知れないと。

今気付いた。


親父も被害者なのだ。

結局は.....母親が自殺.....というか。

自分の妻が自殺しているから。

俺は眉を顰めながら凛子を見る。

凛子は俺を見上げたままだ。


「.....分かった。俺は.....親父をいつか招待する。この晩餐に」


「.....有難う。私はとっておきでメロメロにする」


「.....でも堕ちなかったらどうする」


「作戦は幾らでもある。だから安心」


「.....そうか」


俺は苦笑いを浮かべながら凛子を見る。

そして凛子は、じゃあ早速、と言いながら俺の手を引く。

何処に行くんだ、と思っていると。


リビングに案内された。

そこに.....作りたてのハンバーグがある。

定食メニューの。


「.....っていうかこれは.....」


この作り方は。

俺は思いながら見開く。

何というか俺は凛子のハンバーグは食った事がある。

しかし.....今回はデミグラスソースじゃない。


つまりソースを掛けるタイプだ。

この作り方は.....確か。

俺の母親が作っていたやり方。

まさか.....と思うが。


「.....遅くなった。研究結果を発表するのに」


「.....お前まさか.....ずっとこれを練習していたのか」


「そう。私は優樹菜の為にずっと攻略していた。ゲームみたいに」


「.....」


涙が溢れてきた。

この匂い。

そしてこの.....暖かさ。


ほぼほぼ俺の母親の味を創られている。

まあ完全には無理だとは思う。

だけど.....それでも。


「優樹菜。座って」


「.....ああ」


そして腰掛ける。

それから俺の前の椅子に座る凛子。

そうしてから俺を頬杖をついて見てきた。


俺は箸でハンバーグをつつく。

このやり方も母親のやり方。

何処まで攻略しているのか.....。


「全て。優樹菜の知っている極限を極めた」


「お前な。こんな真似をして身体壊すなよ」


「.....私は大丈夫。.....貴方より死んでない」


「.....そうだが.....」


俺は心配げな顔を凛子に向ける。

だが直ぐに破顔してから。

頬を掻いた。

それから.....凛子を見る。


「.....有難うな。.....俺の為.....に。わざわざな」


「.....私は優樹菜の為なら何でも鍛えるつもり。エロも」


「エロは止めろ。鍛えるな」


「.....何故」


「何故、じゃねぇよ!!!!?」


俺は額に手を添えながら食べる。

そして見開いて愕然とした。

99パーセント母親が作ったものに近い。

俺は感情が定まる。

コイツどんだけ.....、と思う。


「.....レシピを教えてもらった。母親に」


「.....それ.....え?でもお前.....これ.....」


「母親と優樹菜のお母さんは知り合いだった。小学校時代からの。.....だから知っているらしい」


「.....そ、そんなバカな.....知らなかったぞ俺は.....!?」


「私も初耳。だから母親から料理を教わった。.....味付けも全部」


「.....そうなのか.....」


でもこれは全ての完成に1年も掛かった。

と言いながら複雑な顔をする凛子。

俺はそんな凛子の頭を撫でた。

そして、いや。もう十分だよそれだけで、と言う。


「.....お前.....良い加減にしろよマジに.....こんなの涙が止まらないんだが」


「.....その顔が見れたら私の作戦は成功したという事。.....私の勝ち」


「.....」


クソッタレめ。

俺は涙を拭いながらだったがハンバーグの皿に涙が落ちた。

そして俺はそれを指で拭う。


せっかくの愛情に申し訳ない。

こんなサプライズをしてくるなんて.....畜生。

俺は.....何もしてやれてないのに。

こんな俺は.....。


「.....凛子」


「.....何?」


「.....愛してる」


「.....はぃい.....!?」


凛子は、いきなり。何、と言いながらボッと真っ赤になる。

そしてそんな凛子を抱き締めた。

凛子は、ふぁ、と言いながら慌てる。

愛しているじゃない。


大好きだ、と言いながら。

恋じゃない。

だけどお前が大好きだ、と言いながら.....。

本当に泣いてしまった.....。

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