ビーム魔法使いは超紙耐久!? ~攻撃全振りのキャラで異世界転移した。超高火力で敵を蒸発できるが、俺も敵のワンパンでやられかねない件について!?~
純クロン
第1話 異世界転移
「いや強すぎるだろ……」
俺の眼前には凄惨な光景が広がっていた。少し前まで岩山だった場所は焦土と化している。
試しに撃った拡散ビームによって全てが塵へと消えたのだ。
「め、めちゃくちゃです……!?」
一緒についてきてくれた少女が腰を抜かす。俺もあまりの威力に開いた口がふさがらない。
「これが攻撃力特化のロマンビルド恩恵か……ヤバ過ぎる」
俺はこの力を得た経緯を思い出していた。
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高校の帰り道。俺は電車の中で座席に座りながら、自宅への最寄り駅につくのをワクワクしながら待っていた。学校の帰宅時間だけあって電車はそれなりに混んでいる。
「席どうぞ」
「おお、ありがとうね」
座席から立ち上がってお婆さんに席を譲る。
俺が席を譲るのを見た友人からは良い奴だなと言われたことがある。だが俺としては善意の行為ではない。お婆さんの方が足腰が弱く、俺が立っていた方が効率が良いからだ。
俺が老人になった時は逆に若者に席を譲ってもらう予定だからな。その時になって自分が若い時に譲ってなかったらただの我儘だし。
そうして公式データブックを読みながら立ち続けて、ようやく家の最寄り駅についた。電車から降りて駅から出てそのまま自宅へと到着した。
玄関の扉の鍵を開けて中に入る。淡い期待をこめて「ただいま」と告げるが返事はない。
この家に住んでいるのは俺だけだ。父も母も二年前から行方不明になっていて、今も捜索中ということになっている。少し寂しいがもう慣れた。
着替えもせずに制服のまま自室に駆け込んで、TVにつないでいるゲーム機の電源ボタンを押した。
「早く! 早く! ああもうローディングが遅い!」
僅かな時間すら長く感じる。楽しみにしていたゲームがようやくプレイできるのだ! すでに同時発売の公式データブックも購入してスマホにDL済み!
少しの間ローディング画面が表示された後、すでに例のゲームもDL済みだったのでオープニングが始まった。
壮大なBGMと共に美麗な映像が流れ始める。ローブを着て杖を持った老人が魔法を放って体内に星型コアを持つスライムを燃やす。
金属鎧を着た男が剣を振って、刃のような角が特徴のドラゴンを両断した。更に金色のドラゴンが火を噴いたりと盛り上がっていく。
そして『マジック・クエストⅡ』というタイトル画面に移り変わった。
「おお! 流石はあの『マジック・クエスト』の続編だ! オープニングからして他のゲームと格が違う!」
マジック・クエスト――世界で最も売れて社会現象まで引き起こしたゲームで、ジャンルは本格ファンタジーだ。特に自慢なのは魔物のデザイン、まるで本物でも見て来たかのように設定が凝っている。
コントローラーを触ってタイトル画面の先に進む。『はじめから』を押すとストーリーが……始まらずにキャラビルド画面に移行した。
「あれ? 事前情報にキャラビルドなんかあったか? とりあえず名前は本名でいいか……『
画面を見る限りだとパラメータ値『攻撃』、『防御』、『敏捷』、『魔力』の四つを自由に設定できるようだ。キャラ設定自体もフレーバーテキスト――ゲーム上の能力には反映されない説明文――が書けると。
「あー、なるほど。初心者救済措置みたいな感じか。最初からカンスト能力にすれば楽にクリアできる的な……普通は周回特典な気がするがなぁ」
最近のゲームだとレベル上げに時間かかるのは避けられる。ステータスをいじらせることで、プレイヤーによって難易度と楽しみ方を変えさせる狙いだ。
パラメータ値を試しにひとつ触ってみると、なんと『999』まで上げることができる。まじでカンストさせられるようだ……全能力カンストにしたら無双ゲーになって萎えてしまう。
画面には『おすすめ設定は全パラメータ100ほどです』と記載されている。
「ふーん……なら俺のやることは決まってるな! やはりここは……特化ビルドだ!」
特化ビルド、特定のステータスを集中的に伸ばしたキャラのことだ。例えば壁役なら『防御』以外は最低限でよい。前線で戦わない魔法使いなら『魔力』以外は低くてよい。
そんなわけで俺は『攻撃』を999、他全部を1に設定した。特化も特化、尖り過ぎたビルドだ。こちらも超高火力だが敵の攻撃を食らったら一撃で致命傷になりかねない。
俺は特化ビルドが好きだ。RPGと言えば四人パーティーが多いが、各キャラが何かに特化した能力の方が魅力があると思う。
もしここで全能力999! なんてしたらすぐに萎えてしまうだろう。もうこいつ一人でいいじゃんってなるし、強すぎて現実味がない能力だ。弱点があるキャラの方が魅力的にうつるもの。
やはり特化だ。互いに長所で力を発揮することで、短所は得意な奴に任せようという考え方。俺がさっきお婆さんに電車で席を譲ったのもこの考えが根付いている。
自分が得意でやれることは引き受けて、苦手でやれないことはそれが得意な奴に任せる。そうすれば皆がより自分の力を発揮できる。逆に魔法剣士みたいなオールラウンダー系は燃えない。
ロマンが足りないよ、ロマンが。当たらないが最強のパワー馬鹿とか、誰もが魔法を使える世界で肉弾戦しかできないが近距離最強とか燃える。
「ステータスはこのビルドでいいか。紙装甲過ぎるが《やられる前にやれ》ばよいしな! 後はフレーバーテキストか……」
フレーバーテキスト。ゲームプレイには影響しないが重要なのだ、こうなんか気持ち的に。前作の世界観を思い出しつつ考える。
「このカンスト攻撃力はビーム魔法を使えるからにしよう。ただしビームは既存の魔法にはないので、魔法に分類されずに攻撃ステータス判定になる……っと。ついでに防具装備不可と」
フレーバーテキストを追記していく。ビーム魔法のイメージは身体全身からビーム出すような感じだ。それ以外のことはまともに出来ないが攻撃力は最強みたいな。
あーでも初期スキルで回復魔法持ってるな、魔法使えない設定に合わない。よし出血をビームで焼いて血が流れないとしよう。
こうして書き終えたので次に進む。すると次に世界地図と共に主人公の初期地点選択画面が。事前に決めていた『バーミラ王国』を選択する。
更に画面を進めると最終確認メッセージとして『貴方は今からバーミラ王国に旅立ちます、この能力で後悔しませんか?』と出て来た。
後悔なんてするものか。ロマンキャラとして苦労しながらゲームをプレイできる。
攻撃力だけは最強なのでそれを輝かせるために、色々と試行錯誤が楽しいのだ。万が一詰んだらこのキャラ使わないなどすればよい。
どうせなら本当にゲーム世界に旅立ちたいものだ。そう思いながらもワクワクしつつ『後悔しない』を選んだ瞬間だった。
『これより貴方を異世界に転生させます。どうかご武運を』
「うおっ!? な、なんだ!?」
いきなり音声が出たかと思うと、TV画面が異常に光り輝いて俺は思わず目を閉じてしまう。おいおい、演出の明るさ設定間違えてるだろ……と思いながら目を開くと。
「…………は?」
周囲は知らない森の中だった。
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カクヨムコン8に滑り込み投稿を開始しました。
ストックあまりありませんが、今月中に十万文字頑張ります……間に合ったらいいな。
少し進行がゆっくり目な本作ですが、お付き合い頂けると幸いです。
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