#045 : 飛竜

…イライラするわ……

なぜだろう?最近、私の出番が無いような気がする。



そうだ。こんな時は辰夫を呼ぼう。


それにしても最近、前世の友達の【ど天然無自覚巨乳】の気配がする時がある。

(ふふ。あの子は私が居ないと何もできなかったからね。今頃どうしてるかな?)


まぁいいわ…

……今はそれよりも…


「辰夫ーーーッ!」


…ダダダダダッ!…ガチャッ


「はッ!お呼びでございましょうか!大魔王サクラ様!」


辰夫が慌てて走って来た。


「遅い!私が呼ぶ前に来い!察しろ!そんな事も出来ないのか!?」

ちなみに私には出来ない。


「…は!申し訳ありません!」

辰夫は深々と頭を下げた。


…ドサッ

辰夫の懐から胃薬と睡眠薬が落ちたのを見たが、私は見なかった事にした。


「あ!失礼しました!」

辰夫は慌てて薬を拾った。


「…まぁいい。で、例の件はどうなっている?」

私は辰夫を睨みつけながら言った。


「はッ!…ど、どの件でしょうか?…抱えてる案件が100を超えておりまして。」

辰夫は懐から手帳を取り出し、慌てて確認している。


「お前はまだそんな事を言っているのか!いいか?今からビジネスで一番大事な事を言う!肝に銘じろ!いいな!」


「はッ!ありがとうございます!」


「ビジネスで一番大事な事、それは【とにかく察しろ】だ!いいな!理解したな?もう大丈夫だよな?やれば出来る子だよな?竜王なんだよな?……うん…で、だ。…例の件はどうなっている?」


「えと…あの…その…えと…はぁッ!はぁッ!はぁッ!」

辰夫の呼吸が急に荒くなり、辰夫は懐から紙袋を出して口にあてた。過呼吸である。


紙袋を取り出したと同時に【退職届】という封筒が落ちた。

私は歩み寄り、封筒を拾うと、その場で破り捨てた。



「辰夫?…これが最後よ?…例の件は?」


「はぁッ!はぁッ!はぁッ!…」


「どうなっているー?」


「うわぁ…ッ…はぁッ!はぁッ!はぁッ!…」



—— その晩、辰夫は家出した。



(つづく)

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