EP74【ぼったくり貿易 と 奴隷の在り方】

 「お客さんお目が高い! そうです、こちらの商品はブリード王国では中々お目にかかれない、魔力を通すと発光する鉱石、通称『魔光石』と呼ばれる物を加工して作られた宝石です。 私らが独自のルートにて入手した希少な商品でございます」


 「ふむふむ、確かにこれは良い物だ。 妻や娘の分に1つずついただこう!」


 「ありがとうございます。 はい、確かにお代はいただきました。 今後も様々な希少な商品を仕入れて出品致しますので、何卒ご贔屓ひいきによろしくお願いします』


 ふっふっふっ、売り上げは順調だ。


 カイヌ帝国の宝石商で買った魔光石の宝石は、ブリード王国の貴族連中へ高値で売れる。


 この売り上げでブリード王国の貨幣を手に入れて、魚の保存食や貴重な食塩を可能な限り購入。


 そして聖ロイ・ハーネス領へ帰還。


 帰還後はカイヌ帝国にてブリード王国の商品を転売。


 カイヌ帝国では魚料理や食塩が入手困難の為、こちらも貴族連中が高く買ってくれる。


 全く、仲違いしている国同士の間に入ると、こうも簡単に利益が上げられる。


 両国が仲の悪いままでいてくれている内は、稼ぎ続ける事ができる訳だ。


 それもこれも全てはドギーマ子爵領へ密かに関係を持ったブリード王国が、頑張って両国間にある深い森へ、道を切り拓いてくれたお陰だ。


 ドギーマ子爵領の反乱が鎮圧され、私達により聖ロイ・ハーネス領となった今は使われなくなった秘密の街道。


 せっかくブリード王国軍が、月日をかけ苦労の末に切り拓かれた街道が、誰にも使われなくなってしまうのは勿体無い。


 どうせ使わないのなら、私達が有効活用させて頂こう!


 当初の中立国構想を立てた時は、自力でブリード王国まで道を切り開くつもりだったから、実際に交易を開始するまでにはかなりの月日をかけなければいけないと覚悟していた。


 それが面倒で後回しにしていたら、すっかり中立国構想を忘れていた。


 そして今回のドギーマ子爵領での反乱事件。


 その時には既にブリード王国軍により、切り拓かれていた秘密の街道がそこにあった。


 ご丁寧に馬車を通せる様に、ある程度の道幅まで確保してくれている親切な仕事ぶり。


 全く、ブリード王国軍には感謝しても仕切れないね。


 わざわざ私の野望のお手伝いを、頼んでもいないのに率先して行なってくれたのだから。


 お礼にカイヌ帝国産の商品をブリード王国人へ売り付ける際には少しだけお安くしてあげよう!


 それでも十分ぼったくりの値段ではあるけどね。


 それこそ仕入れ値の290%の値段でね。


 ブリード王国産の商品は、カイヌ帝国人へ仕入れ値の300%の値段で売っている。


 つまり100の値段で買った商品を、300の値段で売っている訳だ。


 これを繰り返せば、あっという間に聖ロイ・ハーネス領は、貿易バブルでウハウハ状態になれるのだ!


 しかし、あまり派手にやってしまうと、両国のお偉方から目を付けられるかも知れない。


 なので、取り扱う商品量は、1週間に馬車1台分の往復だけに留めるつもりだ。


 そして、そろそろ貿易(ぼったくり)商売がある程度軌道に乗ってきたので、私が率いている第1中隊の中で数名、算術に秀でた者へ業務を引き継ぎし、完全に任せる事にした。


 もちろん貿易義務を引き継ぐ兵士には商人の格好をさせて、自衛が出来るだけの隠し武器も装備させておく。


 問題があれば自分で何とかするだろうし、自力でどうにもならなければ、中隊の仲間へ信号を送り、すぐに応援が駆け付ける手筈になっている。


 念の為、私達の使う馬車の出所を知られたくは無いので、振り切れない追跡者がいれば、それが何者であってもになってもらう様に指示してある。


 この世界にストーカー規制法は存在していない。


 その為、追跡者の対処は自ら行わなければいけない。


 無断で他人の秘密を探ろうとする変質者は、2度と家に帰れなくなる訳だが、それは自業自得なので諦めてもらうしか無い。


 この世界ではストーカーという行為は、文字通り命懸けでなければならない。


 世知辛い世の中だね。


 引き継ぎが終われば、私は次なる事業へ着手するとしよう。


 ハーネス侯爵領(親方様の方)の入浴施設の増設とサービス体制向上に着手しなければならない。


 それが終わったら花火職人へ会いに行き、火薬の戦転用の模索。


 第1中隊のニーナ副官を連れて、出張医療の提供(売名&宣伝目的)で各領地を周る。


 などなど、聖騎士大隊はいつでも大忙しなのだ。


 あれ?


 奴隷ペットって、ここまでバリバリ働くものだったっけ?


 う〜ん、、、、あぁ〜あれだ!


 犬とかは毎朝ポストの新聞を取りに行ったり、寝ているご主人様をお越しに行ったり、番犬をしたりと、ちゃんと仕事をするものだ!


 だから私が今、こうして忙しく働いている事も、奴隷ペット業務の範囲内で間違っていない。


 あぁ〜良かった。


 私は自分の在り方を見失ってはいなかった。


 たまに自分の行動を、こうして振り返る事も大切だ。


 今後もたまに、私は自分の行動が信念に反していないかどうかを1度立ち止まって、確認する習慣をつけて行こう!


 よし、じゃあ明日からも奴隷ペットとして元気に働くとしましょうかね!


 私が今後の方針を確認して、スッキリした気分で1日を終えようとしていた時、カトレアちゃんがアクビしながら私の部屋へ入ってきた。


 「カエデ姉さん、私の中隊から緊急連絡だよ〜、ブリード王国軍がこちらへ向かってるって〜」


 それは緊急連絡の割に、あまり緊張感の無いカトレアちゃんの報告であった。 


 報告はありがたいが、中隊隊長として、それで良いのかい、カトレアちゃん!?

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