第19話 オセロと恋愛

「優樹菜」


「.....どうした?凛花」


「あの子が居ない代わりに私とゲームしてくれない.....かな?」


「.....?.....それは構わないが.....どうするんだ?それで.....」


「メッセージ通話越しにゲームの事を一緒に楽しみたいなって。.....あの子と」


「.....ああ。成程な」


ゲーム盤を取り出した凛花。

それから笑みを浮かべて俺を見てくる。

優しげな笑みを浮かべて。

俺はその姿を見ながら笑みを浮かべた。


「.....ならやるかゲーム。.....手加減はしないからな」


「.....そうだね。私だって全力でするよ」


「.....でもアイツが楽しめないと意味無いよな」


「そこだけは気を付けてやろうかな」


「だな」


そして俺達はゲーム盤を持ってから。

そのまま有原に挨拶してから屋上に向かう。

それから屋上のドアを開ける。


屋上の空気は澄み切っていて.....青空が広がっていた。

俺はそれを精一杯吸い込む。

そうしてから髪の毛を押さえている凛花を見る。

凛花は、良い青空だね、と笑みを浮かべた。


「.....絶好の日和だな」


「そうだね。こんな光景を見せてあげたかったな。あの子.....今多分引き篭もっているから」


「そうか.....」


「というかこの場所で3人で見るのが.....私の全ての希望だったから」


「.....そうだな」


それから俺は複雑な顔をしながら空を見上げる。

木の葉が舞う。

そして俺達を迎えている気がした。

すると凛花は、ねえ。そんな事より、と言ってくる。

ゲーム盤を取り出しながら。


「.....いっちょゲームしませんか」


「何だお前。キャラが変わってんぞ」


「あは。そうかな。.....どうせなら明るくいきたいしね」


「.....そうか」


それから俺達はゲーム盤を広げる。

このゲーム盤は.....凛子から預かった物だという。

俺達はその凛子から預かったゲーム盤を広げながら見合う。


そしてクスクスと笑った。

幼い頃から使っているオセロゲーム。

つまり.....落書きや汚れが目立つ。


「.....凛子はこういう性格だからね」


「そうだな。昔から.....ある物を大切にするよな」


「.....そうそう。ずっと大切にするよね」


俺達はそんな感じで話をする。

そしてスマホで凛子に電話を掛けた。

直ぐに凛子が出てくる。

はい、と言いながら。

俺は、よお。元気か、と話し掛けた。


『うん』


「.....じゃあ約束通りだけどゲームすっか?」


『うん。したい』


「.....だね。じゃあしよっか」


それから俺達は見合ってから頷き合い。

オセロで勝負する。

すると.....凛子と凛花チームが勝った。

俺は後頭部を掻きながら苦笑いをする。



『ねえ。もし良かったらだけど』


「.....どうした?凛子」


『.....お姉ちゃんに付き合ってあげて』


「.....私に?どういう意味?」


『日頃のお礼。今日は雪菜を貸してあげる。デートしてきたら』


「「.....!?」」


俺たちは見合ってから真っ赤になる。

冗談だろお前!、と言いながら。

すると凛子は、冗談じゃないよ、と笑顔のような声を発する。

それから.....凛子は。

私は冗談は言わない、と言ってくる。


『デートしてきて。.....私の代わりに。お姉ちゃん』


「.....分かった。じゃあデートしてくる。貴方の意思を汲み取って」


「いやいや。成り行き上だな!?」


『.....あはは』


そんな感じでオセロを片付ける。

すると凛子が、学校はどんな感じですか、と聞いてきた。

俺は、まあまあだな、と答える。

凛花も、だね、と。


『じゃあ何も変わらないんだね』


「.....そうだな。変わらずだ」


『.....そう』


凛子はそれから、じゃあお勉強があるよね、と言ってくる。

俺達は、もう直ぐチャイムが鳴る、と答える。

すると凛子は、じゃあまた後で、と切り出してきた。

俺達は、ああ、と返事をする。


「ねえ。凛子」


『何。お姉ちゃん』


「お土産買っていくよ。.....何が良いかな」


『.....お土産のお金が勿体無いからいい。今度何かちょうだい。また貯まったら』


「.....相変わらずだねぇ」


私達だって働いている訳じゃないから、と言いながら真面目な返事をする凛子。

俺は、まあ確かにな、と返事をした。

それから、じゃあね、と凛子は話をする。

そして俺達は電話を切ってから見つめ合う。


「.....凛子元気そうだけど何か.....足りないね」


「.....まあ元気も無いわな。この状況じゃ」


「.....まあそうだけど.....」


「.....どうしたものか、だな」


「.....うん」


凛花はスマホの画面を見る。

ブラックになっている画面を。

そして涙を浮かべた。

俺はその姿を見ながら、まーその。何だ、と言う。

それから凛花を見た。


「凛花。今は心配してもどうしようもない。待とう。取り敢えず変わる日を」


「だね。何かしら結果が出たら良いけどね」


「.....そうだな。.....取り敢えずその日までジッとしておこう」


「.....だね」


それから俺達はゲーム盤を持ってから。

そのまま屋上を後にする。

何か変わる日か。

その日は何時になるのだろうか。

そう思いながら。



「私.....今日良いのかな。デートして」


「勝敗は俺が負けた。そして.....凛子がそう言うなら良いんじゃないか」


「.....うん。だったら良いんだけど。.....お土産要らないって言ったけどやっぱり買っていこうかな。.....お菓子でも」


放課後の事である。

日が差し込む中のオレンジ色の教室でそう話していた。

そして俺達は帰宅の準備を始める。

有原は事情が分かってくれているので.....有難いと思う。


「じゃあ行こうか」


「.....うん.....そうだね。.....恥ずかしいけど」


「.....そうだな。俺もまあデートまがいは恥ずかしい。お前の好きって感情が分かってから.....な」


「.....それは間違ってる」


「.....え?」


俺の手をゆっくり掴んでから凛花は見上げてくる。

そして口元を結ぶ。

それから俺に笑顔を見せてきた。

赤くなりながら。

大好き。なんだよ、と言いながら。


「.....いやいや.....お前さん.....幾らなんでも恥ずかしいって」


「.....私だって恥ずかしい。.....でも凛子もそうだけど。私達は貴方を、好き、なんじゃ無いから。聞いておいて。.....私達は、好き、とかのレベルじゃなくて大好き、なんだよ」


「.....!」


「.....私は貴方にだったら何でもあげれる。.....大好きだから」


「.....お、おう。しかしその言い方は良くないだろ。.....分かったから」


それから俺達は歩き出す。

すると凛花が俺の手をチラチラ見てくる。

そして、ねえ。手を繋いでくれる?、と話した。

俺はその姿を見ながらボッと赤面する。

いやいや!?


「恋人同士なんだから。今日だけ」


「.....まあそうだけど.....!?」


「だ、ダメ?」


「だ、めじゃないが.....」


「.....じゃあ繋いで」


「.....わ、分かった」


ヤバいこれ。

そして俺達は手を繋いで昇降口から学校を後にした。

困ったもんだな今日だけの彼女は。

思いながら俺は赤くなる顔と、熱と、心臓の高鳴りを感じながらそのまま歩み出す。


それからそのまま歩いて見晴らしの良い丘の上にやって来た。

この場所は何だ?

つられて来たけど.....。

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