#048 : 哀の不時着

こんにちは!

ロマンスの神様はいないという事を知っているカエデです!大人なので。色々あったので。男の人って…。


ラウワに向かっているところで突然ドラゴンさんが落ちて来ました。

ズドーンって!とてもビックリしました!

略して!カエデズドンビックリ!


………えっと…なんかごめんなさい…。


そ!それにしても、落ちてきたドラゴンさん…なんだかとても苦しそうなのです。

みんなは止めましたが、私は気になってドラゴンさんに近付いてみました。


今日はこのドラゴンさんとのお話をしていきますね。


「あ、あの…どうしたんですか?…大丈夫ですか…?あ!あれ?そういえば…言葉は通じるのかな…?」

私は恐る恐るドラゴンさんに尋ねました。


「はぁはぁ……人間か……人間よ……頼みがある…」

ドラゴンさんはとても苦しそうに言いました。


「は!はい!なんでしょう!」

私はビックリして咄嗟に気をつけの姿勢をとりました。


「我の胸のポケットに…紙袋が入っているのだが…それを取ってくれるか…」


「胸…あ!はい!ちょっと失礼しますね!」

私はドラゴンさんの懐を確認するためにドラゴンさんの下に潜り込みました。


「あれ?カエデ?ドラゴンの懐に入ってゴソゴソ…えぇッ!?ドラゴンってそんなところにポケットがあるの?…有袋類なの!?」

遠くで見ていたアリスさんから驚きの声が聞こえてきました。


ゴソゴソ…


「ありました!紙袋!えへへえへへ!」

私は鼻の下をスリスリしながら得意気に紙袋を掲げながらスキップしました。


「はぁはぁ…うむ…そういうの…今はいいから…とにかく…その…はぁはぁ…紙袋を我の口に被せてくれるか…」


「あ!はい!ごめんなさい!浮かれちゃいました。浮かれカエデ!………えっと…ごめんなさい…ちょっと待ってくださいね。」

私は頬を赤らめて言いました。


「…う…うむ…はやくしてくれるか…」


ガサガサ…


「こうですかね!」

私はドラゴンさんの口に紙袋を被せました。


「…はぁはぁ…。」

ドラゴンさんは苦しそうにコクンと頷きました。


「はぁはぁ…はぁはぁ…はぁ…はぁ…は…ぁ…ふぅ…」


「あれ…?紙袋を被せて?…まさか過呼吸?ドラゴンが?……今、一体何が起こっているの?」

アリスさんが遠くから言ってます。


「…はぁ…楽になった…助かったぞ。人間の娘よ。我は竜王の辰夫…もといリンドヴルム。」

ドラゴンさんは辰夫といういぶし銀的な言葉を飲み込み自己紹介をしてくれました。


「私はカエデです。巨乳をやってます。いったい何があったのですか?」

私も自己紹介をしました。


「き、きょにゅ…?…う、うむ…我の主のパワハラが酷くてな…恥ずかしい話だが、逃げて来たのだ。その逃避行中に色々と思い出してしまい、過呼吸を起こし墜落したというわけだ。…今こうしているだけでも主の気配を感じる気がするな…いや…あのお方なら何をしてくるか分からないから備えておくに越したことは無いか…ぐ……はぁはぁ…い…いかん…色々と思い出したらまた…過呼吸が…はぁはぁ…」


「紙袋です!頑張ってください!」

私はササっとドラゴンさんに紙袋を差し出しました。


「はぁはぁ…はぁはぁ…はぁ…はぁ…は…ぁ…ふぅ…すまぬな…感謝する。カエデよ。」

ドラゴンさんが名前で呼んでくれました。ちょっと嬉しかったです。



「過呼吸を起こすまで追い込むなんて…」

それをやりそうな人、出来そうな人に心当たりがあったけど、関係無い話なので私は話すのを辞めときました。


「…あの!あの!…カエデお姉ちゃんッ?大丈夫?」

エストちゃんが恐る恐る近づいて来ました。


近づいて来たエストちゃんを見るなりドラゴンさんの表情が強張りました。

「…なッ!?…エ…エスト殿?」


「えッ?…どうして私の名前を…?」

エストちゃんは驚いていました。


「…む…ふむ…ツノが無いが…しかし、エストという名前は同じ…これはどういう事だ?」


「実は私……記憶が無くて…」

エストちゃんがビクビクしながら答えました。


「記憶が無い…?では、サクラ様の事も忘れているという事でs「え?サクラ?…さささ!サクラを知っているんですかッ!?」

まさかのサクラの話題に私は食い気味に飛びつきました。


「サクラ様の知り合い!?やはりこれは罠か!?…ぐ……はぁはぁ…い…いかん…サクラ様を…はぁはぁ…思い…出したら…はぁはぁ…また…過呼吸が…」


「紙袋です!頑張ってください!」

私はササっとドラゴンさんに紙袋を差し出しました。


「はぁはぁ…はぁはぁ…はぁ…はぁ…は…ぁ…ふぅ…カエデよ。お前は…サクラ様を知っているのか…?」

ドラゴンさんは恐る恐る私に尋ねてきました。


「はい。サクラは私の親友なのです。サクラは異世界から来たと言ってませんでしたか?」


「親友だと…?そして異世界…なんと…サクラ様と同じく異世界の人間なのか?…どういう事だ?……サクラ様から逃げてすぐにエスト殿とサクラ様の親友と出会う?…ま…まさか…これもサクラ様の力なのか?…見ているのか?どこかで見ているのかー!?……はぁはぁ…逃げられないのか?…どうやっているんだ?…し、死ぬのか…?…我は死ぬのかー?…はぁはぁ…い…いかん…サクラ様を…はぁはぁ…思い…出したら…はぁはぁ…はぁはぁ…また…過呼吸が…す!すみません!洗い物は洗濯が終わったらやります!いえ違います!サボってるわけじゃなく、効率を考えてですねーッ!?」


ドラゴンさんが再び過呼吸をおこし、トラウマと戦いはじめてしまいました。


「紙袋です!頑張ってください!…この追い込まれ方…やはりサクラですね…あッ…」

私はササっとドラゴンさんに紙袋を差し出したところでドラゴンさんの後頭部に10円ハゲを見つけましたが、内緒にしておこうと思いました。


「話が進まないね☆」

エストちゃんが屈託のない笑顔で言いました。



——この時の私たちは迫り来る魔王軍の脅威を知る由もありませんでした。



(つづく)

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