第2話 唸りうねるビーム!
周囲は森だ、木しかない。それに俺の知っている場所でもない。
おかしい、俺は自室でマジクエⅡをやっていたはずだ。何故見知らぬ森で一人でボッチでいるのだろうか。
しかも制服のままだ。幸いにもスマホが上着の内ポケットには入ってるので取り出して起動するが圏外だった。
「どうなってるんだこれは……しかもなんかこう。ビーム撃てそうな気分なんだけど」
何故か分からないがビームを撃てそうなのだ。まるで身体を動かすみたいに、念じれば身体のどこからでもビームが出ると確信できる。
試しに近くの樹に向けて右手を開いて、ビーム出ろと念じてみる。すると右手が輝きだして手のひらに光が収束していく!?
「えっ!? ちょっ!? えっ!? 待っ……!?」
思わず怖くなって右手を振るが、そんな甲斐もなく手のひらからビームが発射された!? というかいやこれ……。
「あっ、あっつぃ!? 痛い!?」
右手が凄まじく熱く痛い! 涙出てくるくらい痛い! まるでほっかほかストーブを直接触ってしまったような!?
思わず右手を振ってから火傷の具合を確認するが……特に外傷はない。さっきの痛みや気のせい、ビームは幻覚……いやそんなはずはない。あんなに痛かったのに。
その証拠に俺が右手を向けていた樹に手のひらの形の穴が造られていたのだ。それに少し焦げ臭い匂いもしている。
ビームは偶然にも最初に狙っていた樹の幹に直撃したようだ。しかも空けた穴から樹の奥の景色が見える。
つまり樹の幹を貫通するほどの威力ということだ。この樹の幹は見た感じだと1mは軽く超えているのに。
「ど、どうなってるんだこれは!? さっき妄想したビーム魔法そのものじゃないか!?」
思わず自分の両手をわなわなと震わせる。
いや両手だけではない、おそらく目も耳も鼻も、何なら髪の毛からでも顔からでも身体全身からでも出せる気がするビーム。あまりに意味が分からない、分からな過ぎて逆に頭が冷えて来た。
ようやく自分が尻もちついたままなことに気づいて、立ち上がって制服のズボンの砂埃をはらった。
「あ、そうか。これは夢か! ゲームプレイ中に寝落ちしてしまったやつだな!」
夢の中で夢だと気づくことはあった。その時は頬をつねれば痛くなかった記憶がある、うろ覚えだけど。試しにつねってみたらほら痛い……痛いじゃん!?
というかさっきビーム撃った時も死ぬほど痛かったな!?
「いや待て、痛いがこれが現実なわけが……」
「「「ガオオオオオォォォォォォ!!!!」」」
「な、なんだ!?」
腕を組んで考え始めたところ、いきなり近くで獣の叫び声のようなものが聞こえて来た!?
音の方向に目を向けると、少し開けた場所に全長5mはある翼を持ったドラゴンみたいなのが三体ほど立っていた……。やべぇ意味わからん。
何よりも意味が分からないのはそのドラゴンに見覚えがあることだ。さっきのマジクエⅡのOPに出たやつにそっくりなのだ、特に剣の刃のように薄い角とか。
やっぱりこれは夢なのか? ゲームのモンスターが現実にいるわけがないし。
「夢だとしても近づくの怖いし逃げるか……」
こっそりと音を立てずに忍び足ろうとするが、その三体の魔物は何かを囲んでいるように見えた。更に目を凝らすと……倒れた人間が三体の魔物に包囲されている。
か、可哀そうに。あれでは逃げきれないし助からないだろう。これが夢だと確信していれば迷わず助けに行くのだけども、もし現実だったら俺も危険に晒されてしまう。
「…………!」
倒れている人は俺に気づいたのか、こちらの方を向いてくる。表情は遠くて見えないがきっとすがるような視線を向けているのだろう。
俺は理由も義理もない他人を、命がけで助けられるお人よしではない。ないのだが……自分の右手を確認すると、まだまだビームが撃てそうな感覚がある。
「……ビームをここから撃てば三体まとめて殺せるかな。もしそうなら……助けないとダメだよなぁ」
もしビームが外れたらあの三体のドラゴンは俺を襲ってくる可能性が高い。本音を言うと逃げたいのだが、それをすると俺の考え方に反するのだ。
あの倒れている人よりも間違いなく俺の方が戦える。そして勝てる算段もある、樹をも貫通したビームならあのデカイのも倒せると思う。
ようは……自分が得意でやれることは引き受けるべき。うまくやればいいんだ、この距離から全部倒せば安全だし……! 滅茶苦茶痛いかもだが仕方ない……うぅ。
俺は無言で両手のひらを遠くのドラゴンたちに向ける。倒れている人に当たるとまずいので狙いは上半身の胸辺り。
「頼むから外れないでくれよ……!」
両手のひらに光が収束しそしてビームが放たれた! あっつい!? やっぱりこれ絶対気のせいじゃない!?
だが今度は覚悟していたので耐えられる! 放たれたビームは見事にドラゴンのうちの二体の顔を貫いた!
俺のビームに直撃した二体のドラゴンは顔に穴が空いて、地面に倒れていく。
巨体なだけあってズシンと大きな音と振動が響いた。流石に即死だろう。
「ルオオオオオォォォォォ!?」
残る一頭が俺に気づいて吠えた。ビームの照射をたどれば分かるだろうからな。
だがここまで離れていれば結構怖い程度だ、馬鹿ヤロウ!? 声大きいんだよ!?
急いで両手のひらからビームを再照射するが……敵の顔の右横をかすめて外れた!? やっば!?
「ルオオオオオォォォォォ!」
ドラゴンは俺の方にすごい勢いで突撃してくる!? 恐怖のあまりに思わず両手をぶわっと振り下ろした、ビームを放ち続けている状態で。
すると照射されたままのビームが鞭のようにうねうねと荒れ狂った!
ドラゴンを斜め縦に真っ二つ! ついでに周囲の木々も両断! 挙句の果てに助けようとした人のすぐ横の地面にビームが着弾! 土を大きくえぐる!
「……ひ、ひいいいいぃぃぃ!?」
哀れ倒れていた人は恐怖のあまり絶叫! な、なんだこの状況は!?
ビーム魔法やばすぎるだろ!?
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ビーム事故に気を付けよう!
撃つ時に地面にアンカー出さないから……冗談はさておきビーム薙ぎ払いはロマン。
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