第20話 恋とアニメグッズと

俺は嫌だけど.....あの親父の遺伝子を受け継いでいる。

だからこそ俺は親父と同じにはならないと決めている。

あんなクソ親父の様な.....冷たい存在ならないと。

そして.....絶望しないと。


だけどそんなクソ親父の気持ちも分からんでもない部分がある。

それは.....恋愛が怖いという事。

そしてもう大切なものを失う事を恐れ女性を作らないという事。


婚約しないという事。

分かるのである。

こういうのが。


「.....大丈夫?優樹菜」


「.....ああ。すまない。.....色々と思い浮かんでな」


「そうなんだ.....?」


「.....下らない事だよ。かなり」


「.....うん。貴方にとって下らなくても私にとっては下らなくないよ」


それから俺の手をぎゅっと握る。

そして俺を見上げてきた。

笑みを浮かべながら凛花が、だ。

俺はその姿に赤面する。

そうしてから頬を掻いてから凛花の手を見た。


「.....凛花。.....お前は何で心からそんなにしてくれる?.....俺が好きなのは分かるけど.....でも10年間.....一緒に寄り添っていただけだぞ?」


「それだけで私は貴方の事を想うのは十分だと思うよ?」


「.....そ、そんなもんかな?」


「うん。私は十分だと思ってる。.....出来れば貴方と一生を共にしたい」


「.....そ、そこまで言うなよ.....」


本当の事だから伝えなきゃって。

それだけ私は貴方を想ってる。

だから好き、と言ってくる凛花。

俺は真っ赤になりながら凛花を見る。

そして目線をずらした。


「.....一生恋が出来ないかも知れないぞ。俺なんかに寄り添っても」


「.....それでも良いの。私も凛子も。.....貴方が大好きだから。私達は、うん。返事が貰えなくても大丈夫。.....貴方がただ好きだから」


「.....」


なんて俺は幸せ者なんだろうな。

そんな事を思いながら凛花を見る。

凛花は繋いだ手を恥ずかしがりながら、大きいね。男の子の手って、と言ってくる。

俺はその言葉に、お前の手は折れそうだな、と苦笑する。

女子の手ってこんなに柔らかくて.....繊細なんだな、と改めて思う。


「女の子の手って本当に柔らかいからね」


「.....そうか。成程な」


「.....うん。だから大切にしてね。君だけの.....暖かい手だよ」


「.....だからお前な。.....そんな言い方は恥ずかしい.....」


「うん。でも事実だよ。.....私達は.....貴方の為に」


「.....」


俺はその言葉を聞きながら苦笑いを浮かべながら.....そして。

凛花を見る。

すると.....凛花は、じゃあアニメショップに行こうか、と提案してくる。

俺は、それで良いのか、と言った。

凛花は、うん。アニメが好き、と回答する。


「.....とは言っても時間が遅いし.....地元だけどね」


「.....そうだな。.....じゃあ行ってみるか」


「うん。小さなアニメショップがあったよね?」


そんな会話をしながら俺達は歩く。

何よりも.....大切なこの時間を噛み締めながら。

そして.....アニメショップに着いた。

それから中に入る。


「わ。今度出る新作のアニメだね」


「.....そうだな」


「このアニメって面白いのかな」


「.....このアニメの予告編を見たけど.....面白そうだったぞ」


「そうなの?じゃあ.....今度一緒に観ない?」


「.....そうだな。録画して観るか」


うんうん、と言いながら俺を見てくる凛花。

そして笑顔になる。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべる。

それから歩いてアニメグッズとか見て回ってみる。


「.....凛子を今度連れて来ようかな」


「.....それは良い考えだな。.....気晴らしに良いかも知れない」


「優樹菜も一緒だね」


「.....え?俺も一緒?」


「当たり前でしょ。.....私達3人で来ないと意味ないよ」


「.....そうか」


そう言ってくれるんだな、と思う。

それから俺はまた笑みを浮かべて歩くと。

フィギュアの特設コーナーに来た。

そして見上げると.....そこにはフィギュアがいっぱいあり。

更に特売のコーナーがあった。


「何だか特売って惹かれる」


「.....そうだな。.....それは確かに。見てみるか」


「そうだねぇ。アハハ」


そしてセールのカゴの中を見ると。

アクリルスタンド、キーホルダー、応援グッズ、抱き枕。

そう言うのが特売であった。

すると凛花は何か目についた様だ。

それを手に取る。


「.....エロゲキャラの.....キーホルダー」


「.....お前さんその娘が好きなのか?」


「あやせちゃん大好き」


「.....そ、そうか」


「これは買いだね」


そして漁る事、10分。

凛花はホクホク顔で色々なアニメグッズ、エロゲキャラのグッズを持って買い物をしながら.....お土産も僅かに買っていく。

大きな物は買わなくて良い、と言われていたので。

それから店外に出る。


「.....良かったな」


「うん。良かった。.....全部.....優樹菜のお陰でね」


「俺は何もしてないだろ。.....全部お前が見つけた物だ」


「うん。.....でも優樹菜のお陰でもある。今日は来て良かった」


「.....」


全くな、と思いながら凛花を見る。

そして歩き出そうとした時。

あ。ねえ。雪が付いてるよ顔に、と言ってくる凛花。

しゃがんで、と言われた。

俺は、あれ?雪って、と思った瞬間。


「.....」


「.....!!!!?」


頬にキスをされた。

そして離れてから俺を見る凛花。

俺は唖然としながら凛花を見てみる。

凛花は花咲く様な笑顔を浮かべた。

赤くなったままだが。


「.....お礼」


「.....人前だってのにお前.....」


「.....場所は関係ないよ。.....お礼はお礼だから」


「いや.....まあ.....うーん?」


なんて事をしてくるのやら。

俺は頬に手を添えながら.....心臓をバクバクさせる。

そして破裂しそうな感じの赤いまま。

凛花を見てみる。

耳まで真っ赤になっていた。


俺はそんな凛花を見たりして思う。

本当に俺は.....幸せ者だな、って。

恋をしても良いんじゃないかって.....そう思う。

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