第14話 【VS ジャンバーユ】③

 トリ型マスクから放たれる幾つかの蔦。それらがズリアンらを縛り殺す。

 ズリアンを囲む水。空気を奪う。奪われたズリアンは命を溶かしていく。

 毒のミストがズリアンを襲う。

 三つのガスマスクから飛び出す旋風で宙を舞い、持っている刀で切り裂く。


 彼ら助っ人らの力で、数の多いズリアンが次々と消えていく。消えていったズリアンの分のエネルギーをジャンバーユに放っていくがダメージは微々たるものに見える。

 巨体のジャンバーユは地面を殴る。即死レベルの攻撃をハンターらは避ける。

 避けた先にワニゲイター。俺は衝撃波を食らう前に、回転した牙攻撃でワニゲイターを撃退した。

 そこにペンギン型のズリアンがやってきた。それは体を膨らませると爆発し、周りを軽く吹き飛ばす。俺も軽く吹き飛ばされた。

 吹き飛ばされた先で四匹のハザラシが上空から襲いかかってきた。

 捌ききれない。

 俺は身構えた。

「貴様らを今宵の夜に沈めて進ぜよう!」

 三つのガスマスクから放たれる旋風が空中でバランスを崩しながら進ませる。不自然な回転に身を委ねる一人の男がハザラシを三匹、刀で切り裂き、葬った。

 残り一匹となったハザラシを俺の牙で葬る。

「まだ有象無象が蔓延る。気を緩むな、若き者よ。」

 厨二病のような服装と気取った態度。それに似合わない強さが俺を高揚させていく。

「現在、ランキングファイブのきわみ立春りっしゅん。その旋風の異能力、お借りしますよ。」

 そこに板がやってきた。そして、彼のマスクに触れると、その旋風の異能力で幾つものズリアンを吹き飛ばした。

 立春と言う男は風のように他の所へと向かっていった。

 そこに残された俺と板は向かってくるレーサーパンダとハザラシを蹴り飛ばした。俺の牙で二匹とも食らいつく。

 後ろから襲ってくる一匹のズリアン。トラ型の子どものズリアンだった。そのズリアンは水の膜に覆われている。

 トラ型ズリアンを覆う水が怪しい紫色に濁る。苦しんだ後に消えた。

 二人の男女がそこにいた。

「ランキングフォーの大安たいあんログ。毒霧の異能力。そして、ランキングスリーの根室ねむろ望羅のら。水操の異能力。どちらも使いにくいな。」

 そんな独り言を吐いて、そこを後にした。

 そこに、無数の蔦が現れ、近くのズリアンらを一網打尽にした。

「そして、ランキングツーの俺ちゃんこと小寒しょうかんとおるっすね。板ちゃん、俺ちゃんの蔓蔦の異能力はどうっすか?」

 調子に乗っている男が来た。

 全く、という顔で板は見ている。

「相変わらずのお調子者だ。しかし、能力は借りるとしますよ。」

 板は彼のマスクに触った。

 それから、放たれる蔦がジャンバーユの腕を掴んだ。その蔦を収束させることで空を飛んでいく。彼はそのまま別の所へと行ってしまった。

「全く、どっちがお調子者なんだよ、って感じだよな。」

 透は気さくに話しかけてきたが、その問いの返答には少し困る。

「お互い様だろ。」「悲しいこと言うなよぉ。」

 そんなこと言っている内にペンギン型のズリアンが数匹やってきた。

「来たな。爆発するズリアン。こんなに数が多いと面倒だな。」

「ん? 屁吟へんぎゆっすね。面白いっすよね。屁を体に流し込んで爆発するんっすよ。マジでツボるわぁ。」

 蔓の先がヘンギユを穿った。そして、消した。貫けなかったヘンギユを俺が食らった。

「サンキュー。ナイスアシスト。ホープのナンバーツーが褒めて遣わしちゃうよ!」

 そんな時に、大きな炎が燃え盛った。見えなかったジャンバーユが姿を現していく。炎に苦しむが、大きな雄叫びとともに炎は消え去った。

 そこに一斉に放たれた波動砲。

 ジャンバーユは地面に倒れたとともに、小さくなった。

「これはそれそうとないチャンスじゃん。」

 そう言って駆け出した透。俺もまた一緒に走っていくことにした。

 小さくなったとはいえど、人間の二倍の大きさはある。俺らが来た時に、ちょうど、アルファが思いっきり殴られ飛ばされた。

「痛いね。ほんとに、僕も板さんも持てる限りの本気で放った即死級の一撃だと言うのに、これでようやくスタートラインなんてね。」

 アルファが膝を着いた。

 ジャンバーユは胸を叩き雄叫びを上げていた。


 他のハンターらが襲いかかる。

 その場で回転しながら殴る攻撃。それによってハンター達が吹き飛ばされ負傷した。

 ハンターが集結していく。

 ズリアンもまた集結していく。

 ジャンバーユからちょいと離れた周りでは多数対多数の戦いが幾つも繰り広げられていった。

 俺もまたその一人。動けずにいるアルファを守りつつ、旋風の能力者である極とともにズリアンと対峙していた。

 メリカン二匹の水の球が放たれる。素早い抜刀で一つは半分に斬られ消える。もう一つは俺が食べた。

 ヒアランやレーサーパンダが突進してきた。

 極は三つの不規則な旋風に乗って崩したバランスで縦横無尽に動く。その間にヒアランやレーサーパンダを斬り伏せた。ただ、倒せなかった余りもあった。そいつらは俺の番だ。俺の牙が奴らを穿つ。

 まだまだ襲いかかってくる。

 極もまた捌ききれない。

「『炎渦えんか謡増うたいます』」

 その時、周りを囲む温かな炎が現れた。

 炎が渦となりズリアンを飲み込んでいく。

「ありがとう。ここは僕に任せなよ。」

 炎が風に乗り、さらに勢いが増していく。

「我の漆風しっぷうが敵を葬る。行け、老若男女。貴様に、ボス戦での我が役割を与えよう。」

 炎と風が重なり合い勢いを増してズリアンらを消し去っていく。

 燃え盛る炎をバックに俺は中央へと進んだ。

 中央にいるのは限られたハンターとジャンバーユのみ。近づいてきたズリアンはすぐにハンターが滅し、そのハンターが他のズリアンを倒しに行く。そんな訳でここにいるのは限られたハンターのみだった。

 ジャンバーユは地面に倒れ込み、その上に透が乗っている。彼は体から蔓蔦を出して拘束していた。また、その能力を借りた板もまた蔓蔦で拘束している。カクの糸、包の鉄の鎖も拘束している。

 大柄の男がストレッチをしている。

 肩を回している。

「準備はいいかい、大森おおもり君。」と板。

「おうっ!」

 何かを始めるようだ。

「ちょうど良い所に来たね。クシブ君。頼みたいことがある。」

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