『傍観』

今日から学校かぁ…

いやだなぁ…

乗り換えもめんどくさいし…


電車から下り、乗り換えの為にホームを移動しようとしたその時。


うわ…

嫌なもんみちゃった…


いや、厳密に言うと見ているわけではない。

そうなるであろうと思ってしまったのだ。


あのおばちゃんケガしちゃうなぁ…

でもわたしが動いたところで間に合うかわからないし…

見なかったことに…

ごめん…


この能力は便利なところもあるが、こういった悪い側面もあった。


そのたびわたしは嫌な気分になる。


人の為にそこまで動けないし、動いたところで助かるかもわからない。

そんな不確定なことに身を削ってまで行動すべきだろうか?

いや、ない。


と結論付けたわたしは嫌な気分になることを享受した。


あぁ…

朝から憂鬱だなぁ…


その時


『ごめんなさい!ごめんなさい!急いでまして!!』


大きな声を上げる少年が目に入った。


先程懸念していたおばさんとぶつかったようだ。


そのやりとりを見ていると、2人の横を何かが横切った。


数秒置いて気づいた。


急行電車による飛び石だ。


わたしが見たのはこれだったのか。


しかし、先程の少年とぶつかったおかげか2人は無傷だ。

いや、ぶつかった痛みはあるか。


そしてふと気づいた。

わたしが見た未来にならなかった…?


こんなことは初めてだ。

どうしてだろう?

思案を巡らす。


『オロロロロロロロ』


違った意味で嫌な気分になった。


先程の少年が吐いたのだ。

おかげでわたしの思案はふきとんだ。


このままここにいたらわたしも吐きそうだ…


急いで立ち去ろうとしたわたしに、

『偶然ですよ』

と言った少年の言葉がなぜか耳に残った。


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