#050 : 武
星屑ロンリネスの意味がわからなくて眠れぬ夜を過ごした事があるカエデ・ロンリネスです!こんにちは!
今はドラゴンさんの背中で大空を飛んでるところです!
略してカエデ オンザ トカゲ!
…
「うわぁ………凄い…」
私は上空から見る目の前の雄大な景色に感動していました。
『カエデお姉ちゃん!高いよ!怖いよ!』
エストちゃんが怖がってました。うふふ。可愛いな。
ここは大人の私がピシッとしないとね?
「エストちゃん?いい?…ホントの恐怖っていうのはね?いきなり異世界に召喚されてね?胸ばかり見られてね?着の身着のまま外界に放り出されてね?行くあてもなくモンスターがはびこる外の世界を彷徨うことを言うのよ?」
私の目からはいつのまにか涙が溢れていました。
『カエデお姉ちゃん!泣かないで!』
エストちゃんが私の手を握ってくれました。
「いったい今まで何があったんだ…」
ドラゴンさん背中に乗ってる私たちを気にしてました。
「武器も無くてね…モンスターに対抗するために石を投げたっけな…それはもう必死でね…そしたらいつの間にか石と会話できるようになっててね?ふふふ…あ!そうそう。食糧はその辺の草を食べたんだ。それでね?水はどうしたかと言うとね?」
私は泣きながら続けました。
『カエデお姉ちゃん!もう良いよ?もう大丈夫だからね?しっかりして!私はここだよ!?』
エストちゃんが抱きついて私を支えてくれました。
「我の背中の上で何が起こっているんだ…?そうだ!カエデよ。お前はサクラ様と同郷と言ったな。お前も召喚されたということか?」
「…はい。いきなりこの世界に召喚されてお前は勇者だ!って…でもモンスターと戦えないポンコツだって…胸ばかり見られて…」
私は胸を抑えながらドラゴンさんに訴えかけました。
「ゆ、勇者だと!?ステータス画面で勇者の称号があるのか?」
「はい。あります。」
ドラゴンさんは私の胸のくだりを無視して話を進めてきました。やだ…もしかしてこのドラゴンさん…紳士なのかな?
「ふむ…(サクラ様も勇者…これはいったい…この世界に何が起きているんだ…?)…それでさっきの投擲の威力だったというわけか…」
「あ。でもレベルは1です。怖くてモンスターを倒せないので。」
「は?」
『え?』
ドラゴンさんとエストちゃんが固まりました。
「え、ええと…そうだ!これからどうするのだ?安全そうなところでお前たちを降ろすが、それで良いな。」
ドラゴンさんから関わりたくなさそうな空気が漂ってきましたが、私はドラゴンさんにお願いがあるのです。
「ドラゴンさん!お願い!サクラのところに連れてって!私はこの世界でサクラしか頼れる人がいないの!」
ドラゴンさんにお願いすると、私はサクラとの想い出を振り返りました。
(…高校時代に購買にパンを買いに行かされたこと。毎日。)
(…下校時には荷物を持たされたこと。毎日。)
(…私が買った漫画を先に読まれたこと。毎回。)
(…漫画返して!とお願いしたら「いつ返さなかった?永久に借りておくだけだぞ!」と言われたこと。ジャイ⚪︎ンかよ。)
(…好きな人といい感じになると決まってサクラに邪魔されたこと。執拗に。)
「…あれ?変だな…なんだろう…親友って…なんなのかな…?…やだな…目から水が…。」
『カエデお姉ちゃんがまた泣いてる!』
私はさらに思い出を振り返りました。
(…私が女子軍団にいじめられてるとサクラが助けてくれたこと。その時「カエデは私の大事なパシリなの。私以外がカエデに命令するんじゃないよ!」と言ってたけど。)
(…いつも一緒だった。)
(…いつも守ってくれた。)
——と、とにかく!サクラと居る時は楽しかったんだ!
「…えへへwww…えへへwww…」
『カエデお姉ちゃんが今度は笑ってる!カエデお姉ちゃんの情緒が仕事してない!』
エストちゃんが実況してくれていると、ドラゴンさんが申し訳なさそうに言いました。
「カエデよ…無理だ…我はパワハラ上司のサクラ様から逃げたのだ…戻ったところで最強のサクラ様に何をされるかわからぬ…」
ドラゴンさんは完全にサクラに心を折られていました。
「あ、それなら大丈夫。ドラゴンさん!コーベの街(おっソロさんの居る街)に行けるかな?」
「む…?あぁ。ここからならすぐだな。」
…
—— 私たちはコーベの街に戻りました。
…
コーベの街の前で降ろしてもらい、私はおっソロさんのパン屋さんまで走りました。
…カランカラン
「いらっしゃい!あ?あれ?カエデ?」
「はぁはぁ…おっソロさん!ちょっとだけただいまー!wあのね!あのね!ありったけの【焼きそばパン】を売って!」
私は勢いよくパン屋さんの扉を開け、おっソロさんに抱きつきながら言いました。
「え?あれ?旅に出て?ええ?焼きそばパン??どうしたんだい?」
おっソロさんが目を丸くしていました。
(つづく)
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