EP7 戯れ



―俺が手に持っていたものは、スマホではなかった。


スマホ程ではないが、多少の厚みがある半透明のカードの様なものだった。そのカードには1つの星がホログラムみたいな感じで、刻まれていた。



角度をつけると、その星がキラキラと煌めいている。



ちょっと綺麗だ。




大きさや感触とかは…

スマホのそれと変わらないんだけどなぁ。



「…」(困惑)



いや…待てよ。さっきのポーチも進化していたのだ。

これも、もしかしたら進化したスマホの形なのかも知れない!!


とりあえず、俺はそのカードの星の部分をタップしてみると―



   「「ブオオオオオオオオオオ―ン」」




「ワァオ…」


目の前に、画面が映し出される。

SF映画で、よくある空中ディスプレイみたいだ。凄いな…ちょっとテンションがあがる。


やっぱり、これもスマホが進化した形だったのだ!!


だか、しかし…このポーチといい、スマホといい、地球の科学技術じゃ出来ないよな…



(ここは、地球なのか―?)



俺は、映し出された画面を見てみると



名前 イブ・サラリーナ 


性別 女   年齢 160歳


職業 未登録   住所 未登録


称号 果ての使者



などなどと…書いてある。



イブとは、この身体の人物の名前なんだろうか。これは、身分証か何かだろうか?それにしても…160歳とかって、なんのこっちゃ。よく分からん。そして、一番気になるのが『称号』だな。果ての使者って…なんか恥ずかしい響きだな。


まぁでも、ちょっと格好良いかも。



「エヘヘ…」





俺は、訳も分からず笑みを浮かべる。

そろそろ、思考が追いつかなくなってきた様だ。


俺はスマホの要領で、指で画面をスライドさせると、その思惑通り画面が切り替わった。次の画面は…




「…」(俺)



(えっと…何これ?)




もっと、よく分からなかった。その画面には、現在使える魔法という事で色々と書かれていた。




『☆×1(ワンスター)  経験値 275,863EXP』



“魔獣使役の魔法”


安らぎの匂い、親和の芳香、しつけの音、魔獣の気持ち、創鞭、魔獣にお願い、魔獣操作、親和契約



“魔獣召喚の魔法”


魔獣召喚、カムバック召喚



“果ての魔法”


魔法強化





へぇ…なるほどね、フムフム。



俺は、特に何も考えなかった。




その後も、一通り画面をスライドさせて確認していくが、ミラーやネットの機能はおろか、通話の機能もない様であった。スマホだと思っていたんだが…どうやら違うのか。



子供のおもちゃだろうか… 



そういえば、この身体もよく見れば、子供っぽいしな。









「…」(俺)









いやいや、待てよ。このポーチといい、このスマホ?の空中ディスプレイといい、これは…もしかして、魔法の類いかも知れないぞ!!


ここは、魔法の世界なのか―?


このスマホ?には、使える魔法として “魔獣召喚” とかいうのが書かれていたな。…となると。俺は、微かな期待を胸に大声で叫ぶ。


「「「いでよ、魔獣ぅー!!」」」








「…」(俺)






(シーン…)







何も起こらなかった。

…恥ずかしい。とてつもなく恥ずかしい。

周りに、誰もいなくて良かった。


まぁ、周りに誰かいたら、こんな事やってな―



   「「ガサガサガサガサ―!!」」



「「!!」」


―突然草むらから、何かが飛び出してきた!!

俺は、驚いて腰を抜かす。

まさか、まさか―本当に魔法が使えるのか!!


((アワワワワワワワワワワワー))





「…」(俺)





出てきたのは、1匹のウサギであった。

そして、冷静になってみると、召喚して出てきた訳ではなく…どうやら、近くの巣穴から飛び出してきた様であった。


「はぁ、何だよ…」 


俺は、少し安堵する。あ~びっくりした。

ウサギさんは俺の声に驚いて、出てきたのだろうか。


フフフフ…でも、可愛いね。


ウサギはクリっとした愛くるしい目で、俺の事をジっと見つめていた。俺はウサギに手を差し伸べると、ウサギは逃げずに俺の手をペロっと1回舐めていた。




俺は、何故か…このウサギに懐かれた様だった。













      ◯













「チュンチュンチュンチュン―」


「サアアアアアアアアアアア―」




どこかで、鳥のさえずる声が聞こえる。



そよ風がとても心地よい。空気も凄く綺麗だ。



草原を駆け抜けてきたであろう爽快な風が



俺を常に包み込んでいた。





「ハハハハハハハハハー!!」





こんな大自然の中で―


小動物と戯れるなんて、心が癒されるわ!!


俺は、自然と笑っていた。





「お前、可愛いなぁ」


ウサギは、俺の傍で草をムシャムシャと食べていた。

俺は、そんなウサギの頭をポンポンと撫でる。



―こんな感じで、少しの時間をウサギと戯れた後に、俺は当初の目的を思い出す。そうだった、俺は自分の顔を確認したいのだが…結局、スマホと勘違いしたものには、ミラーの機能は無かったからなぁ。


「…」(俺)


そうだ…

近くに川とか池とかあれば、水面で顔を確認が出来そうだな。

そうしよう!!



「近くに川とかあるかなぁ…」



俺は、独り言を漏らす。




すると―

ウサギがピョンピョンと飛び跳ねて “連れて来い” と言っている様な気がした。







「まさか、川に連れていってくれるの…?」




俺は微笑みながら、そうウサギに話し掛けた瞬間に背筋が凍る。









     「そうだ!!」




「「ひっ、ウサギが喋った!!」」


いやいやいやいや、違う、違う。実際は、何も聞こえていない。その様に、聞こえただけだ!!


だが、実際に話しているのと、勘違いしてしまう程であった。

俺には、何故かこのウサギの気持ちが分かる様な気がした…


何故だろうか―?







「…」(困惑)







じゃあ、まぁ…お願いしまーす。


俺はとりあえず、ウサギの後についていく事に。







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