第8話 火炎のマスク
森の中、掻き分け進む。
そこに二体のメリカンが現れた。放たれる水の玉。それを跳ね除けるようにレーザーがメリカンに向かって直線的に進んで撃ち抜いた。連続で放たれたレーザーが何回か当たりそれを撃ち落とした。
「任務は〇〇設楽を手に入れ帰ること。それ以外の素材は余裕があれば手に入れることにしよう」と小さな声で伝えてきた。
まだまだ序盤。
俺らはメリカンの羽を手に入れた。
茂る草を踏みしめいく。轍にもならない足跡を残し進んだ先にはワニのズリアンがいた。ワニゲイターだ。その大きさは目を見張るものがある。
ワニゲイターがこちらに気づいた。
「これはまずいぞ。」
放たれた衝撃波は俺らが踏みしめても何にもならない雑草共を蹴散らした。衝撃波を食らった所は土が顕になっている。
ハザラシだ。いつの間にか俺の顔付近にきていた。反射でしゃがむと、さっきまで顔があった位置に尻尾が現れていた。
「危ねぇっ!」
「戦ってる暇じゃない。逃げるよ。」
ワニゲイターの攻撃に気づいたズリアン達。数匹のメリカン、ハザラシ、クラシンゴが救援に駆けつける。
放たれる水の玉。飛び跳ねて避けた先にはハザラシの尻尾攻撃。流石に避けきれない。俺は勢いよく大木に叩きつけられた。
そこに放たれた衝撃波。
『蒸気機関』で身体能力を上げたアルファが炎の爆発力で瞬発力を高め、その速さで俺を掴み移動する。お陰様で衝撃波を避けることができた。
クラシンゴの伸びる足。
もうその攻撃は受け付けない。なぜなら何度もそれを食らってるからだ。
七五三がクラシンゴの足に絡まれている。二匹の足が複雑に絡まり彼女は身動きが取れなくなっていた。
そこにハザラシが勢いをつけた尻尾攻撃を繰り出そうとしていた。
「んなのこと、させるかよっ!」
野獣の足で剥き出しになった土を蹴り上げる。ハザラシに追いついた。後は、
「こんにゃろぉ!」と蹴り飛ばす。
力を込めた蹴りがハザラシを遠くに飛ばした。その間に、アルファの炎がクラシンゴの巻きついた足を弛めさせた。そこに向けて放たれた炎が一匹のクラシンゴを飛ばし、もう一匹はレーザーが飛ばした。
ゆっくりと息を吸うことはできない。
間髪入れずに飛んでくる水の玉。強烈な衝撃波。なのに、さらに来るズリアンらの増援。
「キリがねぇぜ。なんだこのモンスターハウスは。」「まともにやってたら死ぬ。逃げるのに徹しよう。」
草木を勢いよく掻き分けていく。
それを追うズリアンら。
何とか振り払えた。が、少しでも目立てばすぐに気づかれる。さらに、もう目的地の付近まで来ていたのだが、目的の品を守るように一匹の巨大な像型のズリアンがそこにいた。
「あれはA級の'子どもの
木々に隠れ、ひっそりとした場所から覗く宝石に似た〇〇設楽。まるで前門の虎後門の狼。進めばシンゾウ。戻ればモンスターハウス。結局、どちらかを選んでもピンチには変わりない。なら──
「俺が囮になるから、取りに行ってくれ。」
「僕も囮になるよ。なごみんは〇〇の方を取ってきてくれる?」
「うん。分かりました。」
「じゃあ、覚悟を決めよう。どう?」
「ばっちりだ。」「大丈夫です。」
ヒソヒソとした打ち合わせは終わった。
俺は思いっきり飛び出した。シンゾウも俺に気付く。
「殺る気じゃねぇと殺されちまうからな。死ぬ気で行くぜ。覚悟しろ。」
俺は勢いよく飛び出して蹴りを入れようとした。しかし、鼻で軽くいなされた。
シンゾウは鼻を横に空振りした。次の瞬間、俺はその横方向に向かって叩きつけられた。風圧ではないことは分かった。
「次は僕が相手するよ。」
炎をまとった体。炎をまとった足で強く蹴るも、振り払った鼻とぶつかり勢いは相殺された。アルファのまとっていた炎は突風でかき消されてしまっていた。
まだ彼は諦めていない。手に炎を宿した。
俺もまだ諦めてない。シンゾウに向かって走り出した。
が、シンゾウは地面に向けて鼻を叩きつけた。土が割れ、割れた破片が周囲に勢いよく飛び散った。俺もアルファもそれによる風圧と飛び散る破片で軽く飛ばされた。木に叩きつけられる。
何か嫌な予感がする。嫌な予感がする方向を見るとそこにはワニゲイターがいた。抉られる地面。衝撃波がそこを襲った。
「危なかった。後一歩遅かったら危なかった。」と思わず垂れる。
メリカンが飛んでくるのが分かる。すぐに到着するだろう。
アルファはシンゾウと互角の戦いをするものの若干押され気味だ。
その瞬間、彼は空振りした鼻により、木々に叩きつけられた。
「ここは一か八かしかないな。」
覚悟を決めてシンゾウの前に立つ。これこそ前門の虎後門の狼だ。前はシンゾウ。後ろはワニゲイター。挟まれた。
ワニゲイターが口を大きく開けた。俺は振り返らずに前へと走る。先にいるシンゾウは俺に向けて鼻を縦に振ろうとする。
一か八か──
俺は思いっきり地面を蹴って横に逃げる。
真っ直ぐ放たれた衝撃波がシンゾウを襲う。縦に振られた鼻がワニゲイターを叩きつける。二匹ともともに大きなダメージを負ったように見える。
「ねぇ、〇〇設楽を手に入れたよ。」
七五三が目的の品を持ってやって来た。
「後は逃げるだけだ。」
そこに救援に来たメリカン。
水の玉を潜り抜けて山を下っていく。息が苦しい。マスクのお陰で能力が上がろうとも、この任務は過酷過ぎた。
敵は増える。ハザラシやクラシンゴの攻撃を避ける。時々放たれるレーザーが敵を怯ませてくれた。
水の玉も、伸びる足も、力強い尻尾も全て避けていく。そうこうしている内に乗り物まであと少しだ。
「ここら辺で敵をまくよ。『
放たれた巨大な爆発がズリアンらを襲った。
炎による灰色の煙が敵の視界を奪う。
俺らはその間に乗り物に乗り込んだ。エンジンをつけて、勢いよく飛び出した。
「何とか任務は完了だね。」
「ああ、そうだな。一時はどうなることかと思ったぜ。」
「最後の技でもう限界ギリギリだ。」
疲れきった俺ら。
穏やかな雰囲気で乗り物を乗り回していった。
のだが──
「こちらシロクマだよ。緊急事態だ。そこにX級ズリアンがいるとの情報が入った。君達も気をつけてくれ。」
不穏な連絡。
いつの間にか地面が逆さまになって見える。
何故だ?
すぐにその原因が分かった。乗り物が前に飛ばされたのだ。それに気づいた頃に俺らは地面に叩きつけられ、地面を転がった。マスクをつけていたお陰で助かった。
「これはまずいね。そこにX級ズリアンがいる。どんな手を尽くしてても自分の命を守ってくれたまえ。」
どこからともなく地面から色の着いた細い縄が飛び出してきた。
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