第12話 岐路に立たされる時と.....エロ?

凛子と凛花に出会ったのは。

10年前の事である。

俺が.....母さんを救えなくて死んだ魚の様な顔をしていた時に2人に出会ったのだ。

その際に2人はこう言った。


『『今日から貴方とは幼馴染だね!』』


そう笑顔で。

俺はそれにどれだけ救われたか。

今がどうやって構築されたか。

俺は.....ただただ涙を浮かべて流すしかなかった。

それから.....10年経った今。


俺達は最大の岐路に立たされている。


それは.....凛子のクラスメイトからのイジメ。

その様な事象に、だ。

俺はその事に天井を見て悩んで.....いると。


コンコンコンコンコンコンコンコン!!!!!


「またか!.....こん畜生めが!?」


翌日になっての土曜日。

もうちょっとで1月も終わる頃。

朝っぱらからそんな音が鳴り響いた。

寝ていたのだが.....勘弁してくれ。

俺はガバッと起き上がってからそのまま窓を勢い良く開ける。


「何だ.....ああ。凛花か」


「そうだけど悪い?」


「.....何の用事だ?俺は眠たいんだが」


「酷い扱い。.....まあ良いけど。.....ねえ。そっちに行っても良い?」


「そっちってのはつまり俺の部屋か?」


「うん」


何しに来るのか分からないが。

俺は頷く。

それから、例の件か、と尋ねると。

頷いた凛花。

そして笑みを浮かべる。


「一緒に考えてくれない?色々と」


「.....サプライズか?今アイツ居るのか?凛子」


「居ないね。.....だから考えたい」


「.....そうか。お前も優しいな」


「.....それに例の件もあるしね」


「.....ああ。イジメか」


そう、と言いながら眉を顰める凛花。

それから、大丈夫とは言わないけど.....でも大丈夫だって言っているから、と答えてくる。

俺は、これは先生に相談した方が良いと思う、と答える。

すると、うん。先生も色々と把握し始めたみたい、と言ってきた。


「正直.....許せない。杉原は」


「.....そうだな。.....アイツさえ居なければな」


「いくら相手に事情があるからって言って。イジメをして良いものじゃない。鬱憤晴らしの機械じゃない。私の妹は」


「.....ああ」


震えながらそう答える凛花。

その凛花に顎に手を添えながら聞いてみる。

なあ。凛子は何処行ったんだ、と。

すると、お使い、と答えた。


「.....ああ。食材買いに行ったのか」


「そう。.....だからこの間って思って」


「.....じゃあ来いよ。玄関開けるからさ」


「うん」


そして凛花がやって来る。

それから玄関を開けて静かな俺の家に入って来る。

顔を複雑な感じにしながら。

そうしてから俺を見上げてくる。

ねえ、と言いながら。


「.....お父さんは.....相変わらずなの」


「.....そうだな。大学教授って事でこの家は捨てたしな」


「.....嫌だね。そんなの」


「正直俺に希望も何もしてないんだろうな。.....まあそれはそれで気楽だけど」


「.....何でそんな感情なんだろう」


「正直あまり親父の気持ちは分からない。そもそも何でそれで俺をこの家に住ませているのかも分からない」


それって望みをかけているんじゃ無いかな、と凛花が俺を見る。

そんな凛花に首を振る俺。

そして、俺としてはあり得ないと思う。それは、と回答した。

それから仏壇の方を見る。

母親が居る場所に。


「.....あの日から変わった。.....親父は何もかもがな」


「.....そうだね。おじさん.....変わったもんね。あんなに餅つきとかして.....優しかったのにね」


「.....もし。.....もしあの時俺が気付けば。何か変わったのかな。.....死にたい気分でもあるしな。時折」


「.....そんな事言わないで」


そう呟いたら凛花が俺の頬を掴んだ。

背伸びして両方の手で、だ。

俺は!?と思いながら凛花を見る。


な、何だ一体!?

そして凛花は見上げてくる。

縋りながら紅顔で、だ。

頬を胸板にくっ付けてくる。


「.....貴方が生きているから私は生きていける。.....貴方が生きているから誰かの為になっている。貴方が生きているから.....私は死にたい気分にならないから」


「.....ちょ、ちょっと待て凛花.....それってどういう意味だ.....!?」


「.....え.....あ、えっと.....意味って.....特に無いけど.....でも知っておいて。優樹菜が生きている事が意味があるから.....」


「.....」


『優樹菜!あそぼ!』


その.....。

何というか幼い凛花の言葉を思い出す。

俺はいつも救われているな。コイツにもそうだが凛子にも。

何だってこんなに優しいのか、だな。

俺は首を振る。


「凛花。有難うな」


「.....どういたしまして」


「じゃあ早速だけど.....どうこのフィギュアを贈るかだな。凛子に」


「そこでなんだけど。もし良かったら.....だけどこのフィギュアの女の子の気持ちになって考えたい。女の子がどう思うか」


「.....は?」


フィギュア以外に持っていた袋に手を突っ込む。

それから、ジャーン、とニコッとしながら言った凛花。

その手にはエロゲが握られている.....。

そして.....ソーセージを咥えた美少女の絵.....が.....オイィ!!!!!

俺は真っ赤になる。


「いきなりに何考えてんだテメェは!!!!!」


「何ってエロゲよ。見て分からないの」


「お前恥ずかしくないの!?こんなえっちな淫らな!」


「まあ.....こういう事をしているし恥ずかしいかも知れないけど。.....でも.....私はそれよりも性欲ってか私の興奮が勝る感じ.....」


「お前ぇ!!!!?」


うわコイツもそうだけど!

マジにアイツも変態だ!

最低だ!!!!!

俺は頭を抱えながら蹲る。

すると、一緒にやろ。エロゲ、と笑顔になる。


「.....お前。冗談で言ってる?」


「冗談で言うと思う?.....私は.....」


「.....」


「ぐへへ.....ジュルッ」


「.....」


頬に手を添えて涎を啜る凛花。

誰かこの女を止めてくれ。

割と本気で、だ。

何かもう全てが取り返しがつかない地点まで来ている。

俺は考えながらも。


何だかこういうのって少しだけでも楽しい。


そんな事をふと思った。

だってそうだろ。

幼馴染と一緒にゲームで笑顔になれるのだから。

ただこれがエロゲじゃなかったらなぁ.....とは思うけど。

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