外伝 500人の異世界開拓記録 その1
「うーん…、なんだ今の…」
いきなり、目が眩むような閃光が辺りに広がり思わず目をつぶる。
目を開けた瞬間、俺は広い草原に突っ立っていた。
「な…なんだ?」
周りを見渡すと俺と同じように周りを見渡す大勢の人が俺と同じようにキョロキョロと周りを見渡している様を俺は見渡す。
…だめだ、訳が分からなくなってる。
とりあえず、隣にいる制服を着た女子高生に話しかけてみる。
「あの…」
「ひい!」
話しかけた途端に女子高生が悲鳴を上げて後ろに下がる。
「…俺、そんな怖い?」
「あ、い、いや、ちょっとびっくりしちゃって……」
「そ、そっか。ところで、君の名前は?俺は『田中 ひろし』」
「私は『佐藤 幸』です」
自己紹介も済んだところでここに来る前の事を訪ねてみる。
「沙藤さんはここに来る前に何があったか分かる?俺は川原を歩いていたら、いきなり光に包まれて気が付いたらここに」
「私も同じです。学校に行く途中にいきなり光が……」
なるほど、訳が分からないのは同「てことは?」「異世界転移?」「「キターー(・∀・)ーーーー」」ってうるせぇ!
横を見てみると、二人の男性が興奮した様子で大声を上げていた。正直、関わりたくないが一応声をかけてみる。
「あのー、どうかしましたか?」
「む?貴方も飛ばされてきたのですかな?」
「はい、あなた達もですか?」
「うむ、そのとおりですぞ」
「私達は『魔女っ子プリニャン』のDVDを買う途中に光に包まれましてな」
「で、気がついたらここにいたと」
やっぱり同じか。とりあえず、自己紹介はしておこう。
「俺の名前は『田中 ひろし』」
「私は『佐藤 幸』です」
「私は『火野 剛』」
「拙者は『火野 飛鳥』」
「「二人合わせて、『ファイアーブラザーズ』!」」
「どこの中学生姉妹だ!自分達の町を警備でもしているのかよ!」
「いや、警備しているのはもっぱら自分の部屋ですな」
「ニートじゃねぇか!」
やっぱり関わるべきじゃなかったと思いつつ、どうやって話を切ろうか考える。
すると、突然空が夕焼けのように真っ赤に染まった。同時に空にフードを被った顔が見えない「何か」が現れる。
「あれは何でしょう?」
「さあな。だが、この現象と関わりがあるのは事実だ。とりあえず、俺の後ろに隠れてくれないか?」
「は、はい」
幸ちゃんを後ろに隠しつつ『何か』に注目する。
周りがざわざわしている中、その『何か』は口を開いた。
『ようこそ、プレイヤー諸君。プレイヤー諸君はすでにログアウトボタンが消えている事に気がついていると思う』
あれ?この展開何か読んだことがある気が……。いや、気のせいだな。うん、気のせい気のせい。
『私の名前は『かやばあきひ』───』
「どこのゲームの生みの親だ!完っ全にアウトだよ!」
sa○の丸パクリじゃねぇか!というか、いまの状況でやっていいことじゃねぇだろ!
『えー、面白いじゃんsa○』
「そういう問題じゃねぇ。というか、俺たちをこんなところに呼んだのはお前なのか?」
『そうだね、とりあず、話しにくいからこのフード脱ぐね』
空に現れた奴は身にまとっていたフードをバサッと取る。すると、予想に反して中からは派手な格好をした可愛らしい女の子が出てきた。あれ?この子どこかで見たような?
「あー!お、お主は!『魔女っ子プリにゃん』の『プリにゃんレッド』!」
「しかも、最新話の『ハイパーマジカル』の衣装!」
隣の火野兄弟が興奮した様子で叫ぶ。そうか、よくcmとかで見るアニメのキャラクターだ。でも、なんでアニメのキャラクターがここに?
『お、話が通じる人がいるとはね。世間では幼児アニメと思われているけど中々深いストーリーだよね』
「10話の敵との戦闘は暗に敵対しているだけではなく敵にも敵なりの正義がありそれに苦悩するのが考えさせられましたな」
「何といっても22話の───」
「そういう話は後でしろよ!お前ら以外の全員がポカーンとしているじゃねえか!」
『ん?ああ、そうだね。話が合う人がいなかったからつい嬉しくてね。じゃあ改めて説明するね』
女の子は咳払いをすると少し表情を引き締めた。
『始めまして、私は神です。君たちをここに呼んだのも私だよ』
こいつが神か。なんか思っていた感じと違うな。
周りの人たちも少しざわつくが特別驚いている様子はない。
『あれ?もっとこう『な、なんだってー!』的な反応は無いの?』
「今のやり取り聞いててそう思うやつはいないだろ。そんなことよりここはどこなのかの説明を頼む」
『わかったよ。ここはまだ名前もない世界。君たちの所で言う異世界ってところだね』
火野兄弟の言っていたことはあながち間違っていなかったわけだ。
「で?俺たちに何をさせたいんだ?」
「君たちにはね、この世界を発展させてほしいんだ」
「発展?」
どういうことだ?
