第11話 ''三人目''場所作りのカク☆
俺達ハンターは必ず三人以上のチームを組まされる。というのも生死が絡む仕事上、二人では危険性が高い。また、相互監視の理由もある。一人が異能力に浮かれ悪いことに手を染めた場合に二人でも対応に追われ対処できないが、三人なら不意打ちへの危険度が低くなる他、本部への連絡などができるようになる。
ということで俺とアルファの二人しかいないチームがいよいよ療養期間を終えようとしている中、新しいメンバーを迎えることになった。
立夏やヨムに似た顔をしている。小さな男の子。白黒ボーダーにオーバーオール。可愛らしさが残る男の子だ。
「B級の
気さくな感じだった。
印象は良さそうだったが、横にいる人はそんなに良さそうな顔はしてなかった。
「みんなはなんて言うの~?」
「俺は
「僕は
「へぇ、警察かぁ。カクはね、暗殺一家の一人なんだよ。あんまり好きになれなくなりそぉかも?」
「正解。僕は君が暗殺一家って知ってるから、もう好きにはなれない。全くその通りだ。僕は法を守らない悪人どもは嫌いなんだよ。それも人を殺す不届き者は好きになんて絶対になれないね。」
ギスギスした雰囲気が流れる。
正義が溢れ出すアルファにとって、暗殺者は許せない存在のようだ。立場を考えればこうなるのも頷けるような気がする。
嫌悪感を顕にする彼とは真逆に、カクはヘラヘラとしていた。座るところではない所に座りり足をバタバタさせている。
「まあ、安心してよ。カクは暗殺一家の一人でも、異例な存在だったから。」
「異例な存在?」
俺らの声が重なった。お互いにその言葉が引っかかったみたいだ。
「自分達、
彼はその問いに、間髪入れずに返答した。そこに感情や思考は入れ込んでなかった。
「裏では名の通った伝説の暗殺一家。」
「他には?」
そこで彼はハッとした表情をし始めた。
「美女美少女の暗殺姉妹。って、女だけじゃなかったのか。」
「そうなんだよね~。カクはね、六人の姉弟の中で唯一の男なんだよね。それもお父さんももう亡くなってるから、家で唯一の男なんだよ。だからこその異例中の異例なんだよっ。」
足の交互に動かす動きが止まった。
「五人の姉ちゃんからは酷い仕打ちも食らったし、そんないい思い出もないんだっ。だからね、暗殺スキルを叩き込まれても、姉ちゃんらみたいに暗殺業に勤しむ気にはなれなかったんだよ。つまりさっ、みんなの思うような友引一家じゃないんだよね~。」
ヘラヘラしているけど、その奥にはどこか由々しい奥深さがある。
これ以上の素性は掴めないまま次の日になった。三人で任務の場所へと向かった。
乾いた土。小さくひび割れている。
その上には子どもの象のズリアンが立っていた。それ以外のズリアンの気配はしなかった。
「相手はあの象だけだね。」
無邪気な様子で前のめりになっている。しかし、あの象──シンゾウを知る俺らは無邪気になんてなれなかった。
「あれは子どもでも、腐ってもA級だ。油断しちゃ駄目だ!」
アルファの忠告は無視され、そのまま戦場へと駆け出していった。フェイスシールドの奥側はニヤリと笑っていた。
武器となる先端が二つに枝分かれしたクナイに似た小刀を三本も取り出した。日差しを反射してギラリと輝く。
そこら辺に適当に投げられた小刀は突然勢いを増して進んでいく。それも何も無い空中で突然、軌道を変えたり、スピードが倍速になっていく。二つの小刀はシンゾウの表面を傷つけた。
その攻撃で我々の敵意に気づいたようだ。
シンゾウが鼻を大きく上に伸ばした。強烈な一撃が来る。
カクもまた移動した。
小刀が空中に貼られた糸に当たり、跳ね返る。それにより軌道が急転換し、シンゾウを切り付ける。シンゾウの周りでは何度も軌道を変えながら速度を増しながら無数の小刀が縦横無尽に動いていた。誰もそこには近づけない。
