第16話 開けない道
とは言え俺達の生活が何も変わった事はなか.....った筈だ。
だけど心臓がバクバクする。
姉妹に告白されて.....俺は.....有り得ない感情に包まれていた。
そう.....何というか。
動脈や静脈が全部.....交わった様なそんな感覚だ。
「これはいかん.....ヤバいかも知れない.....」
「何がいかんって?」
「ウォ!?ビックリさせんな!?」
「いや。ビックリさせてねぇよ?お前が気が付かなかっただけだろ」
休み時間。
有原がジト目で俺を見てきていた。
いつの間にトイレから帰ってきたんだコイツは。
俺は考えながら有原を見る。
有原は、何を青春に満ちた様な顔してんだよ、と不満げに言う。
「.....いや。お前な.....青春に満ちてねぇよ」
「いや。お前は青春だ。青春野郎だ。それに比べたらなぁ.....」
「.....お前にも良い娘が現れる。絶対に」
「本当かなぁ.....」
いやいやそんな涙目になるなよ.....。
子供かコイツは。
俺はヨシヨシしてやりながら苦笑いを浮かべる。
すると有原は、ああ.....せめてもの女子から告白されたい、と言い出して俺はボッと真っ赤になった。
「ん?何だその反応は」
「.....い、いや。何でもない」
「.....お前さん.....まさかと思うが.....まさか.....」
「違う。俺はそんな事はされてない」
「.....」
怪しいなコイツ、的な目をしてくる有原。
コイツにバレたらマズイ。
叫び出すかも知れない。
奇行に及ぶかも知れない.....。
そんな事を考えていると教室がノックされた。
入って来たのは.....保健室の先生だ。
ん?
「.....すいません。この教室に凛子さんのお姉さんは居ますか」
「.....え?はい。私です。先生」
「.....ちょっと保健室まで来て下さい」
何があったのだろうか。
俺は思いながらその姿を見送る。
有原は真剣な顔をしていた。
教室にざわめきが戻りながらだが。
「.....妹さんに何かあったのかな」
「まさか.....それは無いだろ」
「.....でも気になるよな?」
「まあ確かにな。気になるっちゃ気になる」
「.....うーん」
顎に手を添えてから顎を撫でる有原。
それから考え込む。
有原も大概だよな.....コイツは何かその義妹が居るから。
義妹さんにはそんなに接されてない様だが。
だけどそれでも有原の性格だ。
守ろうとするから.....弱い者を.....。
コイツは保育士とか先生に向いていると思える。
こういう根性は見習いたいもんだな。
「有原。まあ大丈夫だ」
「.....そうか?」
「.....お前の考えている程.....深刻じゃない。きっと」
「.....そうか。なら良いが」
顎に手を添えるのを止めた有原は俺を見てくる。
俺はその姿を見てからドアの付近を見る。
何で呼ばれたのかは.....気になるが。
そうしていると凛花が戻って来る。
その顔は.....何か深刻さが滲み出ていた。
「.....ちょっと行ってくる。有原」
「ああ。気を付けてな」
そして凛花に声を掛ける。
するとグッと握り拳を作った。
それから俺に縋って来.....え!?!?!
どうしたんだコイツ!?
「お、おい!」
「.....凛子が相当にイジメられたって.....それで今日は早退だって」
「.....!.....それは本当か」
「.....暫く学校に行きたくないらしい。凛子そう言ってた」
「.....」
すると有原も寄って来た。
それから俺を真剣な目で見てくる。
俺達は考え込む。
そうしていると、長妻。凛花ちゃん。もう帰りな、と言ってくる。
有原が、だ。
「.....オイ。そういう訳には。お前は教師じゃないんだから」
「教室や学校の事を気にしている場合じゃねぇよ。.....それで凛子ちゃんが自殺とかしたらどうする気だ。後悔出来るのか?お前。.....そんなもんに比べたら勉強なんてしている場合か。勉強なんてそんなもんに比べたら遥かに要らん」
「.....だが.....」
「長妻。.....前を見ろ。.....お前もそうだけど。特に凛花ちゃんは前を見てくれ。.....お前らの早退の事なんぞ後でどうにでもするさ。大丈夫。穴埋めするから。俺達が」
「有原君.....」
教室の奴らも、早く帰った帰った、的な顔をして見ている。
全員が、だ。
全くな.....コイツらという奴は。
俺は考えながら凛花を見る。
凛花は頷いた。
「.....先生には言い訳しておいてくれるか」
「.....ああ。あの先生だから。大丈夫だ」
「.....頼む」
そして俺達はそのまま帰宅を開始した。
そのまま走ってから.....保健室に直ぐに向かう。
すると保健室に入ってから保健室の先生が見てくる。
俺達を見てから苦笑した。
やっぱり来たのね、的な感じで。
「.....え?俺達が来るのを知っていた様な.....」
「そうよ。担任の先生とは同期なのよ私。だから知っているの」
「.....そうですか.....」
「貴方達が3人の絆って事もね。.....きっ今直ぐにと来るだろうって。特別に今回は早退しても良いって言ってたわ」
「.....」
先生もやれやれだな.....と思うが。
誇りに思える担任だ。
俺は考えながら、それで先生。.....凛子は、と聞くと。
凛子ちゃんは今寝ているわ、と言ってくる。
待たせていたの、とも。
「ちょうど良かったわ。来てくれて。この事で貴方達に伝えなくてはならないのが暫く休みを取った方が良いって話なの」
「.....そうですね」
「.....やっぱり.....そうなんだ」
凛花はギュッと唇を噛む。
それから保健室の先生は、原因がはっきりする、聞き取り調査、アンケートなどを行うまでは休みね、と言ってくる。
真剣な顔で。
俺はその姿を見ながら、凛子はベッドで寝ていますか、と聞くと。
「ええ。.....あ、でも起きたみたいよ」
少しだけ複雑な顔を浮かべる先生。
それからベッドのカーテンが開き.....。
やつれた顔の凛子が出て来る。
さっきとは全然比べ物にならないぐらいに。
俺はイラッとした。
こんなにまで追い詰めて楽しいのかアイツは、と思う。
「.....優樹菜。.....お姉ちゃん。御免なさい。.....本当に疲れた」
その.....
本当に疲れた。
たったその一言が俺達にどれだけのダメージを与えたか。
それから衝撃を受けたか。
そして俺達は直ぐに凛子を2人で抱き締める。
涙が止まらなかった。
疲れた、など聞きたくなかったのだ。
そう思いながら.....何時迄も涙を流していた。
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