『私たちはね人々の祈りの力が必要なんだけど、手っ取り早く人を増やす方法として発展していない世界に人々を送るということをしていてね』
「それで俺たちを呼んだわけか」
ここで一番重要な事をおれは聞く。
「それで、俺たちは帰れるのか?」
『帰れないよ?』
あっさりと神が答える。そっかー、帰れないのか。
「ふざけんなよ!勝手に訳が分からない場所に連れてきやがって!さっさと元の世界に戻しやがれ!」
あっさりととんでもないこと抜かしやがって!
神が笑いながら口を開く。
『うーん、元の世界に戻すとなると強制的に全員を戻さなくちゃいけないけどそれでも良いの?』
「当たり前だ!こんな世界に突然連れてこられて迷惑なんだよ!」
『確かにそれが普通の人の反応だよね。でもさ…』
神がそのまま頬笑みながら続ける。
『
「!?」
図星を突かれて一瞬言葉を失う。確かに俺は帰らせろなんて事は全く思っていないだが─────
「確かに俺はそんなこと思っていない。だが、他の人は───」
『君の他の人に対する気遣いはわかるよ?でもさ、周りを見てごらん?』
そう言われて俺は周りを見てみると、皆が俺をじっと見つめていた。何だこのいたたまれない空気は……。
『実はね私が連れてきた人は、みんな元の世界に未練がなかったり自殺願望があったりする人なんだよね。君もそうでしょ?』
「……まあな」
ここに来る前も全てを失い、川に身を投げようかと思っていたところだ。
『まあ、帰りたいと思っている人はいないんじゃないかな?万が一帰りたい人がいたら…』
神がパチンと指を鳴らすと地上に巨大な魔方陣が現れた。
『これに乗ったら帰れるから。記憶は消させてもらうけどね』
「帰れるのかよ」
『流石に一方的にやれとは言えないからね。お茶目な冗談としてゆるしてちょ☆』
若干イラッとしながらとりあえずは納得しておく。
周りの様子を確認してみるが、魔方陣が起動した後も誰も向かう気配がない。コイツの言っていることは嘘ではないみたいだ。
「一応お前の目的は分かった」
『うんうん、諦めが早いのは美徳だね。とりあえず、この世界を開拓するにあたって、リーダーを決めておきたいんだけど「田中 ひろし」君でいいかな?』
「なんで俺!?」
『そりゃあ、君大企業の社長だったでしょ?』
「そうなんですか?」
幸ちゃんが俺の顔を覗き込む。俺はしぶしぶ頷く。
「どこの社長さんだったんですか?」
「…1on1」
「え!?あの1on1ですか!?」
幸ちゃんが驚いたように声を張り上げる。周りの人たちもざわざわし始める。
「おいおい、1on1って社長が金持ち逃げしたっていうやつだろ?」
「今も逃亡中って話だろ?」
「そんな奴にリーダー任せてもいいのかよ」
報道ではそう言われているんだよな……。弁解しても無駄だろうな……。
俺が何も言えずに俯いていると隣から大声があがった。
「田中さんはそんな人じゃありません!」
「そうでござる。先ほどから神に対して強気に発言しているのは田中殿ではないか」
「それに、自分が帰ってしまう危険を犯して皆を返そうとしていたのですぞ。そのような人がお金を持ち逃げするとは思えませんな」
「お前ら……」
まさか信じてくれる人がいるとは……。
確かに俺は幹部たちにはめられて罪をなすりつけられた。そのせいで俺は仕事も家族も全て失った。どうしようもなくなった俺は自殺を考え川原をさまよっていたという訳だ。
『そう、田中君ははめられただけで悪くないよ。むしろ一代であれだけ会社を大きくしたんだ。私は高く評価するよ』
神の言葉にさっき発言した奴らがばつが悪そうにする。
『ちなみに、田中君がいなくなった会社は経営が悪化してやばいそうだよ。警察も幹部たちがあやしいって気付いているみたいだし、田中君ならこの話を無かったことにして戻っても十分やっていけるんじゃない?』
たしかに、神の言葉が本当なら戻ってもやっていけるだろう。だが、
「いや、俺はここに残る。元の世界の仕事よりここの仕事の方がやりがいがありそうだ。それに、会社には優秀な奴らも残っているし大丈夫だろう」
『そっか、私にとってもありがたいよ。他に帰りたい人はいない?今を逃したら二度と帰れないよ?』
神の言葉を聞いても動こうとする人はいなかった。
神は『そっか』とつぶやくと指をパチンと鳴らし魔方陣を消し去った。
『うん、それじゃあリーダーは田中君で決定ね。田中君には後で私と交信出来る能力あげるからね』
こいつと交信しなくちゃいけないのか。すごく疲れそうだが俺以外にこいつのノリについていけるとも思えないし、甘んじて受け入れよう。
『それじゃあ、皆にも開拓に必要な能力をあげるからそれぞれ頑張ってね』
よしっ!異世界開拓やってやるぜ!
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