第20話 吸引のマスク
落ちていく。
回転する俺はまるで流星群のように。この攻撃がシンゾウを穿った。
俺らはシンゾウを倒した。それと同時に、他のズリアンは帰っていった。
すかさず任務である鼻を狩りとった。
俺は崖上へと瞬間移動した。目の前にはめるんがいた。
「やったね!」
「ああ。無事に終わったよ。」
俺らのミッションは達成された。
乗り物にのってロビーに向かっていった。
スムーズに走り去る車。
時々、地面の石に乗り上げ、軽くジャンプをする。
「初めての仕事はどうだった?」
「楽しかったです♪ もっともっと強くなって、もっと先人切って戦いたいって思いました!」
「あんたはもっと遠慮というものを覚えて。」
めるんは飛びっきりの笑みを見せていた。彼女は雨で濡れていたはずだが、アルファの炎のお陰か乾いていた。
「なろちゃんは? 雨を降らして大活躍したじゃん?」
「大活躍……なんかしてないです。」
謙遜──なんかではない。本心からそう言ってる気がする。
「うちは活躍どころか何もすることができませんでした。うち、弱いんで。」
「そんなことないよっ。攻撃だけが立派なスキルじゃないもん。補助や援護だって立派なスキルなんだよ。だから、あの雨はほんとにナイスアシストだったんだよ。自信持って!」
彼女の視線が安定しない。
その自信のなさは、あの時の戦いとはもっと別の次元にあると思う。本質はそこではないと思うが、それが何かは分からなかった。
塀の中。ホープの建物の中へと戻ってきた。
そこは何故か異質な空間が広がっていた。
少し小洒落た空間に作られた装飾たち。周りには正装の人々。
優雅な雰囲気の中、特段目立っていた二人がいた。明るい中、さらにスポットライトに照らされる二方。ここホープにてランキング二位の
「そうか、結婚式をやっているのか。」
結婚式? こんなところで!?
「結婚式……嫌いね。なんでそんなに浮かれているのか、うちにはさっぱり。男は男として、女は女として、はっきりと分けられる。女は特に子どもを産んで。男も女も、それを良いこととして考えてる。それがほんっとうに分からない。男の役割、女の役割、それらが本当に幸せになるの? ただ依存しあって幸せだと思い込ませてるだけなんじゃないの? 結婚にいいことなんて無い。本当に浮かれすぎなの。」
結婚に何か親でも殺されたのだろうか。それほどまでに嫌っている。どこか捻れた嫌味が隠れている。
なろはスタスタと先に行ってしまった。
「結婚式ってそんなに悪いものなのかな? あたしはいいなって思うけど。ドレス着てみたい。くびれの所とか、着たら絶対可愛いもの。」
めるんはそれを追うように進んだ。カクもまた先に行く。それによって俺とアルファは置いていかれた。
結婚式の中に取り残された。
少しゆっくりめに周りを見渡した。周りには強面の正装のヤクザばかりだった。
いや、ヤクザの集会か!?
「ログがヤクザの頭だから来賓がすごいことになってるよね。」と耳元で囁かれた。
もう結婚式というか、族の会だよ。
その時にバイクの吹かす音がする。
耳を澄ます必要もない。爆音が鳴り響く。
バイクで奏でられる音が結婚式のメロディとなっていた。
ブゥオオン。ブゥオオオオオオオン!
ケーキに入刀する刀は日本刀。それも高級なものだ。式典にはタトゥーをつけた人や煙草を吸ってる人などてんやわんや。
「ヤクザにサイコパス。もはや常識を逸しているよね。」と囁かれた。
俺らはその場を後にしようとした。
だが、俺を引き止める男が一人。その男は俺が借金を追ってた頃によくお世話になった所の組長だった。
「よぉ、元気にしとるかぁ。」
ドスの聞いた声は、今日はやけに明るい。
「そんな気張らんくってよいって。もうお前さんに借金はなかろうに。しかし、お前さんもまたホープで働くっちゅうことになるとはな。」
やっぱり結婚式の場ともあって機嫌が良い。
「あんちゃんもついでに、だ。質問していいか。この世を金で考えちょると、一番価値のあるもんは何やと思う?」
「高級な車とかか?」
「馬鹿やな。」
「兵器とかですか。」
「あんちゃん、惜しいんよ。この世で一番価値あるんは、自身に関する「命」なんよ。大抵の人は、命を守るためなら幾らでも金を積まれるんよ。そこに上限なんてあらへん。そんなこと命に関すること以外にほーとんどあらへんなぁ。俺ちゃんの知ってる限りやけどな。」
命。
「逆に命を奪うってのも、守る以上の力が必要じゃろうて金を積まれるんよ。そんな大事な命もこのホープにゃ軽いんやと思うちょる。いや、軽く思っていくんやな、きっと。壁の外にいやぁ、あんたらが命懸けってことは知らへんもん。」
彼は優しい表情をしていた。見た目とても恐いのに。
「なぁ。知ってるぞ、俺ちゃんは。あんたらが最も価値のある命を、みんなの命を、命懸けで守っちょることをな。」
そこでお別れとなった。
借金生活の時に迷惑をかけていた相手で怖いと思っていた相手。それ故に距離を置きたいと思っていた。それなのに心の片隅でどこか引っかかるものがあった。
けれども、もう心の引っかかりはなくなった。何故だろう、逃げてきた自分と向き合うことができる。気持ちが清々しいまである。
俺らはそこを後にした。
その間に演奏が鳴り響く。何故かその音が俺らを送り出していってくれるみたいに感じた。勝手に感じた。
威風堂々──。
そのメロディを背後に俺らは前へと進んでいった。
ブゥォーン。ブゥォォオオオオオオオン。
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