第3話 闇深左京の活躍
インターネット上の怪談界隈はあまりにチョロいものだった。
俺は淡々と物事をやり続けるのが得意で、はたから見たらこの健気にユーチューブの更新やSNSのトークスペースで怪談を語りまくっている俺の姿はかなりひたむきに映っているのが明らかだった。
俺はいつも歯に衣着せぬ物言いで過激なジョークを飛ばしていたが、この辺りに関しては微妙な反応が多く、「キャラ濃いですね」「トバしてますね」などとよく言われた。
「俺は怪談を数千話持っている」と嘘をついて、「実話怪談」と称して自分の妄想を語っていれば、チヤホヤされる。なんといっても俺は話が上手く、センスが良い。日々、もしかしたら「怪談師として一攫千金も夢じゃないかも」と思いながら、活動を続けた。
遅れてきた青春を俺は感じていた。
自称怪談師の老若男女と知り合いになり、比較的人気のある若手怪談師ともLINEを交換することができた。
俺は嬉しくて、酒を飲みながらメッセージを彼らに送りつけた。
今なにしてるの
俺の怪談、最強だぜ
イベントに呼んでよ
などと男性に送り、女性には、
ねえねえ。今度ご飯食べに行こうよ
君の怪談は弱いね。ロマンが足りないよ
こんどぼくが怪談教えてあげるから、呑まない?
と送った。
酒に酔いながら仲間に気楽にメッセージを送るのはとても楽しいものだった。
ただ、これらのLINEに対する反応ははじめの方こそ「メッセージ送りすぎですよw」「さすが闇深さんだなあ、意味わかんない」と柔和な返事だったが、だんだんと「深夜に何十通もメッセージを送ってくるのは勘弁してください」「良い加減にしろよ」と言葉に否定のニュアンスが色濃く見えてきた。
尤も俺はそんな反応にめげず、メッセージを送りまくった。なぜなら、最終的には俺の方が強く、正しいからだ。三流達にメッセージを送ってあげてることに感謝してもらいたいとも思っていた。
結果、男性陣からは随分とブロックされた。
交流が目に見えて減ってきた。
女性陣も数名はクレームをつけてきていたが、数名は俺との交流を続けていた。
後者の数名は、恐らく俺のことを恋愛対象として見ているのだろう。
これだから、怪談師はやめられないのだ。
底辺怪談師、干されて消える かずこ @kazuko1010
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