第16話 『傲慢』友引カク★

 黙祷──。

 前代未聞のX級ズリアンの討伐。被災したのは六名のハンター。その内の一人はこのホープの中で最も強いとされていた板であった。

 名前を呼んで欲しいコノヒト。

 彼の死はとても感慨深いものであり、ハンター全員でその死を弔い、未来への希望を願い瞼を閉じた。

 それともう一つ。俺は板の死の他に思うところがあった。

「リスタさん。やったぜ。あなたを殺したズリアンを倒したんだ。これで無事に成仏できるな。」

 そこにゆっくりとシロクマさんがやってきた。

「クシブ君。実はリスタ君を殺害したズリアンはジャンバーユではなかった。そう思われる。」

「は? どういうことだ?」

「敵討ちできたと思ったのだろう。無知のままでも良かったのだけど、本当のことを伝えなければ、可哀想だと思ったのだよ。事実を知りたいかい?」

「どういうことか全く理解できないけど、聞かせてくれや。」

「ジャンバーユは透明化と巨大化しかできない。攻撃も単調だった。リスタを殺したのはそんな単調な攻撃ではない。無数の細めの縄がリスタ君の息を引き取ったのだ。正体は顕にしなかったものの、そこには確かにジャンバーユ以外の存在があった。これが真相だよ。」

 脳裏に現れるピエロのマスクを着た少女。その周りに現れるカラフルな縄。七五三を連れ去った犯人。

「ありがとうございます。」

 俺はそう言って、その場を後にした。

 ピエロマスク──。俺は握り拳を作って、強く握りしめた。


 カクは悲しさよりも喜びが勝っているようだった。少し頬が上がっている。

「今回の討伐。MVPはカクだったんだ。それでねっ、透明化を利用した武器を贈呈されたんだ~。見てよっ、透明な小刀。カクの武器はステルス機能を得たんだぁ~。」

 自慢を周りに吐き散らかしている。

 傍から見ると傲慢な態度を取る子どもだ。

 そこに透がやってきた。涙を吹いた後がある。もう、悲しさから立ち直ったみたいだ。彼曰く、いつまでもクヨクヨするのは板の教えに反するらしい。だからこそ、今まで通りに接するのだとか。

「そんなMVPを取ったカクちゃんは何級なのかなー?」

 カクは黙った。何かにやられたかのように。

「B級です。ぐはっ!」

「調子乗るからそうなるんっすよ。俺っちみたいにナンバーワンにもなると強さは謙虚に魅せるようになるんっすよねぇ。カッコイイと思うなら弟子にしてあげてもいいっすけど?」

 アルファが頭に手を置いてため息を吐いた。

 少し首を横に振っている。やれやれ、という感じだ。

「全く何言ってるんだか。それで透君は何級なんだっけ?」

 透は黙った。何かにやられたかのように。

「B級です。ぐはっ!」

 そんな滑稽な会話に「ふっ」と笑う人影。極だった。痛い衣装に身を包む彼は透を見て笑っていた。

「この世界の最強がB級とは。この四番目の我が力もすぐに貴殿を抜かそうぞ。」

 片手を片目に当てて決めポーズをしている。

 相変わらずアルファはため息を吐いている。

「それで、立春君は何級なの?」

「B級だ。ぐはぁっ!」

「馬鹿でしょ。こいつら。」

 三人は人目を気にせずに倒れていた。

「仕方ないだろ。試験受けても不合格になるんだからぁ。うわぁぁぁん!」

 感想が出てこなかった。

「どうすりゃ、A級になれるんっすかぁ?」

「はぁ。じゃあ、勉強会でも開くか?」

 その提案を三人は飲んだ。そこに俺も参加することになった。

 彼は独り言のように小さく、

「ありがとう。前を向く君たちに救われたよ」と呟いていた。


 まずはズリアンの紹介から。

 俺らは必死に座学研修を受けた。その中で、写真を見せて、どんな奴なのか説明する場面となった。

 最初はフラミンゴ型のズリアンであるクラシンゴだった。俺、カク、透、極の順に答える。

「体が伸びる奴」「足を伸ばして攻撃するね」「自由奔放な性格っすよね」「群れなかまでいるな」と。

「モンキー・D・ルフィかな?」

 今度はどのように戦えばいいのか問われた。

 俺は少し考えた。その間に他の三人が答えを出した。

「殺られる前に殺ればいいんじゃない?」「そんなん考えなくてもいいっすよ。何とかなるっすもん」「左手に十字架を描き、その紋章を掲げれば、神の加護を得て、そのものを闇に引き込むだろう」と。

 俺は答えるのを躊躇ってしまった。

「そうか。真面目に答えてるのか?」

「そんなん、当たり前っすよね。真面目以外に何があるんっすかぁ?」「我も右に同じ。」

「そうか。どうしようもない馬鹿だったね。もうここからはハラスメント必須の指導をするかな。」

 その日から三日三晩、スパルタの指導が続いた。帰れない詰問。ただ、俺はいつの間にか指導から外れていた。アルファからは自主学習を勧められた。

 雑学の勉強会は一旦区切られた。

 続いて実技、つまり戦闘面での勉強会だ。

「これについては、指導者をこの人に頼んでいる。」

「いやぁ、A級昇格試験の実技面かぁ。トレーニング好きの自分が、強くなるための方法を教えようと思う。」

 そう言いながらやってきたのはA級の大森おおもり小満しょうまん。怪力の能力を持つ大柄の男だ。

 彼は勉強する側の人を確認している。俺、カク、極、透。見ていく程に冷や汗が出ていくのが分かる。

「よろしく頼むよ。」

「いやいやいや。X級ズリアンのフィニッシャーとMVP、武器使いのナンバーワンと、業界ナンバーワン、教えられる訳ないだろっ!!」

 大森の驚きの雄叫びはホープの中に響いたという。

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