シンゾウの鼻が大きく振られる。
地面への衝撃。乾いた土はその勢いに耐えきれず、細かく砕け散った砂がそこら中に舞っていった。
カクの姿が見えない。
大丈夫か。そう思った途端、砂煙の中から煙がら人影が見えた。小柄な人影だ。きっとカクだ。
空中に舞っていた小刀を一つ掴み、二刀流でシンゾウに向かっていく。回転しながらシンゾウの体を抉っていく。
砂煙が止んだ。
カクは二つの小刀にスナックを効かせて回転させた。ブーメランのように投げられたそれは、空中で倍速となり、軽く軌道を変えたり、糸に当たって大きく軌道を変えたりして、シンゾウを何度も何度も襲った。
「そろそろフィニッシュにしよっか!」
カクが二つの小刀を上手くキャッチした。
彼は何故か空の方を見あげていた。
空高くに、落ちてくる物体。それが突然、勢いをまして落ちてくる。
小刀だった──。
加速していく小刀は、落下エネルギーを力に加え。シンゾウの体を貫いた。
追い討ちをするように、カクは持っていた小刀で強く切り付け、シンゾウを切り倒した。
「ほら、フィニッぃ~シュ!」
余裕そうな表情のカク。
「どう、見てた? 挨拶代わりのカクの活躍をさっ。カクの能力はね、フィールドに透明な板を作り出して、そこを通り抜けた
だからこそ、突然に速くなったり、軌道が変わったりしたのか。
「強いね。けど、このぐらい強かったらA級なんて余裕でなってるんじゃないのか。それにS級も目指せる範囲内だ。」
その通りだ。あのシンゾウを容易く撃破したのだ。あの時の鬼気迫る猛攻は圧倒的強さを誇っていた。
「もう三、四回A級になるためのテストは受けてるんだ。だけど、全て不合格なんだよね~。」
あれだけ実力があって不合格なのか。A級はどれほど強くなくてはならないのか。身震いしそうだ。
「実技は余裕で合格ラインに乗るのにね、筆記がいつもダメなんだよねぇ!」
「えっ、筆記なんてあるの?」
俺は思わず声を上げてしまった。A級になるには筆記試験を受けて合格しなければならないらしい。
「ああ、そういうことか。クシブがついていけてないから、簡単に説明するね。A級になると立場が上になる。B級、C級のリーダーとか引率とかの立場になるんだ。まあ、部下って感じだね。そして、A級は部下の安心安全を守ったり成長を促したりとやるべきことが増えるんだよ。」
なるほど。
「例えば、A級になるとね、事前の確認をしなきゃいけなくなるんだ。相手のズリアンの名前や特徴、弱点等を読み上げたり、その時の任務をおさらいしたりね。きっとクシブも言われたことが何度もあるでしょ? そのようなことができるように筆記試験が設けられているんだけど、カクはその試験が全くダメなようだ。」
カクはてへへ、と笑っていた。そんな風に笑っている余裕はない気がするが。
ピロリンっ。
シロクマさんからのメールが来た。
アルファがそれを見る。
「救援要請が来た。今、X級ズリアンのジャンバーユと戦っている。逃げ切れないまま戦闘となり、危険な状態となっているみたいだね。」
メールを見た。そこに添付された写真にはゴリラっぽいものが見える。
「それって、どんなズリアンとかどんな能力とか分かるのか?」
「送られてきた情報によるとゴリラ型のズリアンで、マスクを被っているとのことだ。それに伴ってか能力は二つ。巨大化と透明化。正直に言うと、俺らじゃ足手まといになるかも知れないね。」
ゴリラ型のズリアン。巨大化。透明化。そのズリアンのことを俺は知っていた。
リスタのことが頭を過ぎる。
大切な先輩を殺したズリアン。俺はそこに恐怖などを感じることはなかった。あるのは彼の代わりに敵を取りたいという人情だった。
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