EP8 この人は誰だ!?



俺はテクテクと自分のペースで、のんびりとウサギの後を歩いていく。ウサギも…俺との距離が遠くなると、立ち止まり待ってくれている様だ。これは、頼もしいな。


(テクテクテクテクテク…)



でも…ウサギに案内されるなんて、どこのファンタジーだろうか。最初は、何かの偶然や勘違いと思ったけど、そうではないのかもしれないな。


そういえば…あのスマホ?には、魔獣調教士とか、あとは魔獣使役の魔法とか、書かれていたな。もしかして、俺がウサギさんと意志疎通が出来る事も、そうゆうのが関係しているのだろうか。





(ふ~ん…)






「ヒュウウウウウウウウウウウウウ―」



どこからか強めの風が吹いて―


葉っぱがヒラヒラと宙に舞っている。





やはり、ここは地球じゃないのか?



見渡せば、どこまでも大草原が広がっている。

俺は…異世界に来てしまったのだろうか。



俺は、そっと風に耳を澄ませる。





とても、静かだ。




都会の様な、騒音は一切しない。自然の音だけだ。

時折吹く風の音、その風で靡びいている草原の音、鳥のさえずる声など…





「フフフフフっ…」


こんな自然の中を歩くなんて、凄く久しぶりだからなぁ。

良い気分転換だ。心が晴れ渡る!!


「ルンルンルンルンルン…♪」


俺はスキップをしながら、歩いていた。

これなら、どこまでも歩いていけそうじゃん。




    (((最高オオオオー!!)))



  「ハハハハハハハハハハハハー!!」










…と思いながら、俺は大草原の中を歩いて、すでに2時間近くが経過していた。流石に疲れてきたんだけど。あの~ウサギさん。一体いつになったら、川に着くんですか?


…というか、俺は喉が凄く渇いていた。

もう喉がカラカラだ。ポーチの中には、食料(昨日の晩飯)はあったが、水分は入っていなかった。水筒もあったのだか…中身は空だった。あと、湯沸かしポットの中もね!!


(あー、水が飲みたい)


次第にそんな思いも、入り混じりながら歩き続ける事、しばらく…


俺は、やっとお目当ての川に辿り着いていた。草原の合間に流れる小さな川だ。水も透き通っており、水の中を小魚が気持ち良さそうに泳いでいるのが、良く見える。


とても、綺麗な小川だ。




「ハァハァ…」

「やっと着いた…有難うね、ウサギさん」


俺は息を切らしながら、ウサギさんにお礼を言う。



ウサギさんは川の水面に近づいていくと、ペロペロと水を飲んでいた。俺も飲みたいけど…川の水を直接飲むのは、気が進まないなぁ。でも、今はそんな事言っていられないし…


とても綺麗そうな水だし、大丈夫だろうか?



そんな迷っている俺を、水を飲み終えたウサギさんは、黒く可愛らしい瞳で見つめてくる。ウサギさんは、俺に “とても綺麗な水だよ。飲んでみな” と言っている様な気がした。




「…」(俺)




(じゃあ、俺も水を飲んでみるか…)



「ゴクリ―」



俺は手で水を掬って、喉を潤す。

は~冷たくて美味しい水だ…



「あ~生き返る」 


喉を潤した俺は、満足げにそう呟く。





「…」(俺)




「あれっ…?」



ところで他にも何か用があって…

ここに来た様な気がしたけど、何だっけ?



ど忘れした。




「!!」



そうだ、とりあえず…水筒の中にも水を汲んでおこう。

多分、この事だったかなぁ…違う気もするけど。俺はポーチから空の水筒を取り出して、水筒の中に水を入れる。


よし、OK!!


さてと、お次は…近くに人が住んでいる所とかないかなぁ。町とかね。それで頼りになるのは、このウサギさんくらいだ。


「ではウサギさん、次のお願いをします」


「俺を、人の住む町まで連れて行って下さい!!」



俺がそう言うと、ウサギさんはピョンピョンと飛び跳ねて先を行く。どうやら、また案内をしてくれるみたいだ。有難う、ウサギさん!!




俺は引き続き、ウサギさんの後を歩いていく事に。











        ○













「ヒュウウウウウウウウウウウウウウ―」


(キラキラキラキラキラ―)



俺とウサギさんは、それからしばらく小川のほとりをテクテクと歩いていた。綺麗な小川の水面は波打つ事は無く、とても静寂で日の光をキラキラと反射させている。どうやら、この川の先にでも町があるのだろうか。




…しかし、人が全然いないな。




町が向かっているならば、そろそろ誰かに会っても良いはずなんだけど。







「!!」





俺は何となく、小川に目を向けると、水面に可愛らしい少女の姿が映っていた。







(オっ!!)


早速、人を発見。この近くに住んでいる人かな?


色々と聞いてみたい事があるんだよなぁ。







(キョロキョロキョロキョロ…)




(あれっ…?)




しかし―


俺は辺りを見渡すが、その少女はどこにもいなかった

















違う、これは俺だ。



「「「ギャアアアアアアア―!!」」」(俺の叫び声)



―俺は、水面をマジマジと見る。


その顔は、少女だった。俺の顔じゃない。

大体は察していたけど…まさか、本当に!!



(((アワワワワワワワワワー!!)))






「俺は、一体…」





「「「「「私は一体、誰なんだアアアアー!!」」」」」




少女になった私の叫び声は、虚しく空へと消えていく…








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