#049 : Flea Waltz
ポロ…ン……ポロンポロンポロン…♪
—— サクラはピアノを弾いていた。
「…サクラさん…ピアノ弾けるのですね…。」
辰美がサクラに近づきながら言った。
「辰美…いたのね……ふふ…そうね…不安な事があると…いつもピアノを弾いていたのよ…」
ポロン…ポロンポロンポロン…♪ ポロン…ポロンポロンポロン…♪
「…この曲はね…?…とても悲しい物語なのよ…。」
そう言うとサクラはピアノを続けた。
ポロン…ポロンポロンポロン…♪ ポロン…ポロンポロンポロン…♪
「…たしかに…悲しい音色ですね…。」
そしてサクラはピアノに合わせて歌を口ずさみ始めた。
「ねこ…ふんじゃった…♪」
「えッ!?」
…
—— その頃の辰夫とカエデは ——。
「いたぞー!辰夫さんだー!捕まえろー!」
サクラの命令により辰夫を探していた魔王軍がとうとう標的である辰夫を見つけた。
「クッ!魔王軍に囲まれている…カエデ!早くここから逃げろ!」
辰夫は周囲を見回すと、慌てながらカエデに言った。
「大変!モンスターの群れが迫ってきてます!アリスさん!ドロシーさんと親方さんと逃げてください!」
カエデは遠巻きで見ていたアリス達に向かって叫んだ。
(ポロン…ポロンポロンポロン…♪ ポロン…ポロンポロンポロン…♪)
※緊迫したシーンのバックミュージック
『ん…?何か聞こえる…?』
エストは何かに気付いた。
「エストちゃん?何言ってるの?何も聞こえないよ?」
カエデは空をキョロキョロしているエストに言った。
「そんなことよりも魔王軍!?…ドラゴンさん!あなたはどうするの?」
カエデは不安を取り除くように良い形の石を握りしめた。
「あのモンスター達は同胞なのだ!戦うつもりはない!我一人なら逃げるのは簡単なのだ!だから早く逃げろ!」
辰夫は迫り来る魔王軍を確認してからカエデを見つめる。
(ポロン…ポロンポロンポロン…♪ ポロン…ポロンポロンポロン…♪)
『こんなに緊迫してるのに!なんか気が抜ける音楽が聞こえる気がする!』
エストは神(作者である私)に挑戦するようなコメントを放つ。
「エストちゃん!さっきから何を言ってるの!気のせいよ!今はモンスターに集中して!」
カエデはやはり空をキョロキョロしているエストを諭すように言った。
「ドラゴンさん!私たちをサクラの元に連れてって欲しいのだけど…」
カエデは辰夫に懇願したが…
「サクラ様のところに!?……む…無理だ…!…我はもうサクラ様にお会いする事はできぬ。」
辰夫の心は完全に折れてしまっていた…。
(ポロン…ポロンポロンポロン…♪ ポロン…ポロンポロンポロン…♪)
『音楽が気になって集中できない!』
エストはイライラしていた。
—— そうこうしているうちに…とうとう魔王軍のモンスターが辰夫に迫り来てしまった!
「きへへへへ!辰夫さん!さぁ一緒に来てもらいますよ!」
モンスターが辰夫に飛びかかってきた!
「くっ!!!!!」
辰夫は歯を食いしばる!!
…
—— 同時刻。サクラサイド ——
「…ふふ…この曲はね。私のいた世界なら誰でも子供の頃から弾けるのよ…」
「子供の頃から誰でも?凄いですね。」
「この部分だけね…」
サクラは寂しそうな表情を浮かべた。
故郷を思い出しているのだろうか。
「…。」(サクラさん…裸足だ…まだ靴下が見つからないんだ…)
辰美はサクラの足元を見つめ悲しそうな表情を浮かべた。
そしてサクラは再びピアノに合わせて歌い始めた。
「ねこ…ふんじゃった…♪」
…
—— 再び辰夫サイド ——
モンスターが辰夫に手を掛けようとしたその瞬間!
(ねこ…ふんじゃった…♪ ねこ…ふんじゃった…♪)
『今度は歌まで聞こえだした!音楽うるせー!!!!!』
エストのイライラは頂点に達していた。
「ちょっと!モンスターさん!まだこっちの話は終わって無いの…よッ!」
カエデは良い形の石をモンスターに投げた。
パカーーーーーン!
カエデの放った良い形の石がイライラしているエストの横を通り、モンスターにヒットした。
「ギャーーース!」
モンスターは悶絶している。
(ねこ…ふんじゃった…♪ ねこ…ふんじゃった…♪)
『音楽があああああ!きいいいいいい!』
エストは頭を掻きむしりだした。
「は…?カエデ…今のは…なんだ?…投石…?あの威力で…?」
辰夫は驚いて言った。
「話は後です!ドラゴンさん!今がチャンスです!私たちを乗せて飛べますか?」
「う…うむ…それしかないか…乗れッ!」
(ねこ…ふんじゃった…♪ ねこ…ふんじゃった…♪)
『トメロ…コノ…オンガクヲ…トメロ…』
エストは完全に壊れていた。
「行くよ!エストちゃん!」
カエデはエストの腕を掴むと辰夫の背中に飛び乗った ——。
「ドラゴンさん!お願いします!」
「うむ!」
辰夫は勢いよく大地を蹴った。
…
—— 同時刻。サクラサイド ——
……ポロン…♪
「…辰美……?」
サクラはピアノを弾くのをやめ、目をつむり一呼吸すると辰美を見つめた。
「はい。分かってます。」
辰美は静かに頷いた。
「行くわよ……」
「……はい。」
「「……食堂に!」」
2人はニッコニコで食堂に向かった ——。
—— そう。お昼ご飯の時間なのである。
「今日のメニューは何かな?何かな?」
「ふふふ!楽しみですねーw」
(つづく)
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます