底辺怪談師、干されて消える
かずこ
第1話 底辺怪談師、爆誕する
俺の人生はこれまで完全に間違っていた。
俺はいつだってセンスの塊だった。
ただ、出会いに恵まれなかっただけなんだ。
物心がついてから小中と経る中、俺はとにかく周囲から評価されなかった。
勉強なんかクソくらえだ、俺はセンスだけでのしあがってやると決意していたため成績は芳しくなく、親と教師の勧めでなんとなく工業高校に入ったところ、さらに俺のセンスを感じ取れそうな気配が周囲からなくなった。工業高校にはとにかく馬鹿しかいなかったのだ。高校三年間を通して馬鹿達はよく俺をいじめたが、これに関してはさほど気にしていなかった。小中学校でも同じ目に遭っていたので「ああ、またか」と思っていた。パターンは決まっている。最初はみんな柔和な態度で友達になれそうな奴を探している。だが、その最中に俺のようなハイセンスの持ち主が登場すると、段々と様子が変わっていく。俺に追いつけない自分が嫌になるのだろう。だから、俺を排除しようとする。
まったく違う理由で、「単にパッとしない奴」がいじめの対象になることも往々にしてある。そして、そのパッとしない連中が俺のところに来る。
本望でないが、俺は学生時代の全てにおいて、そうやってできたコミュニティの中にいつもいたわけだ。
俺のセンスの源は俺の本棚にある。
「オカルト大全」「妖怪図鑑」「このサブカル漫画を読め!」「映画に学ぶ社会」など、明らかに周囲の人が読まないであろう本を俺は読んできた。
お陰様でもう、完全に世の中の欺瞞を知っていて、あとは暴けばいいだけ、という段階に来ている。
現在は俺は稼ぐために三十四歳の電子基盤製造工場の工場員として働いている。
まったく面白くないし、工場でも元ヤンキーの馬鹿共によるほんのりとしたイジメに遭っている。
しかし、ついに時代が俺に追いついた。
俺は今、「怪談師」だ。
しかも、「怪談作家」ですらある。
俺がこの道に入るきっかけは、新型コロナウイルスの流行からだった。
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