EP67【神秘的な2度寝】

 私はパレードの後意識を失い、その後目を覚ましたが、体調不良の為に2度寝をしていた。


 2度寝の直前には奴隷の首輪へ『展開中の幻影魔法は意識が無い間も維持される』と魔力にて条件を流し込んでおいた。


 なので、もう何も心配する事は無い。


 私は身体と心を休めるべく、貸し与えられている宮殿内の客室ベッドにて天井を見上げていた。


 ここまで理想の奴隷ペットライフの実現の為に、駆け抜けて来た気がする。


 計画通りに事が進む事も当然あるが、それでも数多くの失敗もしてきた。


 今まで何度かご主人様や私は、下手したら死んでいたかも知れない事もあった。


 私達がまだ生きていられるのは、ただ単に幸運が続いていたに過ぎない。


 特に私は信心深い宗教家という訳ではないが、今回は神様の名前まで悪用させていただいた事もあり、いつか神罰みたいな事が与えられても不思議では無い。


 まぁ、古来より神様とは戦争や、ぼったくり宗教の行いを正当化する為に使われてきた経歴がある。


 なので今回私に使われるぐらい、神様にとっては『あぁ、またか? まったく仕方ない奴だな〜』ぐらいの軽いノリで流してくれるかも知れない。


 きっとそうだ。


 だって神様だもん!


 そのぐらいのサービスをしてくれても良いはずだ。


 私はフッと安心して、張り詰めていた気持ちを解きほぐして、引き続き休む事にした。


 次の瞬間、私は何だか真っ白い空間に浮かんでいる感覚に気がついた。


 アレ、何だこれ?


 周囲全てが真っ白い。


 身体の質量どころか、身体があると言う感覚すら無い。


 まるで魂1つで何もない空間に放り出されたかの様な感覚だ。


 これってもしかして、私また死んじゃったかな?


 最近頑張りすぎたから、過労死も考えられる。


 志半こころざしなかばで再び死んでしまうなどと、冗談ではない!


 まだまだ私はやらねばならない事がたくさんあるのだ!


 『安心せよ、其方そなたはまだ生きておる。 此度こたびは我が意を伝えるべくこの空間へと呼んだに過ぎぬ』


 何だ、この魂にズシンと響く様な重たい声は!?


 『我は其方らが勝手に神だとか呼んでいる存在である。 これより神託しんたくを其方へ授ける!』


 何っ、『シンタク』だと!?


 確かに前世では老後に備えて投資で資産運用していたが、まさかあの時のお金が戻って来るという事か!?


 それはありがたい!


 前世ではせっかく投資で増やしたお金を、結局使う事なく死んでしまったから、無駄に終わってしまっていたのだ。


 だがこの世界では日本円どころか、アメリカドルすら使えない異世界だ。


 こちらの貨幣への両替だから、かなりの手数料が取られそうだ。


 だけど、どうせ死に金だったから無いより断然マシと言えよう!


 神様も中々に粋な計らいをしてくれるものだね!


 うっかり私も入信してしまいそうになる!


 『えっ! とうししんたく、何それ? よく分からんが、何か勘違いをしている様であるな。 我は俗物に対して一切手出しはせぬ』


 な〜んだ、神様使えね〜、じゃあ何だって言うんだよ〜、、、、って、神様、私の心の声読んで無いかい?


 『今更気が付きおったか? 左様、そもそもこの空間に其方の身体は無いのだから、魂の対話に決まっておろう? 其方の考えは、そのまま我へと伝わる。 心せよ!』


 げっ、マジか〜、それじぁ迂闊な事考えられないじゃ無いか〜、神様ドケチとか、神様無能とか、神様いつもありがとう、とか言えないじゃ〜ん!


 『今更取り繕う様に感謝の言葉を添えても何の意味も無いわ、愚か者!』


 ちっ、やはりダメか、仕方ない、腹を決めて神様の話しに耳を傾けるとするか。


 でも魂に耳あるのか?


 『どうでもいい事を気にするで無い! とっとと本題に入るぞ!』


 神様の姿は見えないが、何だかお疲れの雰囲気だ。


 きっと、神様ならではの気苦労があるのだろう。


 そこは是非にご自愛願いたい。


 『其方が言えた事か!』


 神様は怒りっぽい。


 きっと更年期障害か何かだろう。


 神様にもそう言うのがあるんだね、お勉強になったよ。


 『まぁ良い、本題だ。 これより其方達聖騎士は軍隊となる。 その聖なる軍隊を其方の主と共に率いて、この乱れた世を正しき形へと直すのだ! 』


 ほほぅ、つまり軍隊を指揮して世直しの旅をしなさい、と、そう言う事だね。


 まぁ、そもそもの私の目的と割と似通っているから、そのぐらいのやってあげても構わない。


 だけど、意外だね。


 神様って、そう言う地上の争い事には興味が無いものと思っていた。


 案外人々の幸せを考える事の出来る、優しいご主人様的思考の持ち主なのかもしれない。


 『後、もう1つ其方へ伝えておかねばならぬ事がある、、、キースと言う使用人に、貴様は決して手を出してはならぬぞ、良いな!』


 んっ?


 これまた実に妙な、自称神様のご注文が来たものだ。


 何がしたいのかな、この人?


 『話は以上である。 では、さらばだ〜!』


 あっ、ちょっと〜、自称神様〜!!



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 「知らない天井だ」


 本日2度目の、誰も聴いていないボケをかまして、私は目を覚ました。


 ただ、人生で言ってみたかった言葉シリーズの消化をしているだけだから、特に意味は無い。


 何やら視界の隅で、金髪の使用人が静かに退室して行く姿が見えた気がしたが、まぁ、どうでも良いか。


 しかし不思議な体験だった。


 あれは本当にあった事なのだろうか?


 それともただの夢だったのだろうか?


 今となっては確かめようが無い。


 ただ私はあの自称神様へ向かって、伝えたい事がある。


 私は大きく息を吸ってからその言葉を叫んでいた。


 「神様如きが奴隷ペットに指図するとは何事ですか!!」


 今の発言の直後、廊下の方向より誰かがずっこけた音が盛大に聴こえてきたが、私は疲れたので気にせず3度寝をする事にした。

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