第2話 勢いで怪談界隈に混じってみた

コロナ禍はSNSをやたらと盛り上げた。

ステイホーム、これ即ちネットにかじりつきだ。

有料配信という言葉がやたら目立ち、配信者の増加が目立った。

そんな中で、「怪談師」という職業が俺の中でどんどん大きくなっていった。

怪談師とは、簡単にいうと他人から聞いた怖い話を、いかにも怖そうに披露する仕事だ。他の一芸と違い、ただ「話す」だけでいい。楽にもほどがある。しかも、技を磨く必要はなくただセンスさえあればいい。俺にうってつけの職業だ。着目しだすと、一流怪談師はたいてい人気者でチヤホヤされている。チヤホヤされるなんて最高だ。俺はこれからチヤホヤされるんだな、と想像すると、興奮して勃起がおさまらない夜が続いた。

俺は早速ツイッターアカウントを作り、ハンドルネームは「最強怪談師 闇深左京」とした。

やみぶかさきょう。

最高にセンスの良い名前だ。

俺はそもそも怪談話が大好きだった。

その手の本はたくさん読んでいる。

怪談は最高だ。

俺は怪談で世界を変えることができる人間だ。

いつしか、俺はそんな熱い心を止めることができなくなっていて、「怪談、最高」「ぼくの怪談でみんなを震え上がらせたいね」「猫にまつわる怪談、あります」とツイートが止まらなくなっていた。

SNSで募集があったオープンな怪談の座談会に参加し、数々の怪談を披露した。

誰もが「すごいですね!」「珍しい怪談ばかりですね!」と喜んでくれる。そんなことをしていると、俺のセンスに気づいた次第にフォロワーが増えてきて、俺はいよいよ最高の怪談師に近づいている実感があった。

怪談好きアカウントの誰もが「闇深左京」に注目していた。